表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
干物系チャラ男男装令嬢は、面倒ごとの中心でため息をつく  作者: 織村蜜柑


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
76/111

第75話「鐘楼の地下」

翌朝。


王都中央広場は、朝早くから慌ただしかった。


鐘楼の周囲には足場が組まれ、作業員たちが資材を運んでいる。


「改修工事か」

オスカーが小さく呟く。

「思ったより人が多いな」

「当然だ」

セドラスは周囲を見回した。

「王都の象徴だからな。警備も厳しい」

レティシアは帽子を深く被る。

「正面からは入れないわね」


エルマーが視線だけで周囲を探る。

「裏口も塞がれている」

「兄上」

オスカーが小声で呼ぶ。

「あそこ」


鐘楼の裏側。

資材置き場の陰。

古びた鉄扉が半分だけ開いていた。


セドラスの目が細くなる。


「あれは……」

地図を取り出し、位置を確かめる。

「地下道の入口だ」

レティシアが静かに頷く。

「工事で入口が露出したのね」

「まだ気づかれていないようだ」


周囲では作業員たちが別の場所へ集まっている。


今なら行ける。

「行くぞ」

短く告げると、一行は資材の陰を縫うように進んだ。

オスカーが先頭。

続いてエルマー。

その後ろにレティシア。

セドラスが最後尾で周囲を警戒する。


鉄扉を抜けると、冷たい空気が流れてきた。

石段が地下へ続いている。


「昨日の地下室と空気が違う」

エルマーが壁へ触れる。

「乾いている」

「人の出入りがあった跡もある」


オスカーが床を指差した。

薄く残る靴跡。

新しい。

数日前のものだった。


「私たち以外にも誰かが来ている」

レティシアが静かに言う。


その一言で空気が張り詰めた。


石段を降り切ると、長い通路が現れる。

壁には等間隔で古い灯台が並び、床には王家の紋章が薄く刻まれていた。

そして、その横にもう一つ。


見覚えのある紋章。

アウレリア家。


「残っていたのか」

セドラスが低く呟く。

「削られていない」

「ここは隠された通路だからな」


エルマーが周囲を見渡す。

「長い間、誰の目にも触れなかったはずだ」


その時。


レティシアが立ち止まった。


「どうした?」

オスカーが振り返る。


レティシアは壁を見つめている。

古びた石壁。

そこへ、ゆっくり手を伸ばした。

指先が触れた瞬間だった。


カチッ。


乾いた音。

「また?」

オスカーが顔をしかめる。


ゴゴゴ……


通路の奥から重い音が響く。


「今度は何!」

「お前、その台詞何回目だ」

エルマーが冷静に返す。


通路の先。

石壁が左右へ開いていく。

埃が舞い上がる。

その奥に現れたのは、広い円形の部屋だった。

中央には巨大な石の台座。

その上に置かれていたのは、一冊の分厚い古い帳簿。


誰も動かない。


レティシアだけが小さく呟く。

「これ……」


セドラスが慎重に近づく。


帳簿の表紙には、擦れながらも文字が残っていた。


『王国記録簿』


全員が息を呑む。


オスカーが思わず声を漏らす。

「兄上」

「ああ」

セドラスは静かに頷いた。

「王国の正式な記録だ」


レティシアは帳簿を見つめたまま動かない。

胸の奥が強く疼く。

頭の中に、幼い少女の声が響いた。

『ここにあるよ』

まただ。

あの声だった。


レティシアは無意識に一歩踏み出す。


その瞬間。


部屋の奥から、小さく石が転がる音が響いた。


カラン。


全員の視線が一斉に向く。

誰かいる。

セドラスが静かに右手を上げた。

「……隠れろ」

双子は即座に動き、レティシアを庇うように左右へ散開する。


静まり返る円形の部屋。

暗闇の奥から、ゆっくりと足音だけが近づいてきた。


挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