第90話 死霊魔導師たちの全開。
「さあ! 魔界の花火をお見せいたしましょう!」
ブリュートナーは、まるで指揮者が演奏の開始を始めるように、力強く両手を振り上げた。
真っ赤な魔法陣はブリュートナーの動きに合わせ、激しく放電していた動きを鎮め、幾重にもブレ始める。
ひとつだった大きな魔法陣が、ブリュートナーを中心に広がっていく。
『これはマズイぞ契約者よ、一発ならジェイミーの補強した嬢ちゃんの結界で防げるが、あの数はこの岩山すら消し去るぞ』
『嘘だろ! なら打ち出す前にやるだけだ!』
それは赤色の花火が消えることもなく、大輪のまま浮かんでいるように見えた。
だが、見せつけるような、そのゆっくりとした動きのお陰でヒールショットはいつでも撃てるところまできてる。
どんどん魔力を流し込み、圧縮しまくっているヒールの球体が、ドクン、と脈打ち、早く放てと催促をしているように感じる。
待たせたな。と、自然に、そんな言葉が頭に浮かんだ。
「私の対価を横取りした報いを――」
「契約者よ、オマケだ! 行くぞ!」
テリエが耳もとで、聞き捨てならないことを呟きながら、ダムが崩壊でもしたように魔力を流し込んできた。
待て待て待て待てっ! いくらなんでも、こんなの体が持たないだろ!
「ヒィイイール! ショットォオオオオオッ!」
「――存分に?」
放たれたヒールショットは、ブリュートナーに向けて彗星の尾を引きながら体の真ん中に到達した。
「……な、な、な、何なのですかこれはっ!」
ブリュートナーの胸の下から、腰にかけて消え去っていた。
「なぜヒールで私に傷を!」
慌て始めるブリュートナーをしり目に、テリエの魔力は止まる様子はない。
『契約者よ! 次を用意するのだ! あの程度では悪魔は消滅せん! 撃ちまくるのだ!』
テリエの言う通り、上下にわかれたはずの体は宙に浮いたままだ。
「どうだ、ブリュートナーよ、我輩の契約者が放つヒールは気持ちよかろう」
『他の者も協力するのじゃ! 塵も残さぬよう消し去り、奴に撃たせてはならん!』
『みんな頼む! 俺に力を!』
「羽虫だと思い、油断しすぎたようですねっ!」
まだ余裕を見せ、話し始めたブリュートナーの左右に現れたのは、デバンとジム。
『ふんぬっ!』
『消える!』
連続で切付け、ブリュートナーの体に引かれた線から漆黒の靄が吹き出し、デバンとジムに吸い込まれていく。
マナドレインか!
「なっ! そ、そんな、私の魔力が抜けていく! これでは消滅が早ま――」
それと同時に、いつの間にか走り出していたセレスとアイシャが跳び上がり、ブリュートナーに攻撃をしかけた。
「えーーーーいっ!」
「さっさと! 消えなさい!」
ブリュートナーの体に赤い線を引く二人の攻撃。
「――イギィイイイイ! こ、今度は何なのですかその剣とナイフはっ!」
「アイシャのナイフと剣は、元々悪魔狩りの力を持っているからの、効くはずだ。ほれ、契約者の出番だ、撃つがよい!」
重力に負け、落下し始める四人。次に動き出したのはヘルヴィとジェイミーだ。
「ネクロウ! 我が奴の動きを封じる!」
『ヘルヴィ嬢ちゃんの補助は任せるっすよ!』
「物理結界! くうっ! 魔力結界ぃいいいいいっ!」
「何っ! 止めよヘルヴィ嬢! 負担が大きすぎるぞ!」
ヘルヴィの結界が、ブリュートナーの体と、無数に浮かぶ魔法陣を包んだ。
「このような屈辱は初めてですよ! こんな結界などすぐに砕いてさしあげます!」
『そんなことさせないっす! カチカチに補強するっすからね!』
ビキッ! と甲高い音が響くが、ヘルヴィの結界はビクともしない。
「ええい! こうなれば我輩も出し惜しみはせん! 覚悟せよ契約者よ! 魔力が切れるまで撃ちまくるのじゃ!」
みんなが作ったこのチャンスは絶対ものにする。
手首から手を離し、両手にヒールの高圧縮球体を浮かべる。
「行くぞ! ヒールショット!」
右手のヒールショットを放ち、左手もほぼ同時に撃ち放ち、すぐさま次弾を浮かべ売っていく。
ヘルヴィの結界を通り抜け次から次へブリュートナーの体を削っていく。
「こ、このままでは済ませませんよぉおおおお! ぜめて! せめてこれくらいはくらいなさい!」
無数に浮かんだ魔法陣から結界を突き破るような放電が岩山に降り注ぐ。
「魔法陣を暴走させおったか! あれは魔力の塊で攻撃ではないのじゃ! あれでは結界もそれほど役に立たん!」
『ぐあっ!』
『ぐっ!』
一番近くにいたデバンとジムが放電の直撃で吹き飛ばされた。
「きゃあ!」
「くうっ!」
セレスとアイシャも、その放電に巻き込まれてしまった。
『ヘルヴィ嬢ちゃん、気を失っちゃヤバいっすよ! ぐはっ!』
ヘルヴィに向かっていた放電を体で受けたジェイミーが膝を着いた。
「みんな!」
「契約者よ! 集中を乱すな! 奴を消せば放電も治まる!」
ヘルヴィが気絶した状態では、結界はそう長くは持たない。
俺の肩に手を置き、滝のように汗を流し、肩で息をするテリエの限界も近いと感じた。
「俺の仲間に何してくれてんだよ!」
「イヒヒヒヒヒ! 貴方もくらいなさい!」
「ヒィイール! ショッツツトオオオオッ!」




