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第三十二話「冒険者の一日」

 ――一ヶ月が経過した。


 バーゼルの方針曰く、この街でお金を貯めるため、しばらく滞在することになった。


 冒険者と言えどお金は必須だ。

 今までは狩りをしながら移動していたため、店で食べ物を買わずとも食って行けていた。


 しかしこうやって依頼などがないと食って行くにはお金が必要だ。


 毎日自分たちの宿代と食費を稼ぐ必要がある。

 と言っても、アルスたちのいる宿は朝晩の飯付きだが、常にそこで食事を摂っているわけではない。

 店に出向くこともある。


 他にも本やら服やらを買うのにもお金はいるわけで、滞在してお金を稼ぐという判断には同意だ。


 ただ、一つ言わせてもらうならば依頼内容だ。


 はっきり言おう。


 クソだ!

 クソ野郎だ!

 筋肉マッチョの汗を舐る方がまだマシだ!


 狩りの依頼はほとんどなし。

 あるのは毎日同じような雑用の日々。

 味気の一つもない肉体労働ばかりだ


 そんな味気のなく苦労の伝わる一日を紹介しようと思う。



---



 ――まだ店が開店準備をし始める頃、起床。


 眠たい目を擦りながらも下に降り、フェンリルとバーゼルと一緒に朝食を摂る。


 ちなみにアイビスはまだこの時間寝ている。

 アイビスは寝起きがものすごく悪いため、自分で起きてこない限りは絶対に起こさない。

 もし起こしてしまえばその日一日のアイビスの機嫌が悪くなり、かなり面倒臭くなる。


 朝食は変わらず美味い。

 これを毎日食べるために朝起きていると言っても過言ではない。


 朝食を終えるとすぐに身支度をする。

 そしてちょうどこのくらいの時間になるとアイビスが起きてくる。


 朝食を摂るアイビスを尻目に、フェンリルと二人でギルドへ向かう。

 バーゼルはアイビスの準備が出来るまで宿で待ってくれている。

 優しい奴だ。


 ギルドへ向かうと、まだギルドは空いていない。

 しかし、ギルドが空くのを待っている他の冒険者もちらほら。


 何故こんな早くにギルドへ向かうのかと言うと、


「おはようございます!本日のギルドを開設致します!」

「オラァァァァァァァッ!!!!どけーーーーーっ!」


 ギルドが開いた瞬間、待機していた冒険者たちが目の色を変えてギルド内へ突っ込んで行く。


 そして掲示板へと向かっていき、一つの埃も見逃さないと言わんばかりの形相で掲示板に張り付く。


=========================


       ▼本日の依頼内容▼


 ●マルティンさん家のペットの捜索

 ●マットルさん以下同文

 ●ピリッツさん以下同文

 ●サンバル石の採取

 ●ヤックル草の採取

 ●王宮前の雑草処理

 ●ヒンダルさんの介護

 ●手紙の輸送

 ●三番街『豚の金』一日アルバイト

 ●アヌンさん家の外壁塗装

 ●ツーチェさん腰が痛い、なんとかして


 ――現在は以上です。


=========================


 全ての依頼内容に目を通し、全員が肩を下げる。


 今日も……狩り依頼がねぇ……。


 朝一にギルド前で待機する理由はこれだ。

