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第三十話「森を抜けて砂の国へ」

 冒険者として、本格的に旅を始めて約二ヶ月が経過した。

 結果から言うとかなり順調である。


 移動はジャイアント・グレート・トータスの背中に乗り、昼夜問わず移動をし続けており、予定の二倍以上の距離を進めていた。

 幸いなことにもジャイアント・グレート・トータスの行く先がたまたま砂の国の方角だった為、降りることなく進めている。


 乗り心地では、まぁ悪くない。

 背中の甲羅は角張った岩などではなく、少し丸く平べったい岩であるため、気にせず眠れる。


 戦闘の訓練をする際はバーゼル以外の三人が下に降りて、自分たちで戦い、食料を調達。


 背中の上で火を使っても甲羅が分厚いせいか、ジャイアント・グレート・トータスは一切気づく様子がない。

 食の面でも問題は無いが、正直言ってあまり美味しくない。


 時々、小さな村の様なものを見つける。

 柵で囲われたものの中に小さなテントのようなものがたくさんある。

 そこには色々なものが売られており、バーゼルに買い方を教えてもらった。


 そうやって服やら本やら武器やら依頼やらと、必要なものはある程度は揃えることが出来た。

 ただ、長居をするとジャイアント・グレート・トータスとの距離がかなり開いてしまうため追いつくのが大変だった。


 以外にも快適な旅路のおかげで、アルスたちは特に何か大きな問題が起こることもなく、冒険者ランクもDランクに上がりかけのEランクとなっていた。


 狩りの方は結構慣れてきたな。

 フェンリルは特一魔術がほぼ元通りに使えるようになってるみたいだし、近接戦の訓練も始め出した。

 俺が教えるとフェンリルが理解出来ずフリーズするので基本はバーゼルが教えている。

 なんというか前よりも熱が入っているように見える。


 アイビスも移動中は魔獣の本やら魔法の本やらをずっと読んでたおかげか、魔法のバリエーションが増えたように思う。

 それでもバーゼルの厳しい判定にすぐに機嫌を損ねるので宥めるのに苦労している。


 俺も無闇に魔獣に突っ込まないように意識はしてるけど、まだ癖が抜けない。

 新しい剣を買ったが、刀身が太くて長いから重くて振りづらい。

 いまいち感覚を掴めていない状態だ。


 パーティとしては悪くない。

 最初の方は苦戦したものの、お互い戦闘中でも声を掛け合えるようになってきた。

 バーゼルの手助けも今はほぼない。


 そんなバーゼル曰く、俺たちの成長速度はかなり早いそうだ。

 もう数ヶ月もすれば自分が必要ないと言っていた。

 まぁ俺たち選ばれし者だし?

 英雄になる日も近いなコレ。


「お前らにこの世界の言語の事、俺言ったけ?」


 みんなで駄べりながら各々したいことをしていた時、バーゼルがそう呟いた。


「言語についてですか?いや、そんな話は聞いてないですよ」

「言語?言っちゃいけない言葉みたいなこと?」

「いや、そういうのじゃねぇよ。人が話す言葉の種類の話だ」


 人が話す言葉の種類?

 …………え、もしかして……


「言語が複数あるってことですか?」


 フェンリルもアルス同様勘づいたようだ。


「正解!この世界には言語は複数ある。人語、魔人語、獣人語、和士語、海人語、巨人語、天人語。他にも古代エルフ語やら色々あるが、とりあえずこの六つを覚えときゃあなんとかなる」

「魔人語に獣人語って、めちゃくちゃあるな。地上の人間はこんなに言語を使ってどうすんだよ」

「人間だけが使う言語なわけねぇだろ?人間が使うのは基本人語だ。その他の言語は他の種族が使うんだよ」


 ポカーンとした顔を浮かべるアルスとアイビス。

 バーゼルはその顔を見て、思い出す。


「あれ?俺種族の話もしてなかったけ?」

「してないですね」

「あらら、ついうっかり。地底の本とやらで知ってんのかと思ったわ」

「まぁ大抵の事は分かるんですけど、なんせその地底の本が1000年前に書かれたものなんで、今と比べると結構変わってるんじゃないですか?」

「あー、そうだな。尚更教えとかねぇとな。」

「気にするでない。朕が許そう」

「誰お前。てかどこで覚えたその単語」

「エロ本」

「ガキがいっちょ前にエロ本なんか呼んでじゃねーよ!…………ちなみにどういうやつ?」

「主従逆転」

「!!? お前……ほんとにガキか……?」


 子供とは思えないその貫禄のある横顔を見て、バーゼルが混乱する。


「くだらない話してんじゃないわよッ!!!!」


 アイビスがアルスとバーゼルの頭を叩く。


「っ!………まぁエロ本は置いといて、種族の話だがー、正直どれだけいるか分かってねぇ。昔に比べて色々滅んだりしてるからな。今言えるのは人族、魔族、獣族、和族、海族、天族、エルフ族、その他諸々。一番多いのは人族だが、次に多いのは魔族だ。魔族は当然魔人語を使う」

