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第二十一話「地上へ」

 ――約一ヶ月。それが、アルスたちが地上に出るまでに残された期間だった。


 そして一ヶ月後は卒業式。

 アルスたちは学園を卒業をしたその日に地上へ旅立つことになった。


 わざわざ卒業式の日に出なくともと思うが、フィーネス曰く地上に出やすい周期というものがあるらしい。

 それがちょうど卒業式の日なんだとか。


 それまでの間は図書館に行ったり、放課後にフィーネスの所に行ったりして地上の情報を集めた。


 どんな小さなことでも見逃さず頭に入れていく。


 初めて行く場所なのだ。

 準備は最大限していかなくてはならない。


 おかげでフェンリルはまだしもアルスとアイビスは頭がパンクしかけていた。


 教室では三人が地上に行くことを秘密にされている。

 というか、地上のこと自体知られていないのだから当然なのだが。


 学校では普通に過ごし、放課後は地上の情報集め。

 そんな日々を毎日続けていき、二週間が過ぎた。



---



 地上に出るまで約一週間。


 三人はいつものように情報収集。

 と、言いたいところだが、今日は気分転換に『約束(リアンフィニ)の花畑』へと来ていた。


 卒業試験を終え、地上世界の調査をしに行く任務が与えられた三人は外の世界へ出ればしばらく帰っては来れない。

 場合によってはもう二度と帰って来れないのかもしれない。


 今日は三人の思い出の場所を見ておこうと、ここへ来ていた。



 三人は並んで大樹の根元に背中を預けながら座り込み、一面に広がる花畑を眺めていた。


 三人とも何を言うでもなく、記憶にある景色を頭の中で思い浮かべていた。


 初めてここを見つけた時、ここで一日中過ごした時、喧嘩をした時、命をかけてこの場所を守った時。


 何をするにしても、この場所で、この三人で、忘れられない色濃く長い長い日々を送ってきた。

 三人にとってこの場所は生活の一部そのものだった。

 胸の奥には名残惜しさが残る。


 まさかここを『最後』と思う日が来るとはなぁ。


「相変わらず綺麗な場所だな」

「そうだね」


 約二週間、アルスたちは地上のことを色々と勉強したが、信じられないようなことも多くあった。


 本で得た知識だが、生態、地形、常識、人種、全てが地底とは違っていた。

 その本がいつ書かれたかで信憑性はかなり変わってくるが、今持てる知識は大体持ったと言えよう。


 地上調査の件だが、親に話しては行けないとフィーネスから言われたため、親に報告はしていないことになっている。

 ただ、アーミスだけはその事を知っている。

 前日に話していた内容のせいだろう。


 何はともあれ、地上へ向かう準備はほぼ完了したと言っていいだろう。


「二人とも地上のことは頭に入ってる?」

「おう!入ってるぜ!地上には耳の長い『えるふ』っていう種族がいて、その『えるふ』のお姉さんたちは美人でバイーンでキュッとしててボーンらしい」

「語彙力どうなってんのよ」

「あと『きょじん』って種族のお姉さんたちは真下から見上げたら綺麗な三角形が見えるらしい!そこで手を合わせて願い事をしたら乳神様の恩恵があるんだってよ!まぁ、その代わりお姉さんたちに踏み潰されるらしいけどな」


 お姉さんに踏まれるなら気持ちいいもんなんだろうけど、踏み潰されるとなると死んじま………………いや、生足ならアリか?


 軽蔑の目を向けるアイビス。

 フェンリルが苦笑いをしながら答える。


「ははは………そうなんだ……。ところでそんな知識、本には無かったんだけど、誰からその知識を教わったの?」

「フィーネスだけど?」


 当然のように返す。


「アルス、あの人のそういうところは当てにならないから覚えたって意味ないよ。」

「キモっ」


 容赦ない一言だ。


 フフフッ、なんとでも言うがいい!

 俺はそんな言葉では止まらんぞ!

 何故なら地上にはそんなお姉さんがたくさんいるからな!!!

 人類の未来は明るいぞ!!!


「エルフ族とか巨人族とか少数種族でしょ?会えるかも分からないじゃない」

「い、いや、会えるし?少数だろうが存在するなら会えるから!っていうか会いに行くから!!!」

「いや、フィーネス先生の知識がいつ、どこで入手したものかは分からないけど、もし2000年前のものなら種族自体滅んでてもおかしくないよ。少数種族だし、それほどの長い年月だし………」

「ぐっ………わ、分かんねぇよ?もしかしたら種族が増えてるかも知んねぇだろ?」

「ちなみに本に乗ってる内容だと、エルフも巨人も寿命が長い代わりに生殖行為が疎いらしい。だから増えてることはなさそうだね」


 涙目になるアルス。


 なんだよお前ら!

 夢ぐらい持ったっていいじゃねぇか!