 依頼内容に狩りの依頼がないか確認するためだ。


 依頼は早い者勝ちのため、みんな狩り依頼目当てで朝一に来るのだ。


 考えていることは皆同じなのね。


「アルス、今日も無かったね」

「……うん」


 燃え尽きた灰のように気力を失うも、とりあえず依頼を受ける。


 フェンリルが素早く依頼の紙を取る。


 取ったのは二枚。


 ペットの捜索と石の採取だ。


 それを受付へ持って行き、お姉さんに渡す。

 綺麗なお姉さんが相手をしてくれるため、色目はしっかりと使っておく。

 無視された。


 手続きをしている間にちょうどアイビスとバーゼルがギルドへやってきた。

 アイビスは依頼内容を聞くとアルス同様顔を引きつらせて肩を落とした。

 回れ右をしてどこかへ行こうとするバーゼルに待てをかけながらどちらの依頼から受けるか話し合う。


 もちろん、バーゼルは全てノータッチだ。

 こんなことも自分たちで出来ないと困るしな。


 そして依頼受注の手続きが終わり、依頼へと向かう。


 今日の依頼はペットの捜索からだ。


 受注した捜索依頼は六番街のマットルさんの家だ。


 少し遠いが、どうやらその後にこなす依頼の関係上ここがベストなようだ。


 うなだれながらも依頼へ向かった。



---



 依頼場所は生活エリアの南側。

 細い裏路地を通りながらショートカットして行く。


 一ヶ月もいればどの道がどこへ繋がっているか大体覚えた。


 そして依頼主の元へ着く頃にはバーゼルの姿は消えている。


 逃げたな。

 まぁ、いつも通りだ。

 酒でも飲みに行ってるか風通しのいいところで寝てるかだな。

 探すだけ無駄だ。


 依頼主の家は少し大きめの家で、お金持ちが住んでいるように見える。


 戸を叩き、要件を伝える。


「すみませーん!僕たち依頼の件で来させていただいた冒険者です。」


 フェンリルの呼び声にゆっくり戸が開く。


 出てきたのは案の定、成金だ。


 中背中肉の男で指や首にキラキラ光るアクセサリーを身につけている。


「あぁ、あんたたちが」


 タレ目で三人の頭から足先までじっくり見下ろす。


「はい!よろしくお願いします!」


 頭を下げるフェンリル。


 本来ならこんな冒険者はいない。

 ただ、フェンリル曰く第一印象が大事らしく、好印象を持ってもらえるかどうかでお金を弾んでくれる可能性があるそうだ。


 依頼主が三人を見てオネエのような口調で呟く。


「あなたたちぃ……まだ子どもよね?本当大丈夫?うちのピリちゃんは繊細な子だしかくれんぼも上手だからあなたたちなんかがこなせるとは思えないわ?」


 見た目で判断しているようだ。


 本来ならアルスかアイビスが吠えてもおかしくないのだが、二人とも無反応だ。

 なんなら少し顔色が悪く見える。


 それもそのはず、一ヶ月もいればこういう小言は慣れたようなもんだが、これから待っている地獄を想像すればこんな顔にもなる。


「それはちゃんと腕の方を見てから判断してください。捜索の方は得意ですから。」

「ふーん、そう。ならお願いね。」


 見下したような目をしつつも依頼の詳しい内容を話してくれた。


 ・個体:ザントサーペント(5歳)