「? それが?」

「今向かってる砂の国は八大強国だ。人族だけじゃなく、魔族も多くいる。たいていは人族を話せると思うが、中には話せない奴もいる」

「……そんで?」


 まるで分かってない様子のアルスにバーゼルがため息をつく。


「無闇に突っかかるなよって言ってんだ。冒険者間での問題行為で活動を止められたくねぇからな」


 なるほど、バーゼルは案外慎重なようだ。


「大丈夫大丈夫!そんな喧嘩みたいなことなんてならねぇよ!俺、大人だから?」

「なれるといいですねぇ〜大人に〜」


 バーゼルに馬鹿にされるも今はなんとも思わない。


 数十メートルの高さからの景色がまぁ最高でどんな事でも流してしまう余裕すらある。


 こう見ると砂の地も悪くねぇなぁ。


 なんて思っていると、遠くの方に何やら背の高い影が見えた。


 ん?建造物?あっちの方にもデカい街とかあんのかな。


「なぁ、バーゼル。『砂の国』以外にもこの砂漠にデカい街とかあんのか?」

「『砂の国』以外?いや、街とかはまぁあるが、デカいっていうほどのところはねぇはずだが?」


 てことはアレは建造物じゃないのか?

 デカい岩………いやデカすぎだろ。


 アルスが影を見ながら首を傾げている中、バーゼルは視線を前方へ移す。


「おい、そうこうしてるうちに着いたぜ?『砂の国』だ」


 三人は勢いよく身を乗り出す。


「『砂の国』ーーー!!!」

「どこ!?どこよ!」

「ちょっ、二人とも!押さないで!落ちちゃうよ!」

「アレだアレ」


 バーゼルが指を差す。

 その指の先はアルスたちの進路から見て北東の辺り。

 その先に巨大な森林があった。


 三人は固まる。


「え?……森?」

「なんかコレ、どっかで見なかったか?」

「レーデ村……かな?」


 困惑する三人。


「いや何言ってんだ?よく見ろ。全然違うだろ。木の高さも森林の深さも」


 何を言ってるんだとばかりに顔をしかめるバーゼル。


「そこじゃねぇよ!レーデ村もそうだったけどなんで目的地が毎回森なんだよ!スっと国見せろよ!」

「まぁ、気持ちは分かるが、ここはそういう場所なんだよ。砂漠に森があって川も流れてる。レーデ村は別な。あそこは例外」


 三人は怪訝な表情を浮かべる。


 確かになんかありそうではあるけど、本当に砂の国か?