 期待させろよ!

 地上の調査のついでにお姉さんの調査だってしたっていいじゃねぇか!!!

 鏡で髪型整えるついでに鼻くそがついてないかチェックするようなもんだろ!?

 鼻くそがダイヤにすり替わってるだけだよッ!!

 いいじゃねぇかそれぐらい!!!


 軽蔑の視線を送り続けるアイビス。


「まぁ、種族のことは置いといて、地上調査にあたって二人の気持ちを聞かせてもらおうかな」


 まるで本題に入るかのように呟く。


「なんだよ改まって。遺言でも聞きてぇの?」

「違うよ!これから未知の場所に行くんだ。不安になることもあるでしょ?そういうのを今のうちに吐き出しておいた方が楽かなって思ってね」


 なるほど、フェンリルらしい考えだ。


「そうね。そうしましょ」

「不安に思うことって言っても、俺そんなに不安なことねぇんだよなぁ」


 そもそも頼まれたとはいえ、外に行くって言い出したのは俺だ。

 外に行くつもりでフィーネスの話を聞いていたし、不安に思うことなんて何も………………強いて言うならば母さんのことぐらいかな。


 アルスがそう言い捨てた傍ら、アイビスはキュッと口を結ぶような表情をした後、不安げな声で呟いた。


「私は………あるわよ…………不安に思うこと。たくさんあるわ」


 意外だな。

 あの挑戦的で「食われる前に食ってしまえ!」といった精神の持ち主であるアイビスが不安に思う事があるなんて。


「それはどんな不安?」

「…………家族を置いていく不安、友達に忘れられるかもしれない不安、たくさんあるわ。でも、地上に出ることに対しての不安は無いわ。地上のことを怖いとは思わないし、この私が死ぬのは寿命くらいしかありえないもの」


 それはごもっともですが……。

 つまり、地底に残していくものへの不安ってことか。

 いや、不安って言うより心残りだな、


 俺も同じだが、俺らみたいに自分に自信がある奴はやっぱり自分よりも他人を心配してしまうものなのかな。


「地上に出なかったらずっとみんな一緒に居れるし、家族のことで心配する必要も無くなるじゃない。

 ………地上ですることは大体分かってるし、地上に出たいって思うのも事実だけど………でも、ふとした時に本当に出ていいのかなって思うの。」


 そう言いながらアイビスは顔を俯かせた。


「………アイビスが言う不安とは違うけど、僕も不安に思うことはたくさんあるし、地上に行くことに対してまだ少し抵抗はある。本当にその選択が正しいのか、なんてね。」


 苦笑いを浮かべるフェンリル。

 その表情を横目で見るアルス。


 二人が弱みを見せることはこれが最初ではない。

 ここぞという選択肢。

 人生の分岐点というべき場面でそれはよく見る。


 不安や恐怖、アルスにだってそういった感情はある。

 それらの感情が沸き起こる出来事が少ないわけでもない。

 むしろ最近は色々あり、いつもより多くあった。

 そんなアルスだが、人生の分岐点での選択に対する不安に関して、最近自分なりの明確な最適解を見つけた。


 アルスはため息をこぼすように呟いた。


「選択の正解不正解って、そんな最初から分かりきった答えなんてあるわけねぇだろ。正解の道に進んでも失敗する奴は失敗するし、逆に不正解の道に進んでも成功する奴だっているんだ。要はどんな道に進もうが、大事なのは『生き方』だと俺は思う。進んだ道が何であれ、この道で正しかったって思える生き方をすればいいだろ。だから俺は進む(地上に出る)ぞ?この道が正しかったって証明してやる。」


 重みのある言葉に二人は呆気にとられた。


 まさかアルスの口からそんな言葉が出るとは……。


「アルス、その考え方は深い考え方だね。アルスが大人びて見えたよ」

「やっぱそう思う?こういう感じで話してれば地上の女の子たくさん口説き落とせるかな?」

「うっわ、その言葉で一気に冷めたんだけど……」


 調子を取り戻した二人。

 その様子を見て、アルスは立ち上がった。


「んじゃあ、最後にこの木に俺たちの名前でも刻もうぜ!」

「いいね!記念に残しておこう!」

「綺麗な字で書きなさいよね!失敗したら許さいないわよ!」


 アルスは目線の高さに三人の名前を横並びに書き入れ、名前の下に言葉を入れた。


 二人はそれを覗き込む。


「? 『必ずこの場所へ帰る』?」

「うわっ、なに書入れてんのあんた。寒っ!」

「うるせぇ!これは誓いだ!誓い!

