109話 高尾の夕日
寺院を離れた後もしばらく紅葉のトンネルが続く。俺たちはそこを潜りながら、
「あっちじゃこんな紅葉見れないよなぁ...。」
「そうだな、平坦な公園で見るのとは大違いだ。」
「幼女も一杯だねぇ。」
「マジでお前、将来犯罪者になってないか本気で心配だわ。」
「全くだ...。」
「紅葉の錦とはよくいったものですわねぇ。」
「確かこの度はぬさもとりあへず手向け山、って歌だったわよね。作者は管家だったかし。」
とこんな会話。
(じ、次元が違ぇっ...!)
俺は驚く他になかった。
そして、そんなことをしている内に山頂が見えてくる。2時間ちょっと登っただろうか。結構、足が疲れてきた。
「見てくださいな、あちらが高尾山山頂ですわよ。」
立花さんが少し遠くの柱みたいなのを指差す。そこにはデカデカと高尾山頂とあった。
「おぉ、あそこが地上600mの地点か。」
「正確には599mだがな!」
「1mぐらい誤差の範囲だろ。」
「あら、1mって結構な差だと思うわよ。だって、私の胸辺りまであるのよ?」
「そうですわねぇ。温暖化も毎年1℃上昇してると聞きますが、人間の平熱が36℃だとして1℃上がれば37℃を疑いますから。」
(だから、この2人会話の次元違い過ぎ。)
俺はまた驚愕の顔で鈴本さんと立花さんを眺めた。
さて、脇にも団子屋がある。それを見、立花さんがそこへ歩み寄り、
「1つくださいですの。」
とまたゴマ団子を買ってきた。
(立花さんって以外と食べたがりなんだなぁ。)
と何にしてるのかって感じだが感心してしまっていた。
「美味しいですわぁ。」
と彼女は本当に美味しそうな顔で団子をモチモチ噛みつつ、戻ってくる。
「よく食べるわねぇ、小百合ちゃん。だから、胸が大きくなるのかしらぁ?」
そんな彼女にちょっとキレ気味で鈴本さんは聞くが
「おそらくですが遺伝ですわよ。私の母様はもっと大きかったでしょう?」
「い、遺伝...!」
と鈴本さんも手遅れを感じるのである。
俺たちはそんな彼女たちを背に展望台へと進んでいく。まずは東の町が見える方。
「やっぱ山頂から見る景色ってのは良いよなぁ。」
と浩平は良い、山肌の奥に見える自然の緑と人工の白を同時に眺める。ベタなコントラストではあるが確かにこれは良いものである。
次は西側の展望台。そこはあちらの都会とは違って赤い山々とその間にそびえる青の富士山。天気は快晴で日本最高峰はかなりはっきり見えていた。その景色に見とれていると、立花さんが
「あっちにはもみじ台と呼ばれます紅葉の名所があるようでわよ。」
と言って西の方を指差す。
俺たちはちょっと富士山を見た後彼女の言うもみじ台へと歩いていった。そこには大体5分ちょっとで辿り着く。思ってたより混んでいですんなり行くことが出来た。
「お、おぉ...。富士山がさっきよりよく見えるぞ。」
浩平は赤い山々の奥に聳えるさらにくっきりな富士山に見入る。だがもう気付けばもう夕暮れ時だ。せっかくここに来たが帰らなければ遅くなってしまう。気温もかなり下がってきて、立花さんが貰ってきた防寒具を身につけきた道を戻っていく。
その途中、先ほどの展望台で珍しい現象に遭遇する。なんと、富士山の頂上に夕日が乗っているように見えたのだ。厳密には少し左へずれていたが誤差の範囲だろう。
「す、すげぇっ!まさか、人生の中で一度でもダイヤモンド富士なるものを見れるとは思っていなかったな!」
と圭吾は言い、スマホで写真を撮る。
「そうね。」
と笑顔で鈴本さんも言ってスマホを取り出したので、俺たちも倣って写真を撮り、ついでにカメラを使って7人で集合写真、俺と鈴本さんのツーショットもしておいた。
帰りに使うのは4号路。少し暗いがまだ前は十分見える。やがて、吊り橋が見えてきた。渡っていると後ろにいる浩平がわざと揺らしてくる。これには流石に腹が立って
「おい、浩平。」
「やめろや、浩平。」
「あり得ないわ、浩平。」
と俺、圭吾、有馬は同時に彼を睨み付ける。
「ハッハッハッ!怖かったか?」
だが、彼は反省してない様子。もっと揺らしてきた。
(こいつ....!)
「浩平くん?」
呆れ顔でいると、鈴本さんは圧を感じる笑顔で小首を傾げる。
「は、はい...!」
と流石にこれには浩平もやる気を失った。
そうして、俺たちはそこを下って行き、合流した2号路を通ってリフトの乗り場まで来た。こっちも思っていたよりは並んでいなかった。
15分程立つともう俺たちの番になった。
「さて、帰るか...。」
俺は言ってリフトに入る。そこへ6人も付いてきて窓側へと寄っいった。すると、リフトの扉が閉まり動き始める。
「しっかし、リフトか見下ろす紅葉ってのも...。」
と浩平がまた見とれている。俺も見てみて、
「そうだな。暗がりに少し赤が見えてちょっと良い感じだ。」
と賛同する。
「あれ、幼女を上から見下ろせば合法だと思ったのに...。」
「この下に道なんてないんたからだろ。」
と会話が聞こえたが、学のロリコンに付き合わせれてる有間が本気で哀れに思えた。
下についた頃にはもう16時になろうとしていた。登山口までくるともうリムジンが待ち構えている。その黒車は周りからはかなり注目されていた。その中、執事さんがドアを開けて
「どうぞ。」
と言う。俺たちは立花さんに続いて中へと入っていった。
これにて、俺たちの高尾登山は幕を閉じる。車は来た道を戻り、しかもそれぞれの家へと送ってくれた。俺は
「ありがとうございました。」
と言って執事さんに言う。残った立花さんと鈴本さんには
「じゃぁ、また明後日学校で。」
と言って別れの挨拶。2人とも
「学校で。」
「えぇ、明後日学校でお会いしましょう。」
と言って、手を振り返してくれた。
俺は家の扉を開けて、
「お帰り。」
と元気よく言った。