 いかにも怪しそうな場所なんだけど。


「さて、降りるぞー。ここからは徒歩だ」


 四人はすぐに荷物をまとめて下へと向かった。



---



 森林の目の前まで近づいてようやくわかったことが一つある。

 それは、木の大きさが異常な事だ。

 レーデ村の周りの木も大きかったが、比じゃない。

 目測十メートルはあると見ていい。

 そのレベルの大きさだ。

 そして森の中は全く先が見えない。

 見た事のない植物もある。

 正しく、ジャングルとはこれの事を言うのだろう。


「ね、ねぇ……ウソでしょ………こんなとこ入るの………!?」


 怖気付いたかのように声を震わせるアイビス。


「あぁ、そうだが?なんだ?ビビったか?」

「いやだって、キモいじゃない!!!!あの葉っぱとかあの花とか!何なのよ気持ち悪い!」


 見慣れない植物。

 奇妙な形な上、サイズもかなり大きい。

 確かに気持ち悪い。


「ここは独自の生態を持つ世界でも唯一の場所だ。砂の国に行くにはここを通った方が早い」

「通った方が早いってことは通らなくても行けるってことよね!?」

「まぁ、行けないことはないが一週間かかる。この森を通れば早くて一日で着く」


 全然違ぇじゃん。


「それなら森を通った方がいいね。ほら、いい経験になりそうだしさ!」


 目をキラキラ輝かせながら説得するフェンリル。


 お前は森に入りたいだけだな。


 アイビスは顔を引きつらせながらも恐る恐る歩き出した。



---



 森の中は鬱蒼とした緑が広がっていた。

 レーデ村の時も鬱蒼としていたが、ここはあそこ以上だ。

 木々や植物などで全てが覆い隠されて何も見えない。

 行く先はもちろん、足元ですら見えない。


 それに加え、ここは何故かじめっとした空気を感じられる。

 湿度が異常に高いのだろう。


 そんな場所をバーゼルは何食わぬ顔でスタスタと歩いていく。

 三人も遅れないように進む。


「おい、フェンリル!何してんだよ!急げって!置いてかれるぞ?」


 しかし、フェンリルだけは進んでは足を止め、進んでは足を止めての繰り返しをしていた。


「ちょっと待って!今コレ見てるから。すぐに追いつくよ」


 フェンリルは植物一つ一つに興味を示し、毎度足を止めている。

 そのせいで中々前へ進まない。


 フェンリルがこういうの好きなのは知ってるけど、さすがに急がねぇとバーゼルに置いてかれちまう。

 ここで迷子になれば間違いなく終わりだ。

 誰かに見つけてもらうなんて不可能だろう。


「フェンリル、さすがに急がねぇとやべぇぞ?」

「何してんだお前ら。ちんたらしてんじゃねぇよ。

 ここからはこれに乗って行くぞ」


 そう言ってバーゼルは目の前の大きな黒い岩に手をかけた。


 乗っていく?この岩に?


「乗って行くって、これただの岩じゃない。」

「そんなわけねぇだろ?よく見とけ」


 バーゼルは岩肌に向かって三回ノックする。

 すると次の瞬間、岩肌から突如としてギョロッと大きな目が現れた。


「うえっ!!?」

「キモっ!」


 顔をしかめるアルスとアイビス。

 だが、フェンリルはそれをじっと見て呟く。


「もしかしてコレ、魔獣ですか?」

「「え!?」」

「あぁそうだ。こいつは『ロシャーノ・ガジャーン』。ゾウ科という少し変わった種類の魔獣だ。」


 ゾウ科……初めて聞く種だな。


「その魔獣に乗るって、さっきみたいに運んでくれるんですか?」

「こいつは砂の国が()()()()()()魔獣の一種だ。こいつの役目はここで外から来る奴を中へ案内する役目。同時に不審者が入ってこないようにするための警備の役割が与えられてある。この首輪がそうだ」


 いかにも高級そうな首輪にキラキラ光る石が埋め込まれている。


「魔石ですか。」

「マセキ?なんじゃそれ」

「魔石よ!魔力を蓄えられる貴重な石よ!魔法の杖とかにあるこの石も魔石よ!」


 あぁ〜そう言えばそんな話を聞いたことがあるような無いような。

 ――まぁいいか。


「所持してるって、コイツ国のものなのかよ」

「これに乗りゃあ道に迷うことは愚か、倍以上のスピードで進んでくれる」


 バーゼルはロシャーノ・ガジャーンの上にひょいっと登り、アルスたちも続いて上へ登る。


 するとそのロシャーノ・ガジャーンはゆっくりと立ち上がり、ズシズシと大きな音を立てながら歩き出した。



---



 ロシャーノ・ガジャーン――。

 この名前の言いづらい魔獣の乗り心地は乗せてもらっておいてなんだが、かなり悪い。


 体全体が岩で覆われているため座り心地は悪いし、体が重いせいか足元の地面が悪いせいか、歩く度に体を揺られ、たまに尻が浮いたりもする。


 座ってるだけで疲弊したのは初めてだ。

 しかしそれでもフェンリルは一人目を輝かせながら周囲を観察していた。


 そんな中、アルスは一人周囲に違和感を覚え、首を傾げていた。


 おかしい。

 というより、ただ単に疑問だ。

 森に入ってからずっと魔獣の気配はするし、何なら姿が見えた奴もいた。

 だがそのどいつも俺たちの事を居て当然かのようにスルーしてくる。

 これがここの魔獣にとっての普通なのか?


