第47話 死霊魔導師たちは可愛いらしい。
「これはこれは、可愛らしい護衛さんたちだ」
そう口にしたのは商隊のリーダー。
「シュバルツさん、おはようございます、今日からよろしくお願いします」
「可愛いか、中々見る目があるな、よろしく頼む」
「シュバルツさんありがとうー、よろしくねー」
王都方面の門前広場で、今回の護衛依頼を出した商隊と合流を果たし挨拶を交わす。
可愛らしいと言われるのも頷ける。
先日買った、猫耳ローブを羽織るセレスとヘルヴィがいるからだ。
ひいき目無しに可愛いからな。
……俺を除いて、だよな?
「出発まで、まだ少々ありますので、お待ちください」
「はい、わかりました。……あの、他の護衛パーティーはまだですか? 出発前に打ち合わせをしたかったのですが」
積み荷の点検をしに行こうとする、シュバルツさんを呼び止め聞いてみる。
あたりを見渡しても冒険者らしき人影はない。
「そう、ですね、まだお見えになっていないようです」
目の前のシュバルツさんとは冒険者ギルドで顔合わせは済ませたが、今回の合同で護衛依頼を請けた相手、Cランクと、Dランクのパーティーとはまだ会えていない。
それに、警護対象の人にもだ。
デバンたちに探ってもらっても、護衛対象の正体が掴めないとか、本当にいるのかと疑いたくなる。
というか、いくら秘密だとしてもさ……護衛対象が誰なのかわからないのにどうやって守れっていうんだよ……。
……思わず口に出しそうになったが、なんとか喉元を過ぎる前に飲み込めた。
「……わかりました。開門までそんなに時間はないので、困りましたね」
「そうで――あ、ほら、あの方たちです。来たようですが……もう一組がまだのようですね」
こちらに向かってやってくる、男性五人の冒険者が見えた。
「Cランクで、今回の護衛をまとめてくれるパーティーの方たちです」
中々強そうだ。足の運び方や重心の取り方も隙がない。
注目すべきはその視線。
護衛開始もしていないというのに、何気ない仕草でしっかりとあたりを警戒していた。
「依頼を請けたCランクパーティー、リーダーのカルバンだ」
目の前まで来てお互い右手を差し出し握手をした二人。
「カルバンさん、お待ちしておりました。それと、こちらの可愛い三人も、護衛していただくパーティーです」
可愛い三人……俺も入っていたようだ……。
「……カルバンさん。はじめまして、ネクロウといいます。それと――」
「ヘルヴィだ」
「セレスだよ」
「カルバンだ、仲間の紹介は後々するとして、ネクロウくん、君たちは――」
挨拶もそこそこに、打ち合わせが始まった。
まだもう一組が到着していないのにもかかわらず、Cランクパーティーのリーダーさんの提案で、俺たちは中央の馬車に乗ることになった。
Cランクパーティーが先頭で、開門直前になってやって来たDランクパーティーが最後尾の馬車へ乗り込み、開門と同時にシュヴェールトの領都を出た。
「ふぁああー、いい天気でー、のんびりだねー」
「セレス、護衛中だぞ? ちと気を抜きすぎだ」
「えー、だってさー、やることなくて暇なのー」
木箱が満載の馬車の上に乗る俺たち。
大きなあくびをしたセレスは、ぐしぐしと目をこすり、またうとうとと船をこぎ始めた。
確かに護衛中ではあるのだが、デバンたちが馬車の車列に近づく魔物たちを、見つけ次第片っ端から倒しているからやることがない。
王都へ続く、森を切り開いた街道なので、当然魔物も住んでいる。
デバンたちがいないなら多くとも、一、二回は魔物に遭遇していただろう。
「セレスの言うこともわかる。まったくその通りなのだがな、あふっ」
ヘルヴィもあくびをかみ殺し、ぐっと座り続けて固まった体を伸ばしている。
『主ぃー、トリューガーたちが野営予定地にいたっすよー、どうするっすか?』
『主よ、それにトリューガーなるものは外道ですな、主と同じ歳とみられる子供を拘束して馬車に詰め込み連れておりますぞ』
そこへデバンとジェイミーが念話を送ってきた。
『檻に子供を? どういうことなの?』
『堅牢な馬車を見て、ある御方に献上する品と言っておったので、覗いて見ると言った通り、手足を縛られておりました』
『全員女の子っすねー、たぶん、貴族の慰み物にするつもりっすよー、もう助け出したっすけど』
『よくやった、デバン、ジェイミー。今子供たちは影の中?』
『シュテルネ陛下に預けてきましたぞ』
『あははは、陛下、めちゃくちゃおどろいてたっすよー』
いや、なにやってるの! 陛下はデバンたちのことを知ってるけど、いきなりは駄目でしょ!
『事情を話したところ、陛下はそのものたちを「捕まえ連れてくるように」と、おっしゃってましたな』
『主たちと一緒に護衛してる奴らもっすねー』
ジムに監視してもらっている、車列の最後尾に乗っている、トリューガーの仲間のこともか。
……陛下がそういうなら一人残らず連れていかないとな。
『デバン、ジェイミー、野営予定地にいるトリューガーたち全員を、俺たちが到着する前に眠らせることってできる?』
『眠らせるっすか? できなくはないっすけど、面白くないっすよ?』
……いや、逃がさなければ面白くなくていいからね。
『主よ、あの御方という人物が気になりませんかな?』
気になる。が、それは捕まえて陛下に渡せばわかることだと思う。
『トリューガーは数人を連れて先に王都へ向かうようですので、トリューガーたちは後からで良いのかもしれませんな』
『そうっすねー、あの御方ってところに案内してもらって捕まえた方が、色々はかどるっすよ』
『なるほど、それはいい考えだと思う。じゃあデバンは先行するトリューガーを見張ってくれるかな』
『任せよ。ジェイミーと野営地に残るものたちを捕らえた後でも見失うようなことはありませんぞ』
『任せるっす、主が到着する前にここはキレイにしておくっすよー』
『じゃあ頼んだよ』
あの御方、か。
シュヴェールトの領都最大の冒険者クランに、そう呼ばれる人物か……何者なんだろうな。




