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【転生ガチャ失敗?】辺境伯家三男の俺、職業『死霊魔導師』で特技は回復魔法(攻撃特化)です。  作者: いな@


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第62話 死霊魔導師のダンジョン初日。

「とうっ!」

『ギギャッ』


 通路の先で元気のいい掛け声と共に、振り払われた漆黒のダガー。


『客』とは名ばかりのゴブリンが、上下半分に切り裂かれ、一声だけの断末魔をあげた。


「やったよー! 見たー! スパスパだよー!」


 ヘルヴィも一緒に駆け足でセレスに駆け寄るが、言われた通りスパっと真っ二つだ。


「それにねっ、ほら見て、汚れないの!」


 セレスが元気よく掲げたダガーを見ると、ひとすじの血すら付いていない。


「凄いなそのダガー……」

「うむ。血糊すら付かないとは、魔法剣の類いだろうな」


 何か慌ててどこかに行ったテリエを見て、ただの呪いの剣ではないと思っていたけど……。


「さあ、ネクロウ、ヘルヴィ、この調子でどんどん行っちゃおー!」


「……そうだな、しばらく体ならしも含めてこのまま進もう」


「ネクロウ、地図は我が持っているからな、案内は任せておけ」


「うん、じゃあ守るのは任せておいて、セレスは前と後ろどっちが――」

「前! 前がいい!」


 両手を上げてぴょんぴょん飛び跳ねて自己主張するセレス。


 目がランランと輝きを放ち、『後ろね』と言えば間違いなく落ち込むと予想ができた。


「……じゃ、じゃあ前をお願いね」


「うん! 任せといて!」


 そういって進み始めるが、目の前の突き当たりは左右に道が別れている。


「……」


 そっと曲がり角から左右に別れた通路を覗き込み、きょろきょろと見てから困ったような顔をこちらに向けた。


「……」


 うん、あれだな。


 そうしてもう一度同じようにするが、やっぱりこちらの様子を伺うように振り向いてくる。


「……」


 それを何度か繰り返しているのを見て、そろそろかわいそうになってきた。


「……」


 あと何回か繰り返せば、泣きそうな顔になってきている。


「……ヘルヴィ、可哀想だし、そろそろ教えてあげないの?」


「そう、だな、もう少し見ていたいが泣かれても困るしな。セレス、そこは右だ」


「っ! そ、そうだよね! わたしもそうだと思ってたんだ! さあ! ネクロウもヘルヴィもわたしに続けー!」


 道がわかったからか、不安がっていた顔色が、一気によくなったセレス。


「くくっ、可愛い奴め」


「あまりいじめないでね」


「ネクロウも困った顔のセレスを見て楽しんでおっただろ?」


「うっ、で、でも困った顔のセレスも可愛いし仕方ないじゃないか」


「それには同意だ。ほら、置いていかれる前に追いつくぞ」


 付いてきていないことに気付きもしないで、ずんずん進むセレス。


 俺とヘルヴィは少し駆け足でセレスのあとを追い始めた。




 順調に五階層へ到着した時だ。


 広い部屋に足を踏み入れたところにいたのは、魔物と戦うシュテルネ王国の騎士たちだった。


 この階層にいるはずのない魔物、オーガ。


 十階層以降に出没する魔物だ。


 それが十数匹。


 だが慌てることはない。


「さすが兄上の力だな、あのような強い魔物を操っているのだから」


 人の身長ほどもあるこん棒を振り回し、騎士の相手をしているオーガ以外は壁際で大人しくしているから驚きだ。


 それに何匹かは倒したあとなのか、生きているオーガとは対面の壁際にも亡骸が積まれている。


 テイマーか、本当に死霊魔導師の上位互換だな。


 死霊使役して取り憑かせれば同じこともできなくはないが、ひと手間多くかかる。


 テイマーの力、テイムした魔物で安全に騎士の強化か……。


 それに、味方の騎士を危険に晒さず、国を守ることにも使えるってことだよな……これ以上ない優れた力だぞ。


「おっきいねーオーガ、わたしも戦わせてもらえるのかな?」


 セレスの言う通り確かにデカイ。


 王都で倒したミノタウロスよりはひとまわり小さいが、引き締まった筋肉のためか、素早い動きでよい鍛練になるだろう。


「セレス、これは騎士たちにとって必要なものだ、我たちが邪魔をしては駄目だろう」


「ヘルヴィの言う通り、ここは我慢して先に進もう」


 十階層に進むだけで、嫌でも出会うことになるんだからな。


 後ろ髪が引かれる思いでその場をあとにした。






 そして、やって来ました十階層。


 楽しみにしていたオーガだが、その階層にも殿下が率いている騎士たちが修練をしていた。


 五階層と同じオーガだが、持つ武器がこん棒から剣や槍、斧に変わり、盾まで持っている。


 それと、皮膚の色が黒に近いのはオーガの上位種、ハイオーガと呼ばれる戦士タイプの魔物だ。


 攻撃力、防御力も段違いな上に、武器や防具も使いこなすこのダンジョンでも強敵に入る魔物。


「むー、オーガもいっぱいいるから倒せるようになったけどさー、あの黒オーガはまた駄目なんだよね?」


 黒オーガか、ハイオーガよりあってる気がする。


「セレス、心配するな、あの黒いオーガもこの先に出てくる……十五階層から、だがな」


「それよりセレス、そろそろ俺たちも戦闘に参加してもいいだろ?」


 この十階層まで、全てセレスが先頭で戦闘をおこなってきた。


 ヘルヴィはまだ地図を片手に道案内をしているからいいとして、俺はただ歩いてきただけ。


 本当にそろそろ参加しないと、今日の探索は終わりを迎える時間だ。


「え? あ……ごめんなさい、スパスパ切れるの楽しくて、交代するの忘れてたよ……」


「だがなネクロウ、もう時間のようだ」


 騎士たちがオーガとの鍛練を止め、夜営の準備を始めていた。


「……時間切れか」


 セレスの後ろをついて歩いていただけだから、まったく疲れはない。


 ……時間の計算を誤ったかな。


「仕方ないな、今日は終わりにしよう」


 騎士たちのいる広い部屋からそっと離れ、見られていないことを確認してから影の居住空間に沈み込む。


「ごめんね二人とも、お詫びに夕食は頑張るからね」


 しゅんとしたセレスがダガーをしまい、包丁に持ち替えた時、ジムから念話が届いた。


『聖女たち、襲われる』


 夕食はおあずけのようだ。

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