 何があってもここへ帰ってくる。そういう誓いだ。」

「へー、アルスにしてはかなり気合入ってるね。」

「当たり前だ!俺は絶対に生きて帰ってくる!」

「それは別にいいんだけどなんで地上の言葉なの?」

「い、いや、それは……もし、誰かがこれを見つけたら色々ヤバいだろ?てか字合ってる?」

「あぁ、そういう配慮はちゃんとしてるんだね。まぁ一応合ってるよ」


 フィーネス曰く、地上の言語は2000年前から比べるとおそらく変わっているだろうが念の為覚えておけとの事だったので三人ともそれなりに地上の言語は分かるつもりだ。


「……まぁ、行こっか……」

「…………うん」


 その後三人は、地底中の思い出のある場所を巡った。

 ヨルメールの泉、東大大きな部屋(タンガ)の商店街、中央大きな部屋(タンガ)の街、学校、図書館、村の畑。

 全てを巡った後、いつものように笑い合いながら帰路に着いた。


 

---



 一週間後、卒業式及び任務決行前日。


 アルスはアーミスと最後の夕時を過ごしていた。


 食べ終えた食器をアーミスはテキパキと片付け、アルスは明日の準備をアーミスの目の届く場所でしていた。


 魔法陣のスクロール、よし。着替え、よし。非常食、よし。地上の本、よし。お守り、よし。時計、よし。愛剣、よし。エロ本、よし。

 大体これで大丈夫かな。


「アルス、最後のは置いて行きなさい」


 ぐっ……バレたか。


 そっとフィーネスからもらったエロ本を荷物から退ける。


 おいおいどうすんだよ。

 これが無けりゃ生きていけねぇよ。

 何をおか………見ればいいんだよ。

 ………いや、地上にもエロ本はあるか。

 フィーネスみたいなやつだってたくさん居そうだし、無いなら向こうで買えばいいな。


「アルス」


 そんなことを考えているとアーミスの声が後ろからかかった。


「!! な、なんだよ母さん。エロ本は持って行かねぇよ!」


 そう言いながら後ろを振り向いた時、アーミスがアルスを優しく抱擁した。


 潰れないように優しく、それでいて熱の籠った手と体でアルスを包み込む。


 いきなりの行動にアルスは首を傾げる。


「母さん?」


 母の顔は見えない。

 だが、どんな顔をしているのかはすぐに分かった。


「アルス、辛い時はフェンリル君とアイビスちゃんを頼りなさい。あなたもちゃんとあの子たちを助けてあげなさい。外の世界は躓くことの方が多いけれど、三人で支え合えば必ず乗り越えられるから。」

「……うん」

「外の世界の人たちのことも理解して仲間を増やしなさい。きっとあなたの力になってくれるから。」

「うん」

「ごはんはちゃんと食べなさい。本は毎日一時間は読むのよ。」

「……うん」

「怖くなったら逃げてもいいのよ。誰も咎めはしないわ」

「…………うん」

「運命に翻弄されず、あなたの生き方を貫きなさい。その生き方は、賞賛されるものじゃなくても、憧憬されるものじゃなくてもいい。あなたの選んだ生き方はきっと誰かの救いになるから。」

「……うん」

「アルス、ちゃんと生きて帰って来なさい。」

「……………うん!」


 アーミスの声は優しい声から次第に震えるような声に変わっていき、アルスの肩は涙で濡れていた。


 母は滅多に泣かない人だ。

 いつも笑顔で優しく抱きしめくれて、それでいて喧嘩を止めたり、誰かの為に身を粉にして動ける心身ともに強い人だ。

 今まで出会った人の中で一番強くて優しい人だと思う。


 そんな母の涙と涙声は深く脳裏に焼き付いた。


 やめてくれよ、覚悟揺らいじまう……。


 アルスはアーミスの背中に手を回し、


「俺、絶対生きて帰ってくるから。アイビスとフェンリルと三人で!」


 力強く呟かれたそれは、アルスにとって地底での最後の誓いになった。



---



 翌日、卒業式にて全員が卒業証書を受け取り、皆卒業を果たした。

 みんな笑顔で六年間の思い出を語らい合っています。

 楽しい時も辛い時も、一緒に乗り越えてきた仲間なのだから当然でしょう。


 そしてその姿を(わたくし)、アルス君は、後ろの席で温かい目で見守っています。

 隣には在校生たち、反対側にはラスティーニ先生が頭を抑えています。

 もう分かりましたか?


 俺、一人だけ留年したんだけどーーーーーーー!!!


 ラスティーニの白い目がアルスを見下ろす。


「なんでだよおおおッ!!!なんで俺だけ留年!?なんで俺だけこっち側ッ!?」

「アルス、座れ」

「なんで俺だけ在校生と一緒にアイツらの巣立ち見守らなきゃいけねぇの!?どう考えても俺もあっち側だろ!!!」


 声を荒らげるアルス。


「何度も言わせるな。卒業試験、お前だけ落ちたんだ」

「それは分かったけどさ、何がどうやって落ちたんだよ!!俺あの日結構調子良かったはずだけど?!」

「………座学はよく頑張っていた。全て平均点以上で中には上位に入っていたものもあった。問題はその後だ。演習は努力点で20点はもらったものの最下位。実習に関してはそもそも神隠しの騒ぎで失格だ」

「なんでだよ!なんでそれで失格!?追試くらいしてくれたっていいじゃねぇか!!

