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【転生ガチャ失敗?】辺境伯家三男の俺、職業『死霊魔導師』で特技は回復魔法(攻撃特化)です。  作者: いな@


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第81話 死霊魔導師はドラゴンに乗る。

 重力に押し潰され、全身の骨がバラバラになったと錯覚するような衝撃が全身を襲った。


 ドラゴンと正面衝突すれば、そうなるのも当たり前だが、デバンも無茶をする。


『ふんぬぅっ!』


 俺のことを片手で抱き抱えた状態で、グレートソードを突っ込んでくるドラゴンの鱗の隙間に差し込んだのだ。


「ぐぎぎぎっ――」


 つ、潰れる――ヤバい、か、回復をしなきゃ死ぬ。


 力がまったく入らない。本当に全身の骨が折れたかもしれない。


 俺の小回復、頑張ってくれよ! 小回復!


「き、キサマはヘルヴィと共にいたネクロウ! なぜここに!」


 小回復を心の中で唱えたとたん、痛みが引いていくのがわかった。


 よし、思ったより効果はありそうだが、殿下の問いに答えられるほどではない。


 ……あれ? 小回復ってこんなに効果があるのか? 


 ミシミシ、と砕けた骨が元に戻っていく音が直接伝わってくる。


 そうか、ヒールを使い続けて来たから効果が上がったことに感謝しよう。


 今の状況では、治ってくれればやりようもある。


「私のドラゴンから降りたまえ! なっ!」


 その時、ドラゴンの左の翼をジェイミーのウインドランスが貫いた。


 一気に速度がゆるまり、飛行体勢が崩れ、斜めになって落ちていく。


「グッ! 何をしているのです! しっかり飛びなさい! 私を落としたりすればすぐにでもキサマの卵を潰しますよ!」


 なんだとっ! コイツ、ドラゴンの卵を人質にして従わせてるのか!


『ゴガアァアアアアアアアアアアアアアアッ!』


 渓谷全体を震わせる咆哮。貫かれた翼では速度も維持できず、体勢を戻せないようだ。


『もう一発行くっすよ! ウインドランスっす!』


 ジェイミーの二発目も正確に右の翼に命中したが、ドラゴンの飛行速度が落ちていたからか、貫くまでには至らなかった。


「チィッ! ヘルヴィの魔法ではないようだがキサマの仲間のものか! ブレスを放て!」


 前ではなく、背に乗る俺たちに向けて殺気を放つドラゴンの口が開かれ、一気に魔力が膨張し始めた。


 空気の焼ける匂いと、皮膚が泡立つ感覚が襲いかかってくる。


『あ、ヤバいっす、あとは団長殿、任せたっすよ、影転移っす』


『主よ! このままでは墜落してしまいますぞ!』


「かはっ――」


 デバンの胸に押し潰され、肺の空気が足りず、返事ができない。


 チラと進行方向に目をやると、瞬く間に地面が近づいてくる。


『デバン! すぐに殿下を連れて――』

『渓谷の上にですな! 任されよ!』


「ここで捕まるわけにはいきません! ワイバーンよ! 私を拾いなさい!」


『逃がしませんぞ! なっ!』


 デバンの伸ばした手を、ドラゴンの背を転がるようにして掻い潜り、宙へと身を投げ出した殿下。


「は、早く来なさい! お、落ち、落ちるっ!」


『グゲェエエエッ!』


 一匹の黒い影のようなワイバーンが飛び込んできたと思った瞬間、殿下を嘴で咥えてドラゴンから離れていく。


『主よ、申し訳ない! 一度仕切り直しましょう!』


 ガ、ガガガ、とドラゴンが強固なその身体で渓谷の底を抉って行く。


 バシバシ、と全身に砕けた石や木の破片が当たる。


『デバン、一度渓谷の上へ!』

『任されよ!』


 一瞬で薄暗い景色から、日の光が岩の山頂を照らす眩しさに視界が狭まる。


 狭い視界を駆使して、集まりこちらを見ている五人の姿を見つけた。


『デバン、まずはみんなのところへ行くぞ』


『ゴガアァアアアアアアアアアアアアアアッ!』


 その時、渓谷の底からワイバーンたちが群れをなして飛び出してくる。


 その後押しをするように、ドラゴン咆哮がこだました。


『やはりあの程度では死には至らぬか。主よ、ドラゴンはあっという間に傷を癒しますぞ』


 テイムされたワイバーンも脅威だ。数が多すぎだ、すべての相手なんてしてられない。


 ここがダンジョンであればまだやりようもあったが、完全に遮蔽物や障害物のない場所では不利過ぎる。


『あの黒いワイバーンに殿下が乗っていますぞ!』


 黒いワイバーン。成体だろう褐色ワイバーンよりひとまわり大きなワイバーンだ。


『おそらくこの群れのリーダーでしょう!』


 殿下を乗せた黒いワイバーンは、悠々と俺たちの頭上で旋回を始めた。


 どうすればいい。完全に頭を取られたこの陣形では思うように戦えない。


 そこへ回復したドラゴンが加われば、敗色も濃厚だ。


 テイムほどではないが、復帰したとしても、まだ殿下の指示に従うことになるだろう。


 それをなんとかできれば、まだ勝利の目もあるんだが……そうか! ドラゴンの従わせていた要因、卵をこちらで保護すれば!


 そうなると、二手に別れないと……よし!


『アイシャ! セレスを連れて渓谷の奥へ! 殿下の手の者からドラゴンの卵を奪い返してくれ!』


『ドラゴンの卵? よくわからないけどわかったよネクロウ! お母さん、卵ちゃんを助けに行くよ!』


『あらあら、あのクソガキ、そんなことまでやっていたのね。ご主人様、ドラゴンの卵は私とセレスちゃんがしっかり奪い返してきますわ』


『頼んだ!』


 アイシャがセレスを連れ、転位で消えるのを目の端で見送る。


「ヘルヴィ! どこまで私の計画を邪魔すれば気が済むんですか!」


「くっ、兄上、我は――」


 哀しみからか、続きの言葉がでないヘルヴィに、遥か高みから見下ろし、言葉を投げつける殿下。


 見てられないな。ヘルヴィは、自分で捕まえたいと言ってたけど、殿下をヘルヴィの前にまで引きずり下ろすくらいはやらせて貰おう。


「デバン」


『殿下の上に、ですな』


 名を呼んだだけで伝わった。


 なら、あとは実行に移すだけだ。

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