106話 歪な友情
あの一件から2ヵ月ちょっとが立ち、木の葉は赤や黄に色づき、長く続いた雨も終わって、いよいよ秋という感じであった。
その間に俺たちは鈴本さんと何度か勉強会を開き、お陰でこの間の中間テストでは化学で学年15位という初めての偉業を成し遂げる(それぐらいで何だと思うかもだが、少なくとも俺にとってはアインシュタインの相対性理論提唱ぐらいの偉業だった)。
そして、反省の色が強く見られたということで有馬の停学期間も終わり、それからはちょっとかっこいいだけのただの陰キャと化していた。
そんな彼を見ていく内に、ずっと鈴本さんから遠ざけているだんだん馬鹿らしくなってきていた。それは他のクラスメートも同じである。あの様子ではもう何かをしようとは思わないはずだ。
こんなのが1ヵ月ほど続いた頃である。
「有馬くん。ちょっと良いかしら。」
何と鈴本さんが自ら話しかけにいったのである。
「...沙耶香か...どうし、たの?」
と有馬はぎこちなく返す。
「一体いつまで落ち込んでるつもりなの?」
と鈴本さんが聞くと、有馬は
「俺は沙耶香たちに本当に酷いことをした...。沙耶香とヨリを戻したい一心で沙耶香が本気で好きだった井上を...。」
と答える。と、鈴本さんは
「それについては絶対に許さない。けど、あなたに元気がないと気が狂うのよ。」
と言う。と、有馬は
「だけど...。」
と口をモゴモゴさせる。そこで、また鈴本さんの中の何かが切れて鈴本様と化した。
「私はあの時、あなたの無神経さに呆れて別れた。でも、有馬くんはすぐそこを直してからまたよりを戻そうって言ってきたでしょ?今回もそう。あの時は一思いにやってくれたけど、今は本気で反省してるでしょ?何かを過ってもそれを必死に直そうとして必死に認めてもらおうとしてってのだけが有馬くんの取り柄なの。あなたからそれがなくなっちゃったら、あなたって本当にただのゲスノゴミクズマよ。あなたをゲスノ宮有馬にとどめせてるのはそのお陰でしょ。」
その言葉に有馬は
「...。」
若干引いているようだを
聞いているに、散々な言われようだが、絶対彼を許せない彼女なりに慰めようもしているのだろう。確かに、別れてから自分の無神経さに気付いて直し、それからよりを戻そうとしたというならそれは彼の長所である。別れてから何度もよりを戻そうよりを戻そうと毎日毎日電話して、挙げ句の果てにはストーカーまで犯すクソ彼氏とは違う。彼は束縛派の人間のようだが、そういった意味では大同小異かもしれない。
「だから、これからもそれを私に認めさせて、突っかかってきないさいよ。その都度その都度、あなたの相手をしてやるわ。」
と、鈴本様は最後にこの言葉でお締めになられる。すると、有馬は
「じゃぁ、欠点を直して直して直し続けたら、最後は俺と付き合ってくれるのか...?」
とさっきより少し明るい声で彼女に言う。
それを聞いて、思わず鈴本さんは笑みをこぼし、
「それは絶対ないわね。私はあなたじゃなくて井上くんが好きだから」
と言う。ただし、その笑みというのは若干嘲りが入っている。それが見事有馬に受けて、
「沙耶香もよっぽど酷いな。」
と笑みで返す。それに関しては流石に同意である。
「その辺にしてあげて、有馬のライフはもうゼロよ!」
と俺は冗談を言い、浩平に圭吾に学にを連れて有馬に近付いていく。こっちはとっくに認めているというのに、あっちは
「き、君たち...あんなことをしたのに...。」
と言ってくる。ので、俺は
「あぁ、あの件に関しては俺もまだ許してない。ただこれだけ認めてやる。お前が本気で反省して、本気で悔やんで、本気で直したがってるってのは。」
と返してやった
「そうだね...。俺、もうああいうことは絶対にしないよ。今度こそ警察に訴えられそうだし。」
対して彼は言うが、それは違う。
「安心しろ、その前にこのロリコンが訴えられる。」
と親指で後ろの学を指差す。
「そうか。」
と彼は言い、学は
「酷くない、正一くん!」
と言う。この下りに俺も浩平も圭吾も学も、もちろん鈴本さんと有馬も吹き出してしまった。
こうして、俺たちと有馬の間には大変歪な友情が生まれるのだった。