 俺は失格になったのにアイビスとフェンリルは!?アイツらも一緒だったろ!?」

「あの二人は他の二教科で一桁位に入ってる。最終的な順位は下がれど、実習の点数がなくとも卒業出来るんだ」


 二人の会話を聞いていた在校生がザワつきだす。


「あれって、留年生の人?」

「そうだよ。問題児だって噂の人」

「留年って、学園始まっていつ以来よ」

「てか、留年する人って本当にいるんだな。幻だと思った」

「確か神隠しの騒ぎもあの人じゃなかった?」

「え?ヤバい人じゃん」

「いや、でも緊急事態の時の新種の魔獣を倒したのってあの人らしいよ」

「ほんとに?でたらめじゃない?なんか嘘つきそう」


 酷い言われ様である。


 くそぅ……。

 なんで俺だけこんな目に遭うんだよ。

 留年させられて年下から罵倒されて………。

 卒業くらいさせてくれたっていいじゃねぇか!

 これが地底での最後の思い出なんだぞ!


「ちくしょう………あのクソジジイめ、後で斬ってやろうか………!」

「やめておけ。この後の事もあるんだ。その時に言いたいほど言えばいい。

 ……ただ、喧嘩別れだけはするなよ」


 何を案じてか、ラスティーニは遠い目をしてそう呟いた。


「………分かってるよ」


 ラスティーニはアルスたちが地上に行くことを知っている。


 フィーネスが選んだ数名の教員のみその事が知らされているらしい。

 どうやら道案内と()()()の時のためらしい。

 まぁ、そのもしもが何かは知らないが。


 アルスはやるせない気持ちは抑えて同級生の卒業式を見守った。


 ちくしょう……。



---



 卒業式を終えた後、三人は誰にもバレないようこっそり、村に直帰した。

 他の者たちは街の人たちが卒業祝いをしてくれるとのことでお祭り騒ぎだ。

 まぁ、アルスは卒業していないが。


 まとめた全ての荷物を持ち、またこっそりと村を出る。


 最後に村の入り口でアーミスが三人を抱き締めて「行ってらっしゃい」と一言。

 三人も「行ってきます」と返し、振り返ることなく村を出た。


 俺はこうやって母さんが見送ってくれるが、フェンリルやアイビスは親がこの事を知らないのだから、別れの言葉も言えない。

 これを幸福と思うべきだな。



 アルスたちは北大大きな部屋(タンガ)に繋がる渡り道(ラスタ)の入り口に到着した。

 周囲は既に就寝前に入っており、誰もいない。


「って、フィーネスまだ来てねぇのかよ」

「ほんと早くしなさいよね!見つかったらどうするのよ!」

「そうだね。でもそれより、ここまで急いできたからあまり何も思わなかったけど、この服なんかすごく新鮮というかなんというか………落ち着かないね」


 アルスたちはフィーネスが見繕った一級品の旅専用の服装に身を包んでいる。


 なんでも、これが一番地上人が着ている服に近いのだとか。

 一応向こうでは警戒されないために最初のうちは地上人のフリをしていろとのことだ。


 そして新衣装に加え、三人ともお互いに贈りあったプレゼントを身につけている。

 フェンリルは短剣と手袋、アイビスは耳飾りと指輪、アルスは耳飾りと本。


 そしてそんな三人の背中にはパンパンに詰まった大きなカバンが背負われている。


「まぁ、いいんじゃね?なんかカッコイイわ」

「そうね。動きやすいし、今までのよりいいんじゃないかしら?」

「うん、そうなんだけど…………なんというか目がチカチカするというか……」

「? そうか?自分の服なんて下向かなきゃ目に入んねぇんだからどうって事ねぇだろ」

「いや、僕の服じゃなくて、君たちの服のことなんだけど……」


 フェンリルの服はブラウンやらホワイトといった少し落ち着いた色がベースの服だが、アルスとアイビスの服は真反対。

 地底では見慣れない色鮮やかな赤やら水色やらをベースにしている。

 地上ではこれが一番近い服装らしいが、地底では滅多に見ない色だ。


「うーん、そうか?まぁ見慣れないっちゃ見慣れないけど、すぐ慣れるだろ」

「……そうかなぁ」


 俺たちは地底で生きてきたからこういう色はあまり見慣れてないだけで、逆に地上に行けば俺たちのような暗い感じの服の方が見慣れないなんてこともありえる。

 まぁ、時間経てば気にならなくなるだろ。


「もう来ていたのか」


 声の方を振り返ると、数名の教員を引き連れたフィーネスがいた。


「遅せぇよ!何してたんだよ!」

「お祭り騒ぎの生徒たちに捕まっていたけしからん奴を待っていたのと、諸々の打ち合わせじゃ」


 唾を吐くように言い捨て、後ろにいるラスティーニを蔑むような目で見る。


「だからすみませんって。あの子たち一度言い出すと聞かないんですよ」


 なるほど、フィーネスの言い方からしてラスティーニが女子生徒に捕まってたってことか。

 けしからん!


