118話 幕開ける文化祭
時は少し進んで11月上旬。内の高校ではこの時期に二日間に渡る文化祭があって、それが終わると学年対抗のスポーツ大会もある。競技は既に決まっていて、グラウンドではサッカーと障害物競争、あと男子に綱引き、女子に玉入れが加わる。それと、体育館ではバスケットボール、二重跳びリレーをやる。
だが、まぁ、そんなのはどうでも良くて早速、明日の土曜日から文化祭が始まる。俺たちは競技の結果、教室でカフェをすることになっている。
そして、ただいま準備中。俺は
「浩平、そこのをテーブルクロスを取ってくれ。」
と言う。答えて彼はクロスを丸めて手に取り、こちらに投げ渡す。俺は手を上げて、それを掴む。
「ナイスパス!」
「ナイスキャッチ!」
俺と浩平はグッドポーズを交わす。それから4つを1つに纏めた大机にそれを敷く。
窓側ではカーテンが普段の緑から青に変えられ、クロスの上にはヒヤシンスとかラベンダーとかとにかく花を入れた花瓶が置かれている。あと、壁にはリアルな草のサンプルがかけられ、黒板には『3-Eブックカフェ』の文字。
奥に本棚があって、そこに図書室の本の中から厳選されたおよそ30冊の本が並べられている。その中にはラノベも純文学も、はたまた哲学書まで盛りだくさん。ついでに、クラスの皆から何冊か漫画も持ってきてもらっている。もちろん、盗難対策もバッチリ。2日目には一般公開もあるが、招待制である。
そして、どんどんとカフェが完成していく。俺はテーブルにコーヒーやオレンジジュースとかの飲み物類多めとミニケーキやドーナツなど食べ物少なめのメニューを置いていく。有馬は明日その買い出しにいけとパシりに合っていた。誰かと言えば、鈴本さんに。もちろん、彼はこれに従うしかなし。
そんなこんなで準備はついに完了。青を基調とした空間にほのかな花の香り、あと壁の偽物だけどもリアルな草、机には赤いクロスもある。それらは何となくオシャレな雰囲気を醸し出していた。
「終わったわね...正一くん。」
「あぁ。沙耶香、良かったら明日...。」
「もちろんよ。」
「え、まだ何も...。」
「私たち長い付き合いなんだから、正一くんの考えてることぐらい分かっているわよ...。私と文化祭を回りたくて回りたくて仕方ないって訳でしょ?」
「全然間違ってないんだけど、それを認めるのは抵抗が...!」
「安心しなさい。認めざるを得ないわよ。」
「は、はい...。」
俺は結局、沙耶香からのからかいに負けて折れてしまう。全く情けない話だが、彼女の言葉の攻撃力が心に深く刺さって抗おうとも思えないのだ。
「By the way, have you fogot our promise ?」
と、そこで圭吾が後ろから話しかけてきた。俺は
「お前らと回る約束した覚えはないぞ。」
「By the way, why don't you speak English? I asked in English, so you should reply English too.」
とさらに続けば、
「By the way,you just want to say "by the way", right?」
と俺。調査書用に英検2級を受けて受かったのでそれなりにリスニング力もスピーキング力も単語力も身に付いているのである。俺はサラッと流して、彼に
「tha...that's right.」
その通り、と言わせるのだった。
それから一日目は結局彼らも一緒に回ることとなってしまった。ただし、二日目は2人だけで。流石に彼らとて鬼畜とかではないので、そこは妥協された。この時、俺は相互譲歩の精神で折り合いを付けられる日本のやり方を初めて実感した。
一先ず、明日から文化祭の幕開け、いや準備の段階から文化祭の一環と考えて、今日がその幕開けとも言って良いだろう。




