105話 解決
次の日、俺は鈴本さん、浩平、圭吾、学とともに早めに登校した。これは受験勉強とかそういう理由ではなくあのことを皆に伝えるためだ。
「どの面下げて沙耶香と登校してんのよ。前にも言ったけど、いくら恋人でも強要は...!」
と一番前の女子が不機嫌そうな顔をする。だが、鈴本さんは
「ちょ、ちょっと待って...!井上くんは悪くないの!」
とすぐに止めに入ってくれる。
それから、鈴本さんは何があったか全て話してくれた。
やはり、彼女は有馬に登校中を狙われたらしい。彼はいきなり角から現れて近付き、無理矢理実家の方へ。彼の両親は共働きのため見つかることなく蔵の中へ。彼はそこに彼女の両親には家に泊めると電話して疑わせず、家の固定電話には全て彼が出て親に気付かせずしたのだろうと言う。蔵はもう使ってなくてそっちも大丈夫だという話だ。
そして、こんな監禁紛いのことをした上彼女にキスを強要し、ボディータッチまでしようとして返り討ちにして、挙げ句のはてには俺に罪を擦り付けた、と。一応、食事と水は与えられたが彼女は3日程そこで暮らすことになってしまったのである。
そこで、俺たちが助けに来たということだ。
この話を聞いてくる内にクラスの皆の目がどんどん暗くなっていく。終わった頃には、
「ちょっとカッコいいからって騙されたのが悪かったわ!」
「おかしいと思ったんだよ、正一は無理矢理迫るような奴じゃねぇ。」
「有馬くんってホント最低っ!ただのメンヘラじゃん!玉の緒よでも詠んでそう。」
と口々に言われていた。まぁ、それは願ったり叶ったりなのだが。
「皆、井上くんに謝りましょ。」
そこで、クラス委員長の香川飛鳥さんが言う。全員来てたわけではないのだが、一先ずその場にいた皆で
「ごめんなさい。」
「ごめん。」
「すまん。」
と謝ってくれた。
「いやいや、もう良いよ。皆本当に反省してくれてるみたいだし。」
もちろん、俺は快く許した。
ちなみに、後から来た生徒は話を聞いて個別で謝りにきてくれた。俺はもちろん快く許してあげる。
そして、有馬が入ってきて、
「おはよう皆!沙耶香も戻ってきてくれてよかったね、」
と笑顔で挨拶。空気が読めていないというか、無神経というか場違い過ぎる。そんな彼に俺へ最初にかまをかけてきた女子がかまをかけにいく。
「ちょっとあんた、どういうこと?」
「どういうことってのはどう言うことかな?」
「しらばっくれないで!!本当はあんたが沙耶香にキスとか強要して、井上に濡れ衣着せたんでしょ?」
「何言ってるんだ!確かに僕は沙耶香から...。」
というやり取りをしながら、グサリと刺さる視線で見つめる俺たち。周りの人たちが
「早く認めろよ、クソ野郎。」
「しらばっくれてんじゃねぇぞ、擦り付け野郎。」
「あのイケメン、一発...いや、十発...?とにかく顔面殴っていいか?」
と小声で言い始める。
「待って、これはどういう...???」
その雰囲気に気付いたか周りをキョロキョロしながらやがて、俺に行き着く。俺はその瞬間、
(ざまぁ!)
と思って、それを込めあの日の有馬のようにニッとほくそ笑んでやる。それを見て、
「っ...!?」
と彼は目を大きく見開き、口をポッカリ開けたままその場に固まる。
「わかった認めるよ。けど、そこの男が悪いんだ!元カレの僕にも沙耶香と付き合う権利はあるはずなのに、話し合いすらさせてくれなかったんだ!」
そこでやっと罪はおおむね認めるが、俺に責任転嫁までしてきやがる。
「ちょっとまだ...。」
相手をしていた女子がさらに怒った顔をするが、鈴本さんが歩み寄って止める。さっきの彼の言葉で彼女の中の何かがプツンと切れたのだ。
「有馬くん、あなたみたいな最低な男に私と付き合う権利なんて最初からどこにもないわ。あの時、あなたと付き合ったのが私の一生の恥よ。大体何なのかしら?その分際で私に迫って、セクハラまでして、それを井上くんに擦り付けて。それで、まだ口答えするのかしら?悪いのは全部有馬くんよ。ホント人間のすることじゃないわ。人間じゃないから私からあなたにその他の人権も認めることもしないわよ。」
鈴本さん、いや今は鈴本様。その方は有馬のことを散々言う。その威力は、その意見に大賛成な生徒の皆も若干引き気味なレベルであった。あまりのことに有馬は黙り込み落ち込み机に戻り、そこで崩れ落ちる。
このことは先生にも知れ渡り、有馬と鈴本さん両者の両親に連絡が行く。
放課後、彼は職員室に呼び出されて数十の先生にこっぴどく咜られ、家に帰れば自分の両親にもこっぴどく咜られ、鈴本さんの両親からは二度と娘に近付かないように学校へ要請があったという。その要請は即刻受諾されて席は真反対に離されるといった学校の方での対策が講じられた。まぁ、その前に俺たちの方でも彼と彼女を近付かせなかったのだが。
さらに、その後の審議の結果、彼は無期停学処分となり徹底的に隔離されることになる。俺はそれを知った帰り道、
(ざまぁ。)
と再びニヤリとしてしまった。
こうして、今回の件は一件落着し、今更ながら現れた恋敵も消える。これで彼女との日々を心置きなく再開出来そうだ。