 ラスティーニの他にはマルッフィルとマルダもいた。


 これがフィーネスが厳選した教員たちか。

 いや、地底世界で化け物クラスに強い奴らじゃねぇか!

 そんなガチガチな布陣にする必要ある?

 ただの見送りだよな?

 地上にまで着いてくるわけじゃないだろ?


「お前たち前にも言ったが、10年じゃ。10年経っても帰ってこなかった場合は死んだとみなす。良いな?」

「おう!颯爽と任務完了して帰ってきてやるぜ!」

「えぇ!余裕よ!」

「はい!分かりました!」


 フィーネスは三人の様子を見て、ニッコリ微笑んだ後、


「では、行くぞ」


 そう言って渡り道(ラスタ)へと入っていく。

 アルスたちもそれについて行こうとしたが、ふと街の方を振り返った。


 ――静まり返って誰もいない街、何度も見た景色、名残惜しいがこれが最後の景色だ。


 じっくり目に焼き付けた後、アルスたちは何も言わず渡り道(ラスタ)へと入って行った。



---



 渡り道(ラスタ)を抜け、北大大きな部屋(タンガ)を難なく横断し、あっという間に例の場所、

 外の世界へ繋がる通路の入り口へやってきた。


 やはりと言うべきか、この教師たちがいると魔獣が一瞬にして退いていく。

 さすがは化け物集団だ。

 俺たちはただ歩くだけで済む。


「さて、入り口へ着いたところじゃが、とりあえず休息を摂るかのう」


 フィーネスがアイビスを見てそう言う。


 アイビスは慣れない重量の長距離移動で完全に息が上がっていた。


「分かりました。」


 アイビスの代わりにフェンリルが答える。


 アルスとフェンリルはそこまで息が上がっていない。

 想定内と言ったところだ。


 んじゃ、言われた通り休憩がてら荷物の確認でもするか。


 ――その時だった。


 背中が凍るような冷たい視線を感じた。


「っ!」


 アルスは瞬時に振り向いた。


 この感覚……!

 前にもここで感じたやつだ………!

 間違いない!

 思い出したぞ!

 殺気……!

 あの時と同じ殺気!


 振り向くアルスに気づいて全員が同じ方向を見る。


 そしてそこに()()はいた。


 地上への通路の入り口の前に、黒いボロボロのローブに身を包み、猫背で顔をフードで隠したあの時の人物。

 あの時アルスを誘い込んだ人物だ。


 アルスはグッと身構える。

 恐らく今回もこの殺気を向けられているのはアルスだろう。

 何せアルスにはそいつの血走った目がじっと自分を睨みつけているのが見えるのだから。


 こいつだ……!

 あの時俺を殺そうとした奴だ!


「貴様何者だ!」


 ラスティーニが叫ぶ。


 だがそいつの返事は無い。

 ただただじっとアルスを睨みつけ、何も言わない。


 アルスは恐怖のあまりその目から目が離せなかった。

 あまりにも恐ろしい程の殺気に当てられ、身動き一つ出来ないのだ。


 だが次の瞬間、そいつは呟いた。


「………――ぜだ。何故だ!!!何故生きているッ?!!!」


 その言葉に全員が身構えた。


「お主、何者かは知らんが、その言葉は敵意と受け取って良いのだな?」


 フィーネスの目にも力が入る。

 だが、そいつは気にする様子もなく続ける。


「何故堂々と我知らぬ顔で歩ける?!!何故他の者を巻き込む?!!どれだけの命を踏み躙れば気が済む?!!