「なぁ、なんかこの森変じゃね?なんで魔獣は襲ってこねぇんだよ。森も無駄に広いしよ」

「それもそうだね。地底の本にはここまで森が広いとは書かれてなかったはずだし、1000年でここまで地形が変わるものなのかな」

「ん〜、まぁ、ここの地形に関しては変わったのはつい最近だがな。確かほんの数年前だったはずだ」

「え?そんな一瞬で地形が変わるんですか!?」


 食いつくように尋ねるフェンリルにバーゼルが渋々話し始める。


「お前ら、『神人』の話覚えてるか?」

「あぁ、あの神様の力を授かったとかいう超絶すごくて戦争の火種になったヤバい奴らね」

「言い方……」

「今現在この時代に確認されている『神人』は4人。『雷神』、『闇神』、『氷神』、『花神』の4名。そしてその中で最も若い『花神』はこの国にいる」

「そうなんですか!?」

「え?ヤバいんじゃね?逃げた方がよくね?とんでもない怪物なんだろ?」

「怪物って言っても暴れ回るような連中じゃねぇよ!それは初代の話だ。今は力にものを言うような奴はいない。それに今の『花神』はまだ『半花神』状態だからそこまで強いわけじゃねぇ」

「『半花神』?何よそれ!言いづらいわね」

「『神人』には『半神人』って言うのがあってな、まだ完全な『神人』になっていない『神人』のことを言う」

「?」

「要は未完成の『神人』だってことだ」


 つまり、成長段階的な?

『神人』としては子どもって考えた方がいいのか。


「で、本題に戻るがな、この森はその『半花神』によって()()()()()()()()場所だ」

「……は?」

「元は今の4分の1にも満たない森だったらしいが、うっかりでこの大きさまで広げちまったらしい」


 は?いやいやいやいやいや、何言ってんの?

 森を広げる?

 4分の1の大きさから?

 この大きさまで?


「それがまだ『半神人』の状態で出来てしまったってのはまぁとてつもないがな」

「いや嘘だろ?そんなこと出来る奴なんているわけ……」

「いるんだよ。そんなことが出来るわけがない。夢の話だ。それを現実に可能に出来る。だから『神人』なんだよ」


 衝撃で言葉を失うフェンリル。

 理解出来ず頭の上に「?」が浮かんでいるアイビス。


 到底信じ難い。

 何が暴れ回るような連中じゃねぇだよ。

 十分暴れてんだろ。

 うっかりでしていいレベルじゃねぇ!



 ひたすら進み続け、おそらく森の半分くらいの辺りでバーゼルが休憩を摂ろうとロシャーノ・ガジャーンの足を止めさせた。


 そこは小さな湖に森の木々が吹き抜けた場所だった。

 落ち着いた雰囲気のあるその場所で、4人は各々休憩を摂り始めた。


 バーゼルは近くにある木でハンモックを吊るし昼寝。

 アイビスは靴を脱いで浅い湖に入り、フェンリルは変わらず周囲の植物の観察を続け、アルスは気分転換にと少し高い場所に登っていた。


 ったく、あの魔獣の乗り心地どうなってんだよ。

 尻がめちゃくちゃ痛てぇよ。

 しかもこの森もおかしいだろ。

 魔獣はうじゃうじゃいるのに全然襲ってこねぇ。

 それどころか鉢合わせてもスルーしてくる。

 どうなってんだよ。

 フェンリルもフェンリルだ。

 よくあんなに興味持てるな。

 お姉さんならまだしも植物って………まぁどっちも花はあるか。なんちて。


 アルスは一面の景色を見渡す。

 辺り一面は言わずもがな緑ばかり。

 なんの面白みのない風景にアルスは肩を落とす。


「何にもねぇじゃん。ほんとにこんなところに国があんのかよ」

「あるさ。ほらよく見てごらん!あそこ!」


 横からまっすぐ指を差され、アルスは目を細める。


「どこだよ」

「ほらアレだ!ちょっとしか見えないけど白い建物が見えるじゃないか。大きな木があるところ」

「ん〜……あっ、ほんとだ。なんかあるな」

「アレは王宮だ。砂の国の王宮。王様がいる場所だ」

「ほう〜、アレが王宮かぁ。じゃああの奥のデカい木はなんだ?」

「アレは王国の象徴『セナフィムの大木』。初代花神様が芽吹かせたと言われてる木なんだ。あの木から咲く花には初代花神様の魔力が流れていて、手にした者は絶大な力を得ると言われているそうだ。まぁ迷信だけど」

「ふぅん、なんかよく分かんねぇけどすごい木なんだな」


 でっかい木だなぁ。

 ここから余裕で見える。

 となるとあそこら辺が王国か。

 まぁ、見た感じそう遠くないな。

 日が落ちる前に着きそうだ。


 と、そろそろ下へ降りようかと思った時、隣にいる人物に気づいた。

 それはいまさっき会話をやり取りした人物。


「もう降りるのかい?」


 何食わぬ顔でアルスに首を傾げるその人物はフェンリルでもなく、バーゼルでもアイビスでもない。

 知らぬ顔が並んでいた。


 え?ここ10メートルある木の上何ですけど?

