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【転生ガチャ失敗?】辺境伯家三男の俺、職業『死霊魔導師』で特技は回復魔法(攻撃特化)です。  作者: いな@


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第74話 死霊魔導師はテイムを解除したい。

「テイムされた、この子たちを元に戻す? それなら簡単よ、クソガキを殺せばいいだけだもの」


 アイシャの言葉が突き刺さる。


 テイムを解く方法、いや、テイムが“解ける”のはテイマーの死と知られている。


 その通りだから否定もできないが、もう少し言い方を考えて欲しい。


 ここにはヘルヴィもいるのだから……。


「兄上を殺す……」


 ポツリ、と消え入りそうな声で呟き、ヘルヴィはうなだれてしまった。


「ごめんなさいね、でも、それ以外……まあ、できなくはないけれど、私のように繋がりを無理矢理引きちぎって生きていられる保証はないわね」


 他の方法があると聞き、顔を上げたヘルヴィだが、その方法は、アイシャがテイムから抜け出した方法だった。


「致命的なダメージを負うと、テイマーとの繋がりがほんの少し薄まるの。その時、脳に張った根を引き抜くのよ。脳はグチャッってなるけれどね」


『それ、アンデッドしかできない方法じゃないっすか、生きてる人間には無理っすよ、頭がグチャッ、ってなるっすよね?』


 駄目だ、まさにアンデッド、再生能力のあるヴァンパイアだからこそ実行できる方法だ。


「死霊使役は魂同士の繋がりでしょ? それに対して、テイムは脳に魔力の糸を繋げるから仕方がないじゃない」


 そんなものを無理矢理引きちぎれば、よくて廃人、十中八九、そのまま帰らぬ人となるだろう。


「テイムって、ご主人様の死霊使役とよく似ているの。だけど、私たちは自由じゃない?」


『そっすね』


「だけど、テイムされるということは、主に逆らえない奴隷になるってことだから」


 誰も言葉を発せず、闇の居住空間に重い沈黙に包まれている。


「従って生きるか、逆らって死ぬかの二択ね」


「えっと、お母さん? 他に方法は無いの? このお姉さんたち可哀想だよ」


 アイシャの膝に乗せられ、追いかけ回され過ぎて観念したのか、おとなしくぬいぐるみのように抱っこされ続けているセレスが、口を開いた。


「きゃー! セレスちゃんがお母さんって言ってくれたわ! 他の方法ね、あの子ならなんとかできるかもしれないけど、どこかに封印されたとかでもう千年ほど見てないのよね」


「誰だ! 兄上を殺さず聖女たちをテイムから解放できる者は! 教えてくれ!」


 勢いよく椅子から立ち上がり、セレスを抱くアイシャに詰め寄るヘルヴィ。


「アイシャ、俺も知りたい。それは誰なんだ」


 その人がいればヘルヴィの兄、ドラートツィーアー殿下を捕まえればいい。殺す必要はなくなる。


 罪の無い人を拐い、人身売買と、“スタンピード”を起こし、たくさんの人を死に追いやり、危険に会わせたことだ。


 現王位継承権一位としても、よくて生涯軟禁、通常なら極刑の可能性は高い。


 だが、その刑を下すのは陛下だ。


 ヘルヴィの仲間である俺たちが、ヘルヴィの慕っている兄を殺さなくてもよくなる。


 責任転嫁はよくないのはわかっているが、ヘルヴィの心の負担を考えれば、避けたい現実だ。


「ヘルヴィちゃん、ちょ、ちょっと苦しいから」


 アイシャの胸ぐらを掴み、必死に教えろと迫るヘルヴィの手を取り、そっと引き剥がす。


「ヘルヴィ、そのままだとアイシャも話せないだろ。アイシャ、もったいぶらずに誰なのか教えてくれるか?」


「ふぅー、テリエよ、テリエ・ド・シャイターン、千年ほど前までシャイターン帝国皇帝だったエンシェントエルフよ」


 は? テリエか治せる?


「お母さん、テリエなら治せるの?」


「あら? セレスちゃん、テリエを知ってるの?」


「知ってるよ、ネクロウが使役してる子で、私の剣を見て、今は誰かを探しに行ってるの、ちょっと待ってて、剣持ってくる」


 セレスがアイシャの抱っこから抜け出し、お気に入りの剣を取りに行く。


「なんと、では、あの殺しても死なないと思っていたテリエも死んだと言うことか」


『死んでないっすよ、魂を封印されてたんすけど、その時魂とだけだったっすよねー、だから主が死霊使役きたっすよ』


「ほう、そのようなことが。それなら――」


「その剣だよー」


 そう言いながら走りよってくるセレスの剣を見て、アイシャの顔つきが変わった。


「なんと! 私の無くした剣をセレスが持っていたというの!」


「え? この剣お母さんのだったの?」


「そうよ、この対のナイフと同じでしょ?」


 アイシャの使っていた黒い細身のナイフ。


 デバンのグレートソードとジェイミーのワンハンドソードの剣撃を、折れもせず受け止めていた物だ。


 同じだ。セレスの持つ漆黒で、血のような真っ赤な葉脈の模様の鞘と。


「お揃いだ」


「ええ、ヴァンパイアの血を受け継ぐ者だけが使える物よ。他の種族が持とうとしても、重くて振り回すこともできないわ」


 セレスの剣は、元々はアイシャの剣だったということは、テリエが探しに言ったのってアイシャのことなのか?


「そうか、テリエが戻ってくれば……」


 口にはしていないが、ヘルヴィの言いたいことがわかってしまった。


 テリエがテイム呪縛から聖女たちを解き放てれば、ほんの少しだが、罪は減るだろう。


 わずかな希望だろうが、処刑の確率を下げたいのだと。


 立ち尽くすヘルヴィのためにも、返事の無いテリエにもう一度呼び掛けることにした。


『テリエ。急ぎの用事だ、返事をくれ』

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