表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
干物系チャラ男男装令嬢は、面倒ごとの中心でため息をつく  作者: 織村蜜柑


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
72/108

第71話「消された約束」

地下室は静まり返っていた。


誰も手紙から目を離せない。


『我らアウレリア家は、罪人ではない』


その一文だけで。


これまでの歴史が揺らいでいた。


「兄上」

オスカーが静かに呼ぶ。

「ああ」

「続き、あるよな」


セドラスは破れた羊皮紙を机代わりの石台へ広げた。

「まだ終わっていない」

眼鏡の奥の視線が細くなる。

「この紙には続きを剥がした跡がある」


エルマーが隣へ来る。

「紙を重ねていた」

「その可能性が高い」


双子は羊皮紙を光へかざした。


オスカーがランタンを近付ける。


「あった」


短い一言。


全員が息を呑む。


羊皮紙には。

薄く押し跡が残っていた。

文字ではない。

筆圧だけが残っている。


セドラスは静かに微笑んだ。

「完全には消せなかったらしい」

ルシアンが目を丸くする。

「読めますか?」

「試してみよう」


セドラスは炭の粉を革袋から取り出した。

薄く羊皮紙へ振りかける。

筆圧だけ残った部分へ。


ゆっくりと文字が浮かび始めた。


「すごい……」

レティシアが思わず呟く。

オスカーも感心する。


「兄上、それ知ってたの?」

「古文書の修復で使われる方法だ」

「やっぱり兄上だな」

「ああ」

エルマーも頷く。


浮かび上がった文字を。

セドラスは静かに読み上げた。


『約束は王家ではなく』


そこで一度切れる。


さらに下。


『……子へ託す』


また切れていた。


「王家じゃない?」


ルシアンが首を傾げる。

「つまり」

エルマーが考え込む。

「守った相手は別にいる」

「ああ」

セドラスは頷いた。

「王家を守るためではない」

「未来へ何かを残すためだ」


沈黙。


レティシアの胸が大きく鳴る。


未来。


その言葉に。


頭の奥で景色が揺れた。

陽の差し込む部屋。

金色の髪の女性。

優しく笑っている。

『約束よ』

小さな子どもの手へ。

銀色のペンダントを渡している。

『いつか必ず』


そこで映像は消えた。


レティシアが膝をつく。


「お嬢!」

オスカーが支える。

エルマーもすぐ隣へ来た。

「またか」

「ああ」


レティシアは苦しそうに息を整える。


「思い出せない……」

「でも」

震える声。

「ペンダントを渡されたの」


その一言で。


セドラスの表情が変わった。


「誰に?」


静かな問い。


レティシアは首を振る。


「顔が……見えない」


地下室に沈黙が落ちる。


その時だった。


エルマーが壁際へ歩いた。


「兄上」


低い声。


全員が振り向く。


巨大な紋章の下。


石壁の隅に。


小さな文字が刻まれていた。


削られずに残った。


たった一行。


『約束は、アウレリア最後の娘へ』


誰も言葉を発しなかった。


レティシアだけが。


その文字から目を離せなかった。


挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