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元悪役令嬢と婚約破棄してなぜかヒロインやらされてます。  作者: 上川ななな
勢いだけでこうなったけどあながち悪くもない
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01 いきなりの実験

図書館司書のラファエルとのエンディングになります。


※注意※

他のキャラとのエンディングがご希望の方は、適度にスルーして下さい。


数話続きます。

 何とかもう少し、考える時間が欲しかった。

 そんな時間がないのは分かっているけど、やっぱり簡単に決められそうにない。


 相談だけなら、別に構わないだろう。

 協力してくれると言っていたし。


 私はラファエルの部屋の前に立った。

 ドアをノックすると、


「……どうぞ」


 意外にも返事があった。てっきりもう寝ているのかと。

 部屋に入ると、ベッドにラファエルが何かを読みながら、仰向けに寝そべっていた。私の方も見もしないで言う。


「何? 俺に決めるの?」


「そういう訳じゃなくて、ちょっと相談が」


 私がそう言うと、ラファエルはごろんと体の向きを変えて相変わらずこちらを見ないまま、


「適当に座れば?」


 この部屋にはソファもなかったので、ベッドの端に腰掛けた。


「で、やっぱり寿命を延ばす相談? それとも相手が決められないから、どうしたらいいかの相談?」


「クロエ様からブレスレットを貰ったので、猶予は多少伸びたんだけど、やっぱりこの短期間に決めるのは難しくて」


 ラファエルは、夫候補の中で一番私に興味が薄そうだから、客観的にアドバイスしてくれそうな気がした。


「寿命のことだが、一個だけ、クロエが言わなかった方法がある」


 自分の母親を呼び捨てにするのに驚いたけど、その方法の方が気になった。


「方法って!?」


「俺の血を使うんだ」


 ラファエルの血を!?


「俺は吸血鬼とも言い難いが、人とも違う。どちらでもあって、そのどちらでもない。吸血鬼の血ほど効果はないかもしれないが、やってみる価値はあると思う」


 それってつまり、血を吸ってもらって血を貰うってこと?

 困惑している私に、ラファエルがすかさず断言した。


「俺は血は吸わない。吸ったこともないし、吸う気もない」


「私だって血を吸うだなんて」


「俺から採血して、お前に注射すればいいだろ」


 なんだ、それでいいのか。ちょっと拍子抜けした。

 ラファエルは立ち上がって、部屋を出て行こうとする。


「どこ行くの?」


「医務室」


 こいつは口数が少ないし、マイペース過ぎてよく分からない行動を取る。私は慌てて立ち上がって、彼の後について医務室へ向かう。


 医務室には誰もいなかった。医務室というよりは、元医務室だろう。半分は物置になっていた。

 ラファエルは勝手に戸棚を漁り、何本か注射器を見つけてきた。


「小さいのしかないなぁ」


 彼は椅子に腰掛けると、自分の左腕に駆血帯を巻きつけて、いきなり自分の腕に注射器を刺した。しかもかなり太いやつで。


「な、何してんの!?」


「……何って、見りゃ分かるだろ」


 いや、消毒とかもしてないし!!

 それにしても器用だ。自分で自分の血を抜いている。


「これくらいでいっか」


 ラファエルは注射器の針をちゃちゃっと軽く消毒して、私を呼んだ。


「こっちへ来い」


「ええっ!?」


 まさかそのまま、それを私に刺す気?

 怪訝そうにしていると、面倒くさそうにラファエルが言った。


「取り替えるのも面倒だし、ちゃんと消毒しただろ?」


「そういう問題じゃないでしょ?」


 まあ、この世界の衛生観念なんてこんなもんだ。いざって場合は回復魔法に頼るものだし、そもそも医者を名乗る人は、聖属性魔法使いがザラだ。

 聖属性魔法使いは希少なんで、実際は医者より薬剤の知識に長ける薬師が一般的だ。


 聖属性魔法が使える薬の知識を持つ人間が最高なんだろうけど。そんなのは城にいる医者とかくらいだ。


 だからここの医務室も、薬師が調合したであろう薬剤くらいしか置いてない。


「肩を出せよ」


 肩なの!?