 どうやって登ったの?

 いやそれは俺も一緒か。


「………お前、誰?」


 焦る気持ちを抑えつつも冷静に問いかける。


「やぁ 初めまして。

 僕はスーリオ!この国を愛してやまない一人の人間さ!」


 見た目は薄緑の髪に整った顔立ち、服装はいかにも庭を出歩くような無防備な軽装。

 見た目的にアルスより少し年上に見える。


 砂の国の人間だということがすぐに分かった。


「君の名前は?」

「……俺はアルス。ち……遠いところから来た」

「へぇ〜、アルスって言うんだね〜」


 スーリオはアルスを頭のてっぺんからつま先まで興味深そうにジロジロと見る。


「君はこんなところで何をしてたんだい?」

「砂の国に向かう途中の休憩がてらに気分転換にと思って高いところに登ってんだよ。そういうお前はこんなところで何してたんだよ」

「僕はお仕事が疲れちゃってねぇ。君と同じく気分転換しようと森を散歩してたんだけど、そしたら見慣れない人たちがいたから思わず話しかけたってわけさ」


 気分転換にこの森を散歩って……しかも見慣れない人に話しかけるかよ普通。


「遠いところから来たって言ってたけど砂の国は初めてだよね?」

「え?う、うん、まぁそうだな、初めてだ」

「じゃあ僕が案内しようか?」

「………」


 アルスは疑りの目を向ける。


 怪しい。

 いきなり話しかけてきた上に国まで案内するときた。

 これは何かあるぞ。

 何か企んでる。

 俺はもう騙されないぞ。

 レーデ村の二の舞を踏むまい。

 シスターに騙された時は結構悲しかったんだからな?


 アルスの反応にスーリオは申し訳なさそうに手を振る。


「あ、イヤだったらいいんだ!いらない事しようとしてごめんね……」


 アルスはその言葉に一段と目を細める。


 ふむ………まぁ、悪い奴ではないのかもしれない。

 ここはバーゼル先生に通すが懸命だな。


「いや、ちょっと俺と下に来てくれ。仲間を紹介する」

「!! 分かった!」


 二人は下へと降りた。



---



 バーゼルにスーリオを紹介して同行のことを伝えるとものすごく嫌そうな顔をしつつも「ご自由にどうぞ」と同行を許可した。


 そして今、スーリオの案内の元、再びロシャーノ・ガジャーンに乗り砂の国へと向かっていた。


 と言っても、ロシャーノ・ガジャーンがいる限り道に迷うことはないし、真っ直ぐに砂の国へと向かっている。

 そのため、スーリオはフェンリルと植物のあれやこれやを楽しそうに話していた。


「この森の魔獣が人を見ても攻撃してこないのはするべき人間とそうじゃない人間を嗅ぎ分けてるからなんだ。この森を管理するために常日頃から人が出入りするからね。朝飯前なんだよ」

「そうなんですね!それで近づいてもスルーされてたのかぁ」


 二人の会話を耳に挟みながら、アルスは考えを巡らせていた。


 んー、こいつ何者なんだ?

 いきなり近づいてきて同行したいなんて、状況だけ見ればかなり怪しい。

 ただ、実際話してみるとそうでもない。

 嘘が無く、人当たりのいい感じだ。

 それに言葉の節々に気品さも感じられる。

 ますます何者だよ。


 アイビスは気にしてないと言った感じ。

 しかし、バーゼルは依然嫌そうな顔をしている。

 思わずバーゼルに聞いてみる。


「バーゼル、お前アイツと知り合いなのか?」

「……まぁ、ちょっと面識あるくらいだ」

「そうなのか、じゃああの時なんでご自由にどうぞなんて言ったんだよ。そんな嫌そうな顔してんのに」

「断った方がめんどいことになるからに決まってんだろ」


 ふむ、やはり悪い奴か。

 いや、でもバーゼルが面識あって同行を許可したんだから問題ないか。あれ?分かんなくなってきた。


「おっ!そろそろ見えて来たかな」


 スーリオの言葉に視線を前にやると森の終わりが見えた。

 暗い森の中とは打って変わって、眩しい光が見える。


 そして森を抜けるとそれは姿を現した。



---



 見た事のない建物、植物、服装。

 それらの全てが作り出したその風情と雄大さを含んだ景色にアルスたちは思わず驚嘆の声を上げた。


 スーリオは見せつけるようにめいっぱい手を広げる。


「――ようこそ!ここが砂の国、『フロールワ王国』だ!」

♦ちょこっと補足♦

名前:スーリオ・???

年齢:15歳

役職:???

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