3
久しぶりすぎで涙がでそうだ。
どうやら魔力というのはすばらしい入浴装置を作るらしい。
凍るほどの水をあったかく沸かし、きれいな浴槽になみなみと透明のお湯が注がれており、その綺麗なお湯の中で今、何人もの侍女が自分の身体を洗ってくれている。
入浴を侍女が手伝うなんてオルベリアではしてもらったことがない。
国の財政状態が悪かったため侍女の数も最低限だったというのもあるが、自分のことは二の次にして、妹のアリアのわがままを聞いていたからだ。
自分は妾腹の王女だった。
四つ上の兄のゼノアと二つ下の妹のアリアは王妃を母に持ち、二人とも王妃とそっくりの青い髪に青い瞳をしていた。
ひとりだけプラチナブロンドの髪にエメラルドの瞳をしている自分は肩身が狭かった。
あえていうなら王妃の浪費のせいで国が傾いたのを皆が知っていたから、大きな顔をできていたというのはある。
だがそれでも肩身は狭く、必死で勉強して必死で国政を支えた。
借金を清算し、なんとかようやく国としてやっていける。
そう思った矢先の出来事だ。
あまりにもひどい仕打ちだ。
アリアはわがままな妹だったが、兄には信頼されていると思っていた。
だけど違ったのだろう。
いや、今は考えまい。
精いっぱいこの素晴らしい入浴を謳歌しよう。
「ふぅ」
思わずため息がもれると、侍女がうらやましそうにつぶやいた。
「すごくきめ細やかなお綺麗な肌ですわ。こんなにたわわな胸とそれなのにこの細い腰。素敵ですわ」
「そ、そうかしら?」
自分の容姿が優れていると思ったことはない。
お前の母親に似て、下品な顔をしているとずっと王妃に言われ続けていたからだ。
婚約者のダニエルですら素敵だとか綺麗だとか言ってくれたことはない。
物心がついたころにはいなくなっていた母親だったが、王をたぶらかしてだましてお前を産んだ最低な下品な遊女だったと言われ続けていたからその母親に似ているということは自分は最低な人間だと思い続けて育った。
だからだろうか?
「わたしは美しくなんてないわよ」
「まぁ何をおっしゃいますやら。デュランダル陛下が女性をお連れしたのは初めてですのよ。わたしたち使用人はとても皆喜んでおります。まさかこんな美しい方がいらっしゃるなんて……」
わたしが美しい?
まさか…
話半分に聞いておこう。
それでも気持ちよかったからとてもリラックスできたわ。
「ディアン様。そろそろ支度をさせていただいてもよろしいですか?」
「何かあるの?」
「はい。夕食がご用意できております」
そう聞いて、突然おなかが減っていることに気づいた。
ナダルに向かってからもう十日ほど経っているが、ようやく落ち着けた気がする。
久しぶりにいっぱい食べたい気分だ。
「ぜひ、いただくわ」