 お前は生きていてならないのだァァァ!!!」


 その言葉の意味が全く理解出来なかった。


 何を言ってるんだ。

 ()()()()を言ってるんだ………。


「お前は生きてはならない。死なねばならない。全てが終わる前に、俺がお前を殺す!」

「っ!」


 そう力の籠った言葉を吐き捨て、アルスは自分に当てられる殺気が大きくなるのを感じた。


 ――そして、一瞬だった。


 アルスが瞬きをした瞬間、そいつはアルスの目の前にいた。

 アルスとの距離は10メートル以上もあったにも関わらず、一瞬にしてアルスの視界を埋めた。


 そしてそいつはどこからか出した長剣をアルスの喉笛へと向け、串刺しにする勢いで突いた。


 アルスはその一瞬、空間がゆっくり動いているように見えた。


 っ!……死ぬ………。


 そう思った瞬間、キンッ!という金属音とともにアルスは後ろへ引っ張られ、尻もちを着いた。


 顔を上げる。

 そこには剣士(ラスティーニ)の背中がアルスの前に立っていた。


「何なんだ貴様!何が目的だ!」


 ラスティーニが叫ぶ。


 だがそいつはラスティーニなんか眼中になく、尻もちを着いたアルスをまだ睨みつけていた。


「チッ! いい加減こっちを見ろ!」


 そう叫んだ瞬間、そいつはラスティーニに顔を向け、目を合わせた。

 そして同時にラスティーニが驚いた表情を浮かべた。


「な!? お、お前はッ………!!」


 アルスからは見えないが、ラスティーニとの距離間からはそいつの顔が見えた。


 そいつの顔を見て驚きを隠せないラスティーニの横を大きな巨体が並び、

 そして次の瞬間、腕を大きく振り回し、そいつを吹っ飛ばした。


 ――今度はマルダだ。


 ラスティーニに遅れてマルダが出てきた。


 そいつはマルダの大きな拳に吹っ飛ばされ、壁へぶち当たる。

 そして砂埃を上げながら地面へ落ちた。


「テメェ、うちの生徒に手ェ出したんならァ、覚悟しろォ!!!生きて帰れると思うなよォ!!?」


 マルダの怒声に反応はなく、その間にフェンリルとアイビスがアルスを引っ張り後ろへ下がる。


「アルス、大丈夫!?」

「何なのよアイツ!」


 二人も困惑しているようだ。


 どうなったんだ……!

 あの一瞬……!

 瞬きした瞬間に間合いを詰められて、殺されかけた。

 しかもあいつ、いつから剣を持ってたんだ。

 最初は持ってなかったはず………。

 いつの間に…………。


 そんなことを考えているとフィーネスがアルスたちの前へ出てきた。


「下がるんじゃ」


 フィーネスは明らかに怒ったような顔でそいつを睨んでいる。


「先生!あれは……」

「分からん。じゃが敵意を持っていたのは明らかじゃ。ならば取るべき処置は一つじゃ。二度と顔を出せないようにしてやろう!!!」


 そう言ってフィーネスは杖を構える。

 それを見て、ラスティーニとマルダがフィーネスが魔法を打てるように道を開けようとした時だった。


 そいつは煙の中から出てきてこっちへ向かってきた。


 二人は瞬時に気づき、そいつが目の前に迫った瞬間に同時に攻撃した。

 だが次の瞬間、二人の攻撃は綺麗にいなされ、一瞬にして二人は別々の方向へ弾き飛ばされた。


「ぐっ!」

「がはっ!」


 離れた場所で砂埃が上がる。


「「「!!?」」」


 なんだ!?

 何が起こった………!?

 ラスティーニとマルダが一瞬にしていなされて弾き飛ばされた。

 どうやって弾き飛ばしたんだ?

 弾き飛ばされる瞬間が見えなかった。


 そして次の瞬間、フィーネスが後ろへ飛び、無詠唱で魔法を放った。


 その魔法は一瞬にして地面から鋭利な岩を出現させ、そいつの進路を妨害した。


 だが、そいつはその鋭利な岩を一瞬にして砕き、まっすぐアルスの方へ向かって走ってくる。


 こいつ……!

 俺以外眼中に無いのかよ……!


 そいつの目は変わらず血走っており、アルスだけを見ていた。

 故に気づかなかったのだろう。


 ――真横にフィーネスがいることを。


 フィーネスはそのまま杖をそいつに構え、至近距離で風魔法を放ち、そいつを大きな部屋(タンガ)の奥の方へと吹き飛ばした。


 そしてアルスたちの方を振り返り叫ぶ。


「今じゃ!早く行け!」


 その言葉にフェンリルとアイビスはすぐに反応し、通路の入り口へ向かって走り出す。

 だがアルスの足は動かず、


「だけど!先生が!」

「そんな事はどうでも良い!

 今大事なのは、 " 未来 " じゃ!」


 その力強い言葉にアルスは背中を蹴飛ばされたような感覚だった。


「行きますよ!」


 アルスはマルッフィルに背中を押され、共に走り出した。


「お前たち!振り返るな!まっすぐ前を見るんじゃ!『 " 閉ざされた地に明日の光を照らせ!その手で!

