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【転生ガチャ失敗?】辺境伯家三男の俺、職業『死霊魔導師』で特技は回復魔法(攻撃特化)です。  作者: いな@


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第85話 死霊魔導師は無茶をするようです?

「違う! 今度はドラゴンの背中じゃなくて真ん前に影転移で()()()を移動させて」


 これしかない。幸いドラゴンの卵は俺の手の中だ。いきなり攻撃はされないはず。


『ネクロウ様、無茶』


 でも、今は無茶をしないとまずいことになる。


「駄目だよネクロウ! 危ないんだから!」


 みんながこっちを見ている隙に、奴らが動き出したからだ。


「なにを考えている! 卵を取られ怒っている相手だぞ!」


 くそっ! たどり着いてしまった!


「だからそうするんだ! ジム! 早く!」


『駄目、許容できない』


 駄目だ、ほどかれる!


「馬鹿ね、ご主人様には考えがおありなのよ。いいわ、ここにいても、セレスちゃんが危ないもの。まとめていきますわよ」


 アイシャも気づいてくれた。アイシャの子供ならセレスもテイムされる可能性があるからだ。


「いいから早く!」


「お母さん待って!」

「止めろ!」

『やらせない』


 殿下が空を見ている。やはりテイムするつもりのようだ。


 テイムされておらず、俺たちにつっこんでこないワイバーンがいるとは思っていた。


 だから、猿ぐつわを外されれば、やることは一つ。


 俺は隣のセレスを引き寄せ、死霊使役の魔力糸でセレスを包む。


「もう許しませんよ! テイ――」


「やらせませんわ! 転位!」

『ゴガアァアアアアアアアアアアアアアアッ!』


 視界が一瞬で切り替わり、ドラゴンの背中が目の前にあった。


 殿下たちとは渓谷を挟んだ反対側まで転位してきたようだ。


『グラァアアアアアアアアアアアアアアアッ!』

「耳が痛いぃー!」


 二度目の咆哮がビリビリと体を震わせる。


 咆哮が止んだ瞬間、世界から音が消えたように感じた。


 腕の中にいたセレスの叫ぶ様子を見る限り、最悪の事態は避けられたようだ。


 ヘルヴィの結界をイメージしてセレスを包んだのは正解だった。


 殿下が叫んだ時、死霊使役の魔力糸に、異質な魔力が干渉してきたからだ。


 まず間違いなくアレがテイムするための魔力だろう。


 俺が使役したテリエがテイムされなかったことで、考えていた方法だが、上手くいってよかった。


「相変わらず凄い威圧ね、でも、いくら怒ってようが、私のセレスちゃんには手出しさせませんわ」


 小声で話すアイシャ。ドラゴンは渓谷の向こう側、殿下たちの方を向いたまま動かない。


 そう、回復した翼すら動いていない。翼で飛んでいるわけではないのだろう。


 空中で微動だにしないドラゴンは、まだ背後の俺たちには気づいていないようだ。


「アイシャ、その言い方だと、このドラゴンを知って……いや、昔からいたなら見知っていても当然か」


 声をおさえ、このドラゴンの攻略に役に立つかもしれないと話を続ける。


「ええ、ものすごく乱暴なドラゴンで、私も何度かちょっかいかけられたわね。まあ、腐れ縁ですわ」


「ならアイシャ、このドラゴンとの話し合いは可能なのか?」


「どうかしら、テリエの国を滅ぼしたのもこのドラゴンだもの、できるとは思えませんわね、テリエ以外は」


 ……テリエ国を滅ぼしたドラゴン。なにが原因かわからないが、帝国を滅ぼせる力を持つドラゴン。


「ん? テリエ以外は?」


「だって、テリエが飼っていたドラゴンですもの」


 そんなドラゴンなら卵を返せば引いてくれる可能性はあるだろう。


 よし、やるだけやってみるか。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 side ドラートツィーアー


 猿ぐつわが外れました!


「もう許しませんよ! テイム! すべてのワイバーンよ! 私に従いなさい!」


 一気に体から魔力が抜けていく、この感覚はいつまでたっても慣れません。


 遥か上空にいた、私のテイムを逃れていたものと、ワイバーンの子供たちすべてに向けて魔力が伸びていく。


 盗賊ギルドで雇ったものたちに、体を支えてもらわなければ、今は立ち上がる力さえありません。


「……繋がりましたよ! ってヘルヴィたちがいないではないですか!」


「殿下、それどころじゃねえ! アレ見ろよ!」


 ヘルヴィが張った結界に攻撃していたワイバーンたちは、なぜか隣のワイバーンたちと戦いをしていた。


「なにをしているんですか! ヘルヴィたちを探しなさい! そして確実に殺すのです!」


「なにいってんだよ! 殿下! 馬鹿じゃねえのか! ドラゴンだよ! ドラゴンが来てるんだよ! 見てみろよ!」


 馬鹿と言いましたか? この方はこの騒ぎを治めたあと魔物の餌にでもしてあげましょう。


 目の前の不敬な男が横にズレる。


「は? ドラ……ゴン? ……あっ! あなたたち! ドラゴンの卵は! 卵はどこにあるのですか!」


 まだかなり離れていますが、巨大なドラゴンがこちらを睨み付け、宙に浮いているのが見えた。


 ドラゴンの圧力とも呼べる殺気が、私の体を地面に押し潰すような感覚を覚える。


「そんなもんは殿下を縛っていた奴らが持っていっちまったよ! どうすんだよこれ!」


「ヘルヴィたちが卵を持っていった……」


 これはもう逃げるしかありません。


 懐に手を入れ探ると、いくつかの手応えがありました。


 幸いにも、転位の魔道具は持ったままですが、人数分には少々足りないようですね。


「逃げましょう」


「逃げるってどうやって逃げるんだよ! 走って逃げるってのか!」


「ワイバーンよ来なさい! このものたちを乗せ逃げるのです!」


「そうか! それならまだ逃げきれる可能性がある! やるじゃねえか殿下! てめえらっ! ワイバーンに乗って逃げるぞ!」


 馬鹿な奴らです。ワイバーンではドラゴンから逃げるなど不可能です。


 地上に降りてきたワイバーンに、我先にと乗り込んでいくものたち。


「殿下! なにしてんだ!」


「先にお逃げなさい! 私はまだ体が上手く動かないですが大丈夫です! あとから追いかけます!」


「殿下がそう言うなら遠慮無く行かせてもらうぜ! 行くぞ!」


 盗賊たちを乗せたワイバーンが勢い良く羽ばたき、宙に浮くのを見たあと、私は手の中の魔道具に魔力を流した。


「欲張ってドラゴンに手を出すべきではありませんでした」

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