表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
干物系チャラ男男装令嬢は、面倒ごとの中心でため息をつく  作者: 織村蜜柑


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/31

第19話「選ばれる仕事」

夜。

王都の空気が、少しだけ重い。

人通りはある。

灯りもある。


だが——

「……最近、多くない?」

レティシアは、窓の外を見ながら呟いた。

小さな揉め事。

ちょっとしたトラブル。

以前より、確実に増えている。

「増えています」

エルマーが答える。

「規模も、頻度も」

「だよね」

オスカーが肩をすくめた。

「しかもさ、バラバラに見えて繋がってる感じある」

「繋がってる?」

レティシアが振り返る。

「うん」

オスカーは軽く指を立てた。

「場所が違うだけで、手口が似てる」

「物資、流通、人の流れ」

エルマーが続ける。

「意図的に“乱している”」

沈黙。

「……組織?」

レティシアが小さく言う。

「可能性は高い」

「証拠はないけどね」

レティシアは、目を細めた。


(……面倒くさい)

規模が違う。

今までの“お助け”とは。

「で」

オスカーが言う。

「どうする?」

同じ問い。

何度もされた。

けれど、今は違う。

レティシアは、少しだけ考える。

全部やる必要はない。

全部背負う必要もない。

——選ぶ。


「……場所は?」

エルマーとオスカーが、同時に目を細めた。

「北区の倉庫街」

「今夜、動きがある」

「根拠は?」

「ない」

オスカーが笑う。

「勘」

「信用できない」

「でも当たる」

「……当たるのよね」

レティシアは小さく息を吐いた。

「そこに行く」

短く言う。

「全部じゃない」

一拍。

「そこだけ」

「いいね」

オスカーが笑う。

「ちゃんと選んでる」

「当然です」

エルマーも頷いた。

「では、準備を」


レティシアは立ち上がる。

外套。

帽子。

黒髪。

手慣れた動き。

だが。

その前に、止まる。

「……」

視線が、双子に向く。

「……一緒に来るでしょ」

「当然」

「当たり前」

同時。

レティシアは、少しだけ笑った。

「じゃあ、行くわよ」

その瞬間——

彼女は、“レオ”になった。


北区、倉庫街。

夜は静かだ。

だが——

「いるね」

オスカーが小さく言う。

影。

複数。

動きがある。

「……確定」

エルマーが低く言う。


木箱が運ばれている。

荷ではない。

中身を隠すように。

「……怪しいどころじゃない」

レオが呟く。

「どうする?」

一瞬。

レオは、目を細めた。

「……見る」

「攻めない?」

「まだ」

短く。

「確証が足りない」

オスカーが少しだけ笑った。

「いいね、それ」

「学習しましたね」

エルマーが淡々と返す。

静かに、距離を詰める。

音を消す。

気配を消す。

近づく。


「——運べ」

低い声。

「急げ。時間がない」

明らかに、ただの商人ではない。

「……完全にアウト」

レオが小さく言う。

「どうする?」

問われて——

レオは、迷わなかった。

「……今」

次の瞬間。

動いた。

影から出る。

一気に距離を詰める。

「なっ——」

驚く声。

だが、遅い。

腕を取る。

崩す。

落とす。

同時に。

エルマーとオスカーが動いている。

連携。

完璧。

数秒。

それだけで、場は制圧されていた。


「……何だお前ら!」

残った一人が叫ぶ。

「通りすがり」

レオが答える。

「それにしては、やりすぎだろうが!」

「やりすぎたかもね」

軽く返す。

だが。

「——その箱」

レオが指さす。

「中身、何?」

沈黙。

答えない。

「……開けるか」

オスカーが言う。

蓋を外す。

中にあったのは——

「……武器?」

大量の、刃。

「流通させる気か」

エルマーの声が低くなる。

「……面倒くさいどころじゃない」

レオが呟く。

規模が違う。

「これは」

エルマーが言う。

「騎士団案件です」

「分かってる」

レオは、目を細めた。

ここまでは、選べた。


だが。

(……これ、もう一人でどうにかするレベルじゃない)

小さく、息を吐く。

「……報告する」

その一言に。

エルマーとオスカーが、わずかに目を見開いた。

「いいの?」

「いい」

迷いはなかった。

「これは、任せるべき」

静かな声。

だが。

はっきりしている。

選んだ。

「……成長したね、お嬢」

オスカーが笑う。

「うるさい」

レオは、顔を逸らした。


だが。

その選択は、確かだった。

すべてを抱えない。

すべてを自分で終わらせない。

必要な時に動き。

必要な時に、手放す。

それが——

今のレティシアの“戦い方”だった。

そして。

その選択は。

新しい面倒ごとを、確実に引き寄せていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