 ・愛称:ピリちゃん

 ・特徴:可愛らしいリボンを首につけており、しっぽの先が切れている。

 ・行方不明になった経緯:二日前に買い物から帰ってきた際に扉を開けた一瞬の隙に逃げ出した。

 ・依頼内容:今日中に逃げ出したピリちゃんを捕獲して連れてくること。

 ・報酬:依頼内容通り


 伝えられた情報は以上だ。

 暴力的な捕獲は絶対にしてはいけない。

 もし何かあったら依頼は失敗とする、だそうだ。


 少し厳しめだがいつもと変わらない。


 依頼主は内容を告げたらそそくさと家へ入っていった。


「さて、じゃあ始めようか」


 依頼がスタートした。



---



 捜索依頼は面倒だが、比較的楽な方ではある。


 なんてったって俺たちにはフェンリルがいる。


 探すのが魔獣である限りフェンリルの特一魔術で探せる。

 ホントに便利な魔法だ。


 しかし、それでも厄介な点はある。


 フェンリルの特一魔術は声によって魔獣を操る。

 フェンリルの声が届けば問題なく見つけられるのだが、この街はかなり広い。

 人も多いため生活音も大きく、フェンリルの声が必ずしも届くとは限らない。


 つまり、町中を歩きながら対象を声で引っ掛けるしかないのだ。


 これがまぁ面倒で数時間の時間を要する。



 結果、案の定数時間の捜索の末、捕獲に成功した。


 二番街の路地裏にある使われていない物置きに隠れていた。


 出てきた魔獣にアイビスがドン引きし、身震いをしながら距離を取っていた。


 アイビスの気持ちは分かる。

 かなり気持ち悪い。


 なんせ出てきたのは7、8メートルはある蛇だ。


 ドン引くのも無理はない。


 フェンリルがスマートに魔術をかけて依頼主の元へ連れて行く。


 依頼主に魔獣を見せると大喜びで抱きついていた。


 よくこんなものに抱きつけるなと思いつつも、とりあえずは大満足で依頼を達成した。


 報酬の銅貨二枚とおまけでもう一枚つけてくれた。

 合計銅貨三枚。

 フェンリル様々だな。


 この国の硬貨は『フラン硬貨』。


 硬貨の価値は高い順から白金貨、金貨、銀貨、銅貨、翠貨。

 まず、翠貨の価値基準が1フランとした時、銅貨は10フラン、銀貨は100フラン、金貨は1000フラン、白金貨は10000フランだ。

 どの貨幣がどの金額かを覚えればそう難しいものじゃない。


 この報酬はおいしい方だ。


 依頼の中には翠貨で支払われるものもある。

 フェンリルがいいものを選んでくれたおかげだ。


「じゃあ次はサンバル石の採取だね。このまま南に行けば採掘場所だ」


 次の依頼内容はサンバル石という石を集めてギルドへ提出するものだ。


 依頼には採掘所で取り仕切り役がいるため、その者の指示に従えとの事だった。


 とりあえず向かってみよう。


 と、歩き出した時だった。

 フェンリルが前から歩いてきた人とぶつかった。


「いっ!……す、すみません!大丈夫ですか?」


 瞬時に謝る。


 ぶつかった人物は三人組で黒い布を身にまとい、フードまで被っている。

 見るからに怪しげな人物たちだ。


 フェンリルがぶつかったの中でも一番ガタイのいい男で、振り返った際に顔が見えた。


 顔周りは髭被っており、イカつい顔でフェンリルを見下ろす。

 その男は一瞬動きを止めたが、すぐに嫌な笑みを浮かべて、


「あぁ、気をつけろよ?次は踏み潰されるかもしれねぇからな」


 そう言って男たちはそのまま去って行った。


 踏み潰す?

 なんじゃそれ。

 次は許さないぞ的な?

 普通に言えばいいのに、まぁああいう奴ほど大見得切って大したことないんだろうな。


「何よアイツ!自分だってぶつかったんだから謝りなさいよ!」

「はいはい。前方不注意だった僕が悪いんだからそう怒らないで、、」


 フェンリルがアイビスの背中を押しながら次の依頼場所に向かって進み出した。


 アルスも同様について行こうとしたが、ふとぶつかってきた奴らの背中に目が留まった。

 彼らの背中には見た事のないマークが書かれていたからだ。


 ん〜?ドクロと……砂?

 何のマークだ?チームとかそんなんか?


 まぁいいか。

 どうでもいいわ。


 アルスも二人の後ろへついて行った。



---



 採掘所に着くと一人の老婆が大きい岩に腰をかけて待っていた。


 三人とっては見慣れたお馴染みの人だ。


 この人はギルドお抱えの採取師、チョム婆さん。


 石や薬草やらと採取に関してはかなりの知識を有しており、その道の界隈では有名な人らしい。


「おや、やっと来たと思ったらまたアンタたちかい?随分頑張り屋だねぇ」

「はい!今日もよろしくお願いします!」


 この婆さんにはたくさんお世話になった薬草と毒草の見分け方や採取においてのコツやら何まで全て教えてもらった。

 この婆さんにも良くしてもらっている。


 良くしてもらっているのだが、『採取の重労働=この婆さん』みたいに何故か繋げてしまっているのでこの婆さんを見ると地獄が始まったとつくづく感じてしまう。


 アイビスなんかものすごーく嫌な顔をしてそっぽ向いている。


 アイビス、気持ちは分かるがその顔やめなさい。

 この婆さんが何かしたわけじゃないでしょ!


「じゃあ早速依頼の説明をしようかね。

 アンタたち、サンバル石は見たことあるかい?」

「サンバル石は……そうですね。ギルドに運び込まれているのを何度か見たことはありますが、採取するのは初めてですね」


 サンバル石と言えば黒に薄暗い紫ぽい色が混じったような石だ。

 断面はかなり艶があって光に照らせば眩ゆく、目を細めたくなるほどの光沢だ。


「サンバル石、別名:響鳴石(きょうめいせき)。文字通り音が響きやすい石でね、別の国じゃ需要の高い石なんだよ」


 音が響く石か。

 聞いたことないな。

 音が響く石に需要ってあるのか?