 このワンピースじゃ、袖が詰まっているので捲って肩は出せない。うーん、脱ぐしかないか。

 私は仕方なくワンピースを脱ぎ、スリップを着た状態に。

 そんな私の格好に恥ずかしがる訳でもなく、臆することもなくラファエルは何の躊躇もせず、私の左肩にぶすっと注射した。


「痛い!!」


「……これくらい我慢しろよ」


 ラファエルは全然優しくない。ちっとも容赦してくれなかった。

 結構な量だからか、やっぱりちょっと痛かった。


「とりあえずこれで様子を見るか。上手くいくといいんだがな」


「効果のほどはどうやって確かめるの?」


 ラファエルは私に唇が触れそうなくらい顔を近付けて、少し笑いながら言った。


「……前もやっただろ?」


「!!」


 び、びっくりした!! てっきりキスされるかと思った。

 うーん、それにしても心臓に悪い。


「少し時間を置いてから試すか。体調に変化がないか経過も見たいし。誰か他の奴に見られると面倒だから、俺の部屋かな?」


 それで結局、彼の部屋に戻ることになった。

 部屋に戻っても、彼はいつものように本を読み始めて、全く私と会話をしようともしない。

 相変わらず、自分から人と交流する気は一切なさそうだ。

 私は特にすることもなく、ただ隣のベッドに横になってぼーっとしていた。今日も色々あって疲れたのか、私はいつのまにか眠ってしまっていた。


「おい、起きろ! 起きないと本気で襲うぞ?」


 ただならぬ内容の声で目を覚ますと、目の前にラファエルの顔があった。


「うわぁ!!」


「……ようやく起きたか」


 明らかに機嫌の悪そうな顔をして、ラファエルは私の手首の脈を取る。懐から取り出した懐中時計を見ながら、じっと私の脈を数えているようだ。

 その様子は真剣で、いつもとちょっと違う顔だ。

 確かにラファエルは綺麗な顔をしている。これは確かに女の子が放っておかないだろう。私と一緒に行動するようになってから、前髪で顔を隠さなくなった。


「脈拍はやや早いが正常」


 私はギクッとした。顔を見ていたことに気付かれたかな?

 それから簡単な問診と診察をして、とりあえず体調に問題はなさそうだった。


「何だかお医者さんみたいだね」


「小さい頃、よく預けられた家が医者の家だったからな。まあ見よう見真似だな」


 ラファエルはあんまり自分のことを話してはくれないので、詳しい事情は知らないが、実の親に育てられた訳じゃないことは確かだ。

 彼のこの人と関わりを極力持とうとしないスタンスも、育ちの問題なのだろうか。


「医者になろうとは思わなかった?」


「……人助けに興味がない。そもそも俺は回復魔法が使えない」


 まあ、一応半吸血鬼だしね。


「じゃあ、早速試すか」


 そう言いながら、キスしようとしてくる。

 私は思わず、反射的に彼を押しのけた。


「ちょ、ちょっと待った!!」


 怪訝そうな顔で、ラファエルが言った。


「今さらなんだ?」


「ねえ、何か他に調べる方法とかないの? やっぱり恋人でもないのに、そうそうキスなんかするもんじゃないし」


「恋人じゃないのが嫌なのか?」


「そういう訳じゃないけど」


 ラファエルはここで、なんとも言えない苦い顔をした。


「……面倒くさい奴だなぁ」


 髪をわしわししながら、ごろんとベッドにひっくり返った。

 ここで私の方を見ながら、とんでもないことを言い出した。


「もう、子作りした方が早いんじゃね? 俺相手するし」


「ええっ!?」


 ストレート過ぎるだろ!! そもそも、結婚とか面倒だって真っ先に言いそうなのに。まあ、私と結婚することで許される禁書読み放題がこいつにはそれだけ魅力的なんだろうけど。


「ねえ、私が結婚してって言ったら、してくれる?」


「……ああ? 前からそう言ってるだろ?」


 ここで思い切って聞いてみる。


「私のこと、好きなの?」


 これにはラファエルはじっと黙って私を見つめたままだ。

 様々な色が浮かぶ瞳。その色からは何も窺えない。


「……好きだと言って欲しいのか? 他の奴みたいに」


 ちょっと怒ってる? やっぱり聞いてはいけなかったか。


「──ごめん。結婚するなら、やっぱりお互い好きになった人とするべきだと思うから」


 ラファエルは体を起こすと、目を閉じて少し考え込んでいる様子だった。そして、ようやく口を開いた。


「他の女とキスしたり寝たいとは思わないな。子作りまでしてもいいと思える女はお前だけだな」


「へ?」


 それって、結局は私を好きってこと?


「つまりはそういうことなんだろう。お前が俺が好きなら、両思いだと思うが? どうするんだ?」


 自分から話を振っといてなんだけど、まさかこう切り返されるとは!! ラファエルも私を? 本当に?


 どうしよう? 何だか予想外なことで頭が追いつかない。こいつに相談したのは失敗だったのだろうか?


「それより、クロエにまだ何か用事があるとか?」


「そうそう、なんか発情を抑える薬を貰って」


 私は話題が変わったのをいいことに何とか気持ちを切り替えて、ラファエルに薬の入った瓶を見せた。

 ラファエルは瓶を取り中をまじまじと見て、首を傾げた。


「これ、桃の味がしなかったか?」


「知ってるの?」


 彼は瓶を開けて、一つ口に入れた。


「……これはただの桃の飴だ」


「……嘘!? それって何だっけ? なんとか効果。あーっ、言葉が出てこない!」


 喉元まで出かかってるのに!!


「プラシーボ効果」


「そう、それ!!」


 ま、まさかここでクロエ様に一杯食わされるとは。


「そんな媚薬の反対の効果の薬なんて、そうそう作れるか。これは麓の村の土産屋で売ってるただの飴だ」


「ああ、すっかり騙された」


 はっ! まさかこのブレスレットも効果がないとかはあり得ないよね? 髪がすごい伸びただけとか、困るんだけど。


「ねえ、これは大丈夫?」


 私は手首に付けたブレスレットをラファエルに見せた。

 ラファエルは注意深くブレスレットを観察して言う。


「血を魔力の媒介に使ったか。……考えたな。これはおそらく大丈夫だろう。効果が切れたら、石の色が変わる。まあ、その間は信用しても良さそうだな」


 と、いうことは、寿命の件は石の色が変わらない限りは大丈夫ってことかな?


「それより、俺の血の効果を試したいんだが? いい加減試してもいいか?」

いつもありがとうございます。


更新まちまちですみません。推敲が済んだ所から載せていくことにしました。


順序がある程度前後しますが、他のエンディングもぼちぼち更新していくのでよろしくお願いします。

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