 ()()()()せよぉぉぉッ!!! " 』」


 フィーネスの叫び声を背中に感じながら、アルスたちは通路へ入っていった。



---



 通路へ入り、アルスたち三人とマルッフィルは全力で走っていた。

 マルッフィルが魔法で瓦礫の山を吹っ飛ばし、通った後の道を魔法で何重にも壁を作り塞いで行く。


 そしてある程度進んだところで止まり、


「私はここで最後の砦として奴を食い止めます。あなたたちはこれで進みなさい。」


 マルッフィルは魔法で薄い岩を作り出した。

 まるでサーフボードのような形をしている。


「『氷の道(アイスストラーダ)!』」


 次に氷魔法で道を氷の道へと変えた。


 この岩に乗って滑っていくのか。


 アルスたちはその上に乗る。


「いいですか。絶対に止まってはなりませんよ?」


 アルスたちは頷く。


 そしてマルッフィルは微笑みながら最後の言葉を告げた。


「あなた方には今まで随分と手を焼きましたが、退屈のない日々でした。次会うときは成長した姿を見せてください。

 いつまでも待っています。では、また逢う日まで。」

「先生……!」


 マルッフィルは優しい笑顔を向けた後、


「『風砲(エアキャノン)!』」


 岩ごとアルスたちを勢いよく強風で押し出した。


 アルスたちは落ちないように岩に捕まり、遠のいていくマルッフィルを尻目に前々へと進んで行った。



---



 長い長い道を進んで行くと目の前に階段が見えてきた。


 通路同様階段も同じように氷の道になっていた。

 岩板の速度が落ちだしてきたところで、今度はフェンリルが同じように魔法で速度を上げる。

 だがマルッフィルのように一発で遠くへは進まない。


 マルッフィルの魔法は範囲も威力も段違いだな。

 あとはここを俺たちの力で登るしかない。


 フェンリルが魔法を放ち続け、アルスたちはどんどん階段を昇っていく。


「この階段随分と長いわね。あの扉までたどり着けるかしら」

「大丈夫だ。俺はお前ら二人を担いで一番上まで登ったんだ。岩板に氷の道なら余裕だろ」

「まぁそうね。そう考えるとあんたってやっぱ人間じゃないわね。正直言って気持ち悪いわ」

「いや誰も罵ってくれなんて言ってねぇよ」


 アイビスの言ってることは置いといて、今のこの速さなら初めて来た時よりかなり早く上までたどり着ける。

 これならもし、万が一あいつが教師たちを突破しても追いつかれることはないだろう。


 ――そう思った時だった。


 ドォーーーンッ!!!


「「「!!!!」」」


 階段の下、いや、もっと奥の方で爆発音が聞こえた。

 おそらくマルッフィルがいるところだ。


 まさか…………あの教師(化け物)たちを…………突破したのか………!?


 そしてアルスは瞬時に感じた。


 ――迫り来る殺気を。


「嘘でしょ!?もう来たの!?」

「飛ばすよ!!掴まって!」


 そう言いフェンリルが詠唱を開始する。


「『精霊の吐息、彼の者を吹き飛ばせ!風砲(エアキャノン)!』」


 フェンリルの完全詠唱により、魔法は威力を増し、さっきの倍以上の速さで階段を駆け上がる。


 だがそれどころではない。

 姿は見えないが、アルスにはどんどん近づいてくる殺気を感じる。


「見えたわ!扉よ!」


 階段を駆け上がるアルスたちの目の前に扉が見えた。

 だが扉は閉まっている。


 扉を開ける際に追いつかれてしまっては意味がない。


 アイビスは扉を吹っ飛ばそうと杖を構え、詠唱しようとした。


 だが、その扉は不自然にもひとりでに開いた。

 まるでアルスたちを招き入れるかのように。


 何がなんだか分からないが開いたのならラッキーだ。


 そして三人はそのまま階段を登りきり、扉から中へ勢いよく突入した。


 その扉はアルスたちが入った瞬間、勢いよく閉まり、カチャっという音が鳴った。


 鍵がかかったのか?

 っていうかあれ鍵あったのかよ!


 アルスたちは次の扉を目指す。


 岩板は氷の道が消え、地面の摩擦で削れるような音を立てながら火花を上げている。

 どんどん失速する。


 アルスには変わらず殺気が止まず、どんどん迫ってきているのを感じる。


「急げ!!!」

「分かってるわよ!!」


 三人で体重をかけ、岩板をドリフトさせながら進路を変え、あの大きな扉へと進行方向を向ける。


 同時にさっきの扉がバァーーンッ!!!という音ともに破壊された。


 まずい!

 追いつかれた……!


 岩板はどんどんスピードが落ちていく。


 次の扉までの距離は遠い。

 詠唱して氷の道を作る時間はない。


 降りるか……?

 いや、ダメだ!

 さっき身をもって知っただろ!

 すぐに追いつかれる!

 どうする!?


「アイビス!!」


 そう思った時、フェンリルが鞄から二枚の紙を取り出し、一枚をアイビスに渡した。


 アイビスはそれを見ずに受け取り、すぐにその紙を移動する地面に魔力を込めて叩きつけた。

 それと同時にフェンリルも持っていた紙に魔力を込め、岩板の後方の床に叩きつけた。


 するとその瞬間、扉まで道が氷の道になり、アルスたちの乗っていた岩板は勢いよく風で押し出された。


 スクロールか!