 楽器か何かにすんのかな。


「サンバル石は地中浅くに埋まってることが多くてね、こうやってツルハシを入れて、高い音が鳴ったら下にサンバル石がある」


 そう言ってチョム婆さんはツルハシを2、3回振り下ろし、地面へ突き刺し、耳に響くような高い音が鳴り手を止めた。

 そしてそれを手で掘り出し、三人に見せる。


「そう難しいことじゃないよ。」

「本当ですね。意外と簡単そうです」

「じゃあ、これを一人200個。今日中によろしくね」

「に……ひゃく……」


 白目を剥くアイビスと泡を吹き出しそうになるアルス。

 フェンリルも顔を引きつらせながらチョム婆さんから人数分のツルハシを受け取り、地獄の採掘がスタートした。



---



 作業は長く続き、昼になった。

 昼休憩を入れた後、すぐに再開。


 暑さと重労働で血反吐を吐きそうになりながら同じ作業を繰り返していく。


 あぁ……死ぬ…。

 マジで無理もうホント死にそう。

 暑いし、しんどいし、なんでこんなことしなきゃいけねぇんだよ。

 石打つ音が笑い声に聞こえてきた。

 もうヤバいかもしれん。

 アイビスなんか見てみろ。

 一点見つめて固まってんぞ。

 アレはヤバいなもうちょっとで爆発するわ。離れとくか。


「ああああああああああああああああッ!!!!!!」


 ほれ見ろ爆発した。


 アイビスは奇声を上げながら空中に向かって魔法を乱発し始めた。


 すかさずチョム婆が達人のように慣れた手つきでアイビスを気絶させた。


 あの婆さんやっぱすげぇな。

 昔冒険者だったって聞いたけど強かったんだろうか。


 次はフェンリルの方を見てみると変わらず真面目にツルハシを振り下ろしている。

 ただ、奇妙なことに俺たちには見えない誰かと会話をしているようだ。


「あぁ、もうすぐ終わりそうだよ。この作業大変だねぇ」


 フェンリルは何も無いところに向かって笑顔で語りかけている。


 いや怖ぇよ。

 誰と話してんだよ。


 二人とも限界が来ているようだ。


 あぁ……俺もヤバいわ。

 なんかフィーネス見えてきた。

 あの世から手振ってくれてる。

 たぶんまだ死んでないけど。


 そんな三人を見かねてチョム婆が作業を切り上げる。


「アンタたち、一度休みなさい。そんなんじゃ倒れるだけだよ」


 言われるがままアルスたちは日陰へと移動し休憩を摂る。


「全く、自分の限界も把握出来ないのかい?そんなんで冒険者なんて続けていけないよ」


 呆れた声で三人を見下ろしながら自分も岩に腰を下ろす。


 限界を把握する、ね。

 まぁ言ってることはわかるんだけど、ちょっと違うというかね。

 限界ってのは元々容量(キャパ)があるからこそ存在するものであって初めからその容量(キャパ)ないどころか容器そのものがない場合はどうしたらいいわけ?

 今まで戦うことしかやってこなかったのにいきなり採掘で飯食っていけるとでも思ってんのか?

 この一ヶ月砂漠に水に貯めるような作業ばっかやってきたけどもう無理だぞ。

 水なんてどこにも貯まりゃあしねぇじゃねぇか!

 俺のオアシスはどこ行った!?

 どこの誰に連れ去られたァ!!?

 おーーーい!!!オアシスくーーん!!!

 アルスくんが探してますよーーーー!!!!


 そう心の中でデモ隊を作っていると、ふと怪しげな影を見つけた。


 黒いコートを身にまとった人物。


 さっき見た奴らだ。


 だがさっきと違うのは二人組でさっきの奴らとは肩幅や背丈などが違う。

 別人だ。

 しかし背中に同じマークがあるということは仲間とみていいだろう。


 アルスは目を細め、顔をしかめながらも彼らを目で追うに留めた。


 その隣でチョム婆も彼らに気づき、顔を曇らせた。


「何故奴らがいる……!?」

「ん?いちゃいけない奴らなのか?」


 小さく呟かれた言葉をアルスの耳がしっかりと拾い上げた。


「……この国には、皆が恐れる危険な人物がいる。そいつはSランク指名手配に記されており、今や世界三大犯罪組織の一つに名を連ねる組織を作り上げた極悪人じゃ。

 その極悪人の名は『フリージック・カーネルバス』。先代の砂王様と花神様を殺した犯人じゃよ」

「え!!?先代の花神と先代の………さおう?」

「この国の王様のことじゃ」

「!!?」


 おいおいおい、とんでもねぇ奴じゃねぇか!

 王様に神人まで殺してんの!?

 神人って言ったら化け物みたいに強いんじゃねぇのかよ。

 それを殺すって、とんでもなく強いじゃねぇか。


「奴が作り上げた組織の名は『砂上の蜘蛛』。この砂の地で何でもかんでも好き勝手するクズ野郎共だよ。」

「そんな奴ら……え、もしかして……」


 チョム婆の視線の先を見て何を言いたいのか悟ってしまった。


「……気をつけるんじゃぞ。砂の地で奴に勝てるのは花神様だけじゃからな」


 そう言ってチョム婆は目を瞑った。


 えぇ……。いやさっき花神も殺されたって言ったじゃん。

 そんな奴がこの街に……。

 これどうしたらいいんだよ。

 とりあえずバーゼルに報告か?


