表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
干物系チャラ男男装令嬢は、面倒ごとの中心でため息をつく  作者: 織村蜜柑


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
71/108

第70話「封印された手紙」

地下室には静寂が戻っていた。


セドラスの手には。

アウレリア家の紋章が刻まれた封蝋付きの手紙。

誰も急かさない。

それだけ、この一通が重かった。


オスカーが口を開く。

「兄上」

「ああ」

「今度は開けてもいい?」

セドラスは苦笑する。

「ここなら構わない」

「許可が出た」

「出たな」

双子は顔を見合わせた。

「お前たち」

セドラスが小さく笑う。

「少しは落ち着きなさい」

「無理」

「ああ」

即答だった。


ルシアンが吹き出す。

レティシアも肩を震わせた。


少しだけ地下室の空気が和らぐ。


セドラスは封蝋を慎重に割った。

乾いた音が響く。

長い年月、閉ざされていた手紙が静かに開く。

古い羊皮紙。

丁寧な筆跡。


最初に書かれていたのは。

『この手紙を読む者へ』

セドラスが静かに読み始める。

『我らアウレリア家は、罪人ではない。』

全員が息を呑む。

『我らは王家を裏切ってはいない。』

レティシアの鼓動が速くなる。

『真実を守るため、自ら名を捨てた。』


沈黙。


オスカーが呟く。

「自分から?」

エルマーも眉を寄せる。

「消されたんじゃない」

セドラスは頷いた。

「少なくとも、この手紙を書いた人物はそう記している」


さらに読み進める。


『王都に残した紋章は、未来へ真実を繋ぐための印。』

『名が戻る時、王国もまた真実を知る。』

最後の一文だけは。

墨が滲んでいた。

『その時、我らの娘――』


そこで終わっていた。


紙が破られている。

誰かが意図的に切り取った跡。


「またか」

オスカーがため息をつく。

「ああ」

エルマーも静かに頷く。

「一番大事なところだけない」


セドラスは破られた跡を見つめた。

「いや」

眼鏡の奥の視線が細くなる。

「残っている」


全員が振り向く。


セドラスは紙の端を指差した。


そこには。

切り取られたはずの文字がわずかに残っていた。

『……ティ』


レティシアが息を呑む。


「まさか」

セドラスは答えない。

オスカーが静かに言う。

「兄上」

「ああ」

「お嬢の名前?」

「断定はできない」

それでも。

誰も偶然とは思えなかった。


その瞬間だった。


地下室の奥から。

コトッ。

小さな音が響く。


全員の視線が暗闇へ向く。


ランタンの光は届かない。


「聞こえたな」

オスカーが腰の剣へ手を添える。

「ああ」

エルマーも一歩前へ出る。

セドラスは手紙を懐へしまった。

「警戒しろ」

短い指示。

双子は同時に頷く。


地下室には。

自分たち以外の誰かがいる。

そんな気配だけが。

静かに広がっていた。


挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