表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
干物系チャラ男男装令嬢は、面倒ごとの中心でため息をつく  作者: 織村蜜柑


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
44/71

第43話「選ばれる条件」

空気が、止まった。

「“読める人間”が、選ばれ始めています」

ユリウスの声は静かだった。


でも。

その一言だけで、広場のざわめきが遠くなる。

レオは黙ったまま、ユリウスを見る。

監察官補佐は、こちらを試している。

どこまで理解しているか。

何に気づいているか。

そして。

“こちら側”かどうか。


「……面倒」

レオが低く吐き捨てる。

オスカーが吹き出した。

「また更新した」

「うるさい」

「今日ほんと機嫌悪いねぇ」

「誰のせいだと思ってる」

「監察官殿?」

「半分正解」


ユリウスが少しだけ目を細めた。

笑ったのか。

呆れたのか。

分からない。

それがまた、面倒だった。


「選ばれるって、どういう意味?」

オスカーが軽い声で問う。

でも。

その目は笑っていない。

ユリウスは広場を見る。

血。

荷車。

騎士。

人流。

全部を確認するように。


「簡単です」

静かな声。

「“見える人間”を炙り出している」

レオの目が細くなる。

「違和感に気づく人間」

「異常な流れを読む人間」

「誘導を察知する人間」

ユリウスは続ける。

「つまり、“盤面を見る側”です」


沈黙。


オスカーの笑みが薄れる。

エルマーは静かに周囲を警戒したまま、

ユリウスを見る。

レオは低く問う。

「……何のために」

ユリウスは数秒だけ黙った。

それから。

「まだ分かりません」

静かな返答。

でも。

レオは気づく。

この男。

“全部は分かっていない”。

だから止まっていない。

理解しきれていないからこそ、追っている。

その姿が、少しだけ自分に似ている。

レオは小さく舌打ちしたくなった。


「で?」

レオが低く言う。

「監察側は何人選ばれた」

ユリウスの視線が動く。

ほんの少しだけ。

「……三人」

少ない。

でも。

その数字が逆に嫌だった。


「騎士側は?」

「まだ不明です」

「つまり把握しきれてない」

「ええ」

ユリウスはあっさり認めた。

オスカーが小さく笑う。

「珍しいね」

「何がです?」

「監察官殿って、もっと“全部分かってます”顔するタイプかと思ってた」

ユリウスは少しだけ沈黙した。

それから。

「分からないから、見ているんです」

静かな声だった。

レオは、その瞬間だけ目を逸らした。

最悪。

本当に面倒な男だ。


「レオ」

エルマーが低く呼ぶ。

視線だけ向ける。

「西側」

レオの目が変わる。

人の流れ。

不自然。

ざわつき方が違う。

「……動いた」

オスカーの声から軽さが消える。


広場の端。

一人の男が、

人混みを逆走している。

逃げている。

でも。

「違う」

レオが低く言う。

「逃げてない」


沈黙。


ユリウスの目が細くなる。

レオは男を見る。

走り方。

視線。

焦り。

そして。

“確認している”。

誰がいるか。

誰が動くか。

「炙り出す側」

静かな声。


次の瞬間。

男の目が、真っ直ぐレオを捉えた。

空気が止まる。

男が笑う。

「見つけた」

嫌な声だった。


その瞬間。

オスカーが動く。

「レオ!」

叫ぶより早い。

男が懐へ手を入れる。

短剣。

違う。

小さい。

「投げ——」

レオの言葉より先に、男が腕を振った。

飛ぶ。

銀。

一直線。

ユリウスの目が見開かれる。

狙い。

それは。

——レオだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