 どうするか二人に聞こうと二人の方を見る。


 うん、めちゃくちゃ気持ち良さそうに寝てるわ。

 呑気だなぁ。

 まぁ今はそんなこと考えたところで意味ないか。

 とりあえず休憩しよ。



---



 ――発掘開始から約五時間強。


 ようやくノルマの一人200個を全員達成できた。

 辺りはすでに赤く染まっており、腹も空く頃になっていた。


「よくやったね。今日はもうこれで終わりだよ。」


 終了の合図に全員がへたり込んだ。


「やっと終わった……」

「ながかったね……」


 一息つきたいところだがそれも束の間。

 今度は採取したものをギルドまで運ばなければならない。

 そこまでしないと報酬が出ないからな。


 ため息をつきつつも石を運ぼうとしていた時、スーリオがやってきた。


「やぁ、三人とも。お疲れ様。今日の依頼は終わったのかい?」


 スーリオは定期的にアルスたちの元へやってくるようになった。

 すっかり気の知れた仲だ。


「あぁ、スーリオか……。あとこれ運んだら終わりだ。」

「スーリオ……アンタも手伝いなさい………」


 気力のないアイビスの声にスーリオ嫌がる様子もなく受け入れた。


「いいよ。ちょうど暇してたしさ。」


 スーリオが来る日は決まってどこかへ遊びに行く日だ。

 色々な景色やら店やらを楽しむ日なのだが、正直今日はそんな気分じゃない。

 今日はいつも以上に疲れた。

 出来るなら一刻も早く家に帰って休みたい。


「スーリオ。悪いけど今日はどこにも行けねぇ。帰って休みたい」

「ハハッ!そうだろうと思ったよ。毎日よく頑張ってるね、君たちは。」

「お前は仕事の方は大丈夫なのかよ」

「まぁ、僕の方も色々大変だけど頑張ってるよ」


 スーリオが何の仕事をしているのは知らない。

 教えてくれなかったから言いたくないんだろう。


 四人は石を持ってギルドへ向かった。



---



 ギルドの換金を終え、報酬をもらった。

 報酬は銀貨一枚。

 つまり銅貨10枚分だ。

 今日出ていた依頼の中で一番の高額だ。


 三人は報酬を受け取り、ギルドを出る。


「悪いなスーリオ。手伝わせるだけになっちまって……」

「いやいいんだよ。本当はみんなで東側に行きたかったんだけどね。花神様が顔を見せる日だから」

「花神様が顔を見せる日?そんな日があんのか?」

「うん。定期的に国民と顔を合わせてお話したりする日さ。国民がどういう状況でどんなことを考えているのか、王族として知るべき責務なんだ」


 へー、そんなこともすんのか。

 王族は王族で大変だな。


「でも三人はお疲れみたいだからね。僕はお暇するよ。それじゃあまた」


 スーリオはまたもあっさりと去って行った。


 手伝わせただけってちょっと申し訳ないな。

 なんか奢ってやるか。

 金無いけど……。


 宿に戻ると辺りはすでに暗くなる頃だった。

 宿へ戻るとバーゼルが本を読みながら待っていた。


「おう、帰ったか。

 今日は髄物とボロボロだな」


 鼻で笑うような言い方にぶん殴ってやろうかと思ったがそんな気力もない。


 汚れた服を薄手の服に着替えて下へ降りる。


 食堂では今日の疲れを癒す飯が待っている。


 三人は持ったなしでそれを口へ駆け込む。


 何の料理かすら見ていないが、一つ分かることはめちゃくちゃ上手いことだ。


 十分もしない内に飯を食べ終わり、部屋へと戻る。

 アイビスはおかわりをしており、バーゼルはゆっくり食べている。

 いつも通りだな。


 部屋に戻り、お金の整理をするフェンリルとそのままベットに寝転ぶアルス。


 冒険者とは思えないほどの重労働に体力は限界を迎え、一瞬で沈むように眠りに落ちた。


 ――あぁ、剣振りてぇ……。



 これが彼らの日常である。



---



 しかし、重労働の日々は意外な形で終わりを告げた。

♦ちょこっと補足♦

三人が働いている合間、バーゼルはかなり自由に過ごしている。バーゼルは自分のお金で過ごしているため、三人に関してはほぼノータッチ。戦闘以外は教えられることはあまりない、というよりも自分より適役がいるからだそう。

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