 魔力を込めることで発動するそれは、詠唱の時間を省略し、大幅な時短になる。


 アルスたちはそのまま勢いよく押し出され、扉まで一直線に進む。

 だが奴も速かった。

 アルスを見つけた途端、ものすごい速さで移動し、アルスたちの乗る岩板の斜め後ろにつく。


 やばい!

 近い!

 扉の前で追いつかれる!


 大きな扉も閉まっている。

 だがその扉もさっき同様、アルスたちを招くようにゆっくり大きな音を立て開いていく。


 アルスたちは勝手に開いたことすら気づかないほどの緊迫した状態。


 アイビスが杖を構え、集中する。

 フェンリルは無詠唱で初級魔法を連発して打つ。

 だが一つも当たらない。

 アルスも剣を抜き、いつ攻撃されてもいいようにと構える。


 そしてそのまま扉をくぐり抜け、椅子が見えた瞬間、アイビスが魔法を放った。


「『凍てつく地よ!我が鉾となり彼の者を塞ぎ貫け!氷槍(アイスランサー)!!!』」


 アイビスの魔法はアルスたちの目の前にある椅子を覆い、氷の槍のようなものが下から突き出てきた。


 それは椅子の頭上にあるぽっかり空いた穴への滑走路。


 岩板はその氷槍に勢いよく乗り上げ、そのまま勢いよくその穴から地上へ出た。


 三人は眩しい光に目を細める。


 目の前には前見た時よりも月は少し形は違うが綺麗な形をしていた月と、無数の星が広がっているのが見えた。


 それらが見えると同時に、アルスはゾッとする感覚を背中に感じた。


 すぐに後ろを振り向いく。


 ――そしてヤツはいた。


 勢いよく地上へ出て、宙を浮いているアルスたちの真後ろに、そいつはアルスだけを睨みつけながら同じように宙を浮いていた。


 こいつ……!

 あそこから飛び跳ねたのか!?


「アルス!」


 そいつの目は変わらず血走った目で、剣をアルスに向けた。


 やばい!

 殺られる!


 そのおぞましい殺意にアルスは気圧される。


 だが同時にアルスの中で今まで助けてきてくれた教師たちの顔が浮かんだ。


 俺のために全力で戦ってくれた……!

 守ってくれた!

 フィーネスたちのためにも!

 地上の世界を見るまでは…………死ねない!

 月を見たぐらいで………死ねない!

 こんなところで………死ねるか……!


 アルスは剣を握り締める。


「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"ぁぁぁぁぁああっ!!!」


 雄叫びを上げ、アルスは剣を振るった。


 ガキンッ!と音ともにそいつの剣を弾いた。


 そいつは驚いたような目をしつつ、アルスたちから引き離される。


 まだだ!

 あいつはまだ来る!


 ――アルスが次の攻撃を見図ろうとした、その時だった。


 アルスたちの頭上スレスレを巨大な何かが勢いよく通り過ぎ、()()()そいつに直撃した。


 そいつは勢いよく真後ろへ吹っ飛んでいった。


 巨大な何かが通過した風圧で首が持っていかれそうになる。


 アルスたちは何が起こったのかと頭を上げた。


 そしてそこにはとんでもないものがいた。


 ――そこには武器を持った兵士のような()()が二体。


 その周りには少し小さな無数の石像たち。


 二体のうちの片方は警備をするような形で固まっており、もう片方は手に持った斧のようなもので、さっき謎の男を吹っ飛ばしたのだ。


「……は?」


 意味が分からなかった。


 なんだ。

 どういうことだ。

 石像が動いた?


 そう頭によぎった時、宙を飛んでいた岩板は下についた。

 同時に三人は岩板から投げ飛ばされた。


「うぇ!?」

「きゃあ!?」

「うっ!」


 そして目の前に渦巻く砂嵐のようなものに突っ込み、もみくちゃにされるように振り回された後、

 外へと放り出れた。


「……コホッコホッ!なんだよ今の……!」


 あんなの地上の本には書かれてなかったぞ。


 アルスは体を起こし、周りにフェンリルとアイビスがいるのを確認する。

 二人も咳き込んでいるものの無事だ。


 三人揃ってる。

 無事だ。

 アイツから逃げれたんだ。


 そう思い、地面に伏せようとした時、地面に違和感を感じた。

 手には見た事のない柔らかい砂。


 顔を上げる。

 するとそこには地底世界とは全く違う景色が広がっていた。


 無数の輝く星々の下に一面に広がる砂漠。




 ここは地底世界じゃない。

 ――地上だ。


 俺たちは、地上へ出れたんだ。

一章『地底編』 -終-

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