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【転生ガチャ失敗?】辺境伯家三男の俺、職業『死霊魔導師』で特技は回復魔法(攻撃特化)です。  作者: いな@


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第84話 死霊魔導師は卵を手に入れた。

 影転移で移動した先は、渓谷を挟んだ反対側だ。


「ジム! 殿下の口を!」


『任せて』


 素早く猿ぐつわをされた殿下。手足はヘルヴィがすでに縛ってある。もうなにもできないはずだ。


「ジム、また呼ぶかもしれないが、ここは俺とヘルヴィで何とかする。ドラゴンの卵を早く見つけてくれ」


『了解、気をつけて』


 影の居住空間が使えれば、もっと早く広い範囲で探せるが、現状できないことを悩んでも仕方がない。


「ヘルヴィ、準備はいいか」


「……ああ、結界は任せてくれ」


 本当ならあと一人、セレスがいてくれたなら、と思わなくもないが、二人でワイバーンくらい退けてやる。


 そう気合いを入れたところに念話と共に、セレスが届いた。


『ご主人様、セレスちゃんをそっちに返すわね』

「たっだいまー。あれ? わたし、いらなかった?」


「……はは、ちょうどいてくれたらなって思ってたところだセレス」


 場違いなところに顔を出したかのように、身を縮こまらせるセレス。本心からの言葉を聞いて笑顔が戻る。


「よかったー、って、ワイバーンさんが向かってきてるよー!」


「くくっ、雰囲気をいい方へ壊すのが上手いなセレスは。ネクロウ、片付けるぞ! 物理結界!」


 セレスのお陰か、まだぎこちなさは残るがヘルヴィにも笑顔が戻ってきた。


「よし! やるぞ! ヒールショット!」


 俺が撃ち出したヒールショットを皮切りに、ヘルヴィが張る結界にもワイバーンの鋭い爪が襲いかかる。


「くっ! さすがにキツイ! 長くは持たないと思えよ!」


「たぁっ! やっ! このっ! 上からとか卑怯だよ!」


「任せて! 出番だ! 来い!」


 殿下が乗っていた黒いワイバーンを呼び寄せる。


『ギョエェエエエエエエエッ!』


 甲高い咆哮をあげた途端、ヘルヴィの結界に群がっていたワイバーンたちの攻撃の勢いが弱まった。


「いいぞ! 今のうちに結界から引き剥がす! セレス! ヘルヴィ!」


「本気出すからねー! テリエちゃんからもらった剣も使っちゃうんだから!」


「任せろ! 結界は三重に張った! 我も攻撃に加わるぞ!」


 今の段階で、死霊使役が効いてきたのか、ワイバーンの攻撃密度が落ち始めている。


 このまま時間が立てば形勢も立て直せる。そう思ったところに、まだ聞きたくなかった咆哮が聞こえてきた。


『ゴガアァアアアアアアアアアアアアアアッ!』


 渓谷上空にいるワイバーンが体勢を崩し、しっかりと石の地面に足をつけている俺たちにも振動が届いたほどの咆哮が。


「ドラゴンさんが来ちゃうよー!」

「マズイぞネクロウ! ドラゴンの卵はまだか!」

「もう少し待っててほしかったぞ!」


『アイシャ! ジム! 卵はまだか!』


『見つけた、交戦中』

『さっさと渡しなさい!』


 よし! 目的のものがそこにあるならこっちのものだ!


『アイシャ! ジム! 卵を含む、ソイツらを俺たちのところへ影転移でつれてきて!』


『っ! 了解』

『その手があったわね! それなら影転移じゃなくて私の転移なら――転移!』


「手で触れなくても転移ができるのよねっ! ってワイバーンだらけじゃない!」


 十人ほどの冒険者の格好の者と、アイシャにジムが結界内に転移で現れた。


 パリン、とガラスの割れたような音も響く。


「一枚目の結界が割れたぞ! 残り二枚!」


 早すぎる、が、アイシャとジムが戻ってきたなら大丈夫だ。


「お母さんもワイバーンを倒して! ネクロウが使役できるくらいの傷でだよ!」


 俺が言おうとしたことをセレスが代弁してくれる。


「わかったわセレスちゃん! 任せて!」


 アイシャはどこから取り出したのか、真っ赤な槍を手に持ち、高速で突きを放ち始めた。


 ジムも、ツーハンドソードで突きを繰り出し、確実に一匹ずつ仕留めているが、ジムにはやってもらいたいことがある。


『ジム、卵を頼めるか』


『卵、任せて』


「ここはどこだ! ワイバーンの群れの中だぞおい!」

「殿下がいるじゃねえか! 縛られてっぞ!」

「なにが簡単な仕事だクソが! 報酬は上乗せしてくれんだろうな!」


 口の悪い奴らだ、殿下の部下ではないようだが関係ない。


 渓谷の底では善戦したようだが、縛られ地面に転がる殿下に意識を持っていかれた者たちに、ジムを止められる者はいない。


「むぐぅううう!」


 それに気づいたのは意外にも殿下だけのようだがもう遅い。


 卵を背負子に担いでいた男の背後に影転移で現れ、卵をカゴから取り出したジム。


『いただき、影転移』


「あっ! 待てっ! き、消えた!?」


 影転移で俺の横まで帰ってきた。


「ヤられた! 卵を取られたぞ!」

「やべえだろ! ドラゴンに食われるぞ!」

「死にたくねえ! 逃げるぞ俺は!」

「こんなことなら城攻めに行くんだった!」

「殿下だ! 殿下ならなんとかできるだろ!」


 卵を取り返され焦りだす奴ら。聞き捨てならないことが聞こえ、それはヘルヴィの耳にも届いたようだ。


「兄上はそんなことまで……」


 城攻め? 殿下は城を攻める計画を立てていたのか? いや、殿下の能力なら可能だ。


 テイムした魔物がいれば、殿下に賛同する者はそこまで多くなくてもいい。


 攻め落とす役割は魔物がやってくれる。


 そうか、テイムされた城勤務のエルフたちに内通者までいたんだ。


 外からは魔物が攻めてきて、内からも裏切りがあれば簡単とはいかないが城を落とすことも可能だろう。


 おそらくドラゴンも、そのために……。


 そんな計画……全部へし折るしかないよな。


「あ! ドラゴンさんの卵! どうやって返せばいいのー!」


「それは考えてある! 多少無茶だがジム!」


『わかってる。団長殿もやったこと、頑張る』


 ジムから卵を受け取った時、渓谷の底からドラゴンが姿を現した。

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