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【転生ガチャ失敗?】辺境伯家三男の俺、職業『死霊魔導師』で特技は回復魔法(攻撃特化)です。  作者: いな@


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第61話 死霊魔導師は報告に頭を悩ませる。

 side トリューガー


「どうだ? 悪い話ではないだろう」


 確かに魅力的な話だ。


 三割増の料金か……悪くない。


「キンダフィッカ伯爵、ですがよろしいので? あの御方にお目通ししなくては、お叱りになられませんか?」


 だが、伯爵の様子を見てわかった。


 この取引には交渉の余地がある。


「わかっておる。だが、今回は少々急ぎで領地に戻らねばならん用事ができてしまったのだ」


 せわしなく空いたワイングラスを手に取り口に運び、そこで空だったことに気づいたようだ。


 いつもの伯爵と違い、まったく余裕が感じられない。


 これは確実に領地でなにか起こっているようだな。


 ワインボトルに手を伸ばし、注ぎ入れては喉の奥に流し込んでいる。


 ……少し、強気で値段交渉してみるか。


「二人で三人分の料金ならいかがでしょう。こちらも危ない橋を渡ることになりますので」


 屋敷に来てすぐにわかった。


 使用人たちがすでに出発の準備を始めているのだ。


 それほど急いでるなら、これくらいの上乗せは通る可能性がある。


 カチャ、とボトルの首がグラスの縁に当たる。


 思いきった値段が出たことに驚いたのもつかの間、見開かれたた目が細まり、キッと睨み付けてきた。


「中々の交渉上手だなトリューガー。ならば後から追加した上玉だという二人を寄越せ」


 ……あの二人か。


 あの御方に差し出しても、二人で五割増しは当然のこと望めはしないだろう。


 連れてきた中の商品価値が低い二人をと思っていたが……高望みしすぎたか。


「いいでしょう。それではお望みの二人は領地に届ければよろしいので?」


 あの御方に差し出す品には手を出せないが、片方くらいは味見してもいいだろう。


 あの二人は今までにない上玉だ。


 それにパーティーを組むほどの仲、目の前で仲間が傷つけられるのを見せるのもいいだろう。


 臨時収入と、キンダフィッカ領までの楽しみができたな。


「ああ。……それとトリューガーよ、その二人に手を出そうなどとするなよ?」


 俺の顔を酒に酔った濁った目に映す伯爵。


 酔い潰れそうな勢いで飲んでいたから油断した。


 一瞬気が緩んだのを見逃さなかったか……。


 仕方がない、楽しみは減ったが五割増しの料金で今回は我慢しておくしかなさそうだ。


「もちろんです伯爵。最高の状態でお届けいたします」


 ……くそ、Sランクにさえ上がっていれば、こんな屈辱も我慢せずに済むというのに……。


「ああ。トリューガー、今回の口止めになるが、冒険者ギルドにはSランク昇格の推薦状を出しておこう」


「本当ですか! あ、ありがとうございますキンダフィッカ伯爵様!」


 これはいい! Sランク昇格には貴族からの推薦状が複数必要だ。


 それが伯爵からの推薦状なら文句の付けようもない。


 これを機に、あの御方に連なる貴族たちにも闇騎士団、トリューガーの名が広まれば……。


「よし。ならトリューガー、話は終わりだ」


「はい、次はキンダフィッカ領でお会いいたしましょう」





 伯爵様と別れ、出入りが見られないよう裏口から街へ出た。


 路地裏を抜けようとしたところで声がかけられた。


「お疲れ様です」


 一瞬緊張感が高まったが、声の主、モーブとモップと気付き、警戒を緩めた。


「お前たちか、どうした、何かあったのか?」


 モーブの手には酒樽……聞くまでもなかったか。


「酒を買いに来たついでに、女でも引っかけようと思いまして」


 当たりだが、そっちもあったか。


「トリューガーさん、明日あたり馬車が到着するんですよね?」


「ああ、その予定だが……女か、よし、モーブ、モップ、俺様もついていこう」


「助かります! トリューガーさんがいれば女なんて入れ食いですよ!」


「そうと決まれば飲み屋に行きましょう! こっちです、いい女がいたんですよ!」


 割増料金に推薦状だぞ、これは幸運の女神が俺様に微笑んだと言うことだ。


「くくっ、今日は気分がいい、全部俺様の奢りだ!」


 side キンダフィッカ


 トリューガーを帰し、すぐさま馬車に乗り込んだのがよかったか……。


 ダンジョンの街を出てから嫌な予感が遠ざかる感じがする。


「……まさか、ダンジョンの街で何か起こると言うのか?」


 今あの街には……知らせを走らせるか……。


 何よりも我が身が一番だ。


 が、今は……いや、あの御方は何も心配はないだろうな、何が起きようとどうとでもなさるはずだ。


 トリューガーだが……最悪取引が無くなったとしても、Sランクに手の届くAランク冒険者。


 自分で何とかするだろう。


 っ!


「な、なんだ!?」


 背筋が氷の柱に変わったかのような寒気が走った。


「だ、誰だ! どこにいる!」


 明かり取りの窓を覗くが誰もいない。


 薄暗い馬車の中は自分だけだ。


 気配すらないというのに、すぐ側に危機が迫っていると感じられた。


「急げ! 馬など潰れても構わん! 急ぐのだ!」


 御者に声を張り上げ速度を上げさせる。


「こ、今度はなんだ!? か、痒い! なんなのだこれは! は、腹が! お、おい、やっぱり止めろ! 腹が!」


 side ネクロウ


『団長殿も人使いが荒いっすねー。主ぃ、聞こえるっすか?』


『どうしたんだジェイミー、デバンに呼び出されたって言ってなかったか?』


『その通りっすよ? トリューガーと会ってたキンダフィッカが街を出たっすからね』


『あー、伯爵か……それで?』


 伯爵とトリューガーも、この街であの御方に会うつもりじゃなかったのか?


 まさか気付かれたか?


 ……いや、奴らのまわりに死霊魔導師はいないことは確認できている。


 だから気付かれることはないだろうが……気になるな。


『なんだかあの御方には会わずに自分の領地に帰るみたいっすから、悪戯だけしてたっす』


『いやいやいやいや、なんの報告だよ!』


 いや、ホント、悪者だし、悪戯はいいんだけどさ……。


『悪戯の報告っすね、今は痒くて仕方がなくなるのと、腹下しを盛ったところっす』


『あー、うん、ありがとう、その、後はほどほどにして戻ってきてね』


『了解っす、行き先はわかってるっすから、後は毛が生えるヤツも試しておくっすねー。ハゲてるっすから喜ぶはずっす』


『はは……そ、そうだね、毛が生えるんだもんな』


 でも……頭だけに生えるなら喜ぶだろうけど、それ、全身に生えるヤツだから……。


 ジェイミーの楽しそうな念話が続く。


 ……ダンジョンに潜る前には帰ってきてくれるよね?

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