104話 悪事を暴け(後編)
次の日も鈴本さんは来なかった。有馬は相変わらずいたのだが。
随分と虫が良い話ではあるが、同じ部活のよしみで仲良くしてる飯田、石田、菅に
「ちょっと良いか?」
と話しかけてみる。だが、案の定
「きやすく話しかけんな、強姦魔。」
「彼女の嫌がることをするなんて最低な男。ちょっと黙れ。」
「こっち見んな、知り合いだと思われる。」
と会話を拒否される。やはり、俺には無理である。
そこで、浩平、学が3人の元へ。圭吾はわざわざ女子に話しかけにいった。
「なぁ、あのイケメン有馬の家の場所って聞いてねえか?」
「いや、聞いてないな。お前は?」
「俺も。」
「俺もー。」
浩平が聞くと、やはり知らない。
「ところで、有馬くんの家ってどんなと頃なんだろうねぇ?」
学が言うと、5人が口々に言い始める。
「鏡で壁が埋め尽くされてる!」
「いや、1000人の侍女がいるのかも知れんぞ。」
「そんな卑弥呼じゃあるまいし。」
「ちっ、あのイケメン。もし、それが本当なら侍女と一緒に生き埋めにしてやる!」
と、浩平、飯田、石田、菅。
(あんたらの有馬のイメージどうなってんだ!)
とツッコミを入れる。
次に学自身が
「もしかしたらロリキャラのポスターが...?」
と言えば4人揃って
「それはない。」
「お前と一緒にしたげるな。」
「そりゃお前だけだ。この、犯罪者!」
「待て待て石田、こいつを犯罪者って言ったら犯罪者が可哀想だ。」
と辛辣な返し。
(おい、辛辣だな...!)
とつい思ってしまった。
一方、女子の方へ行った橋本圭吾。その女子の名はメガネっ子の天野楓さん。
「楓ちゃん、有馬の家どこにあるか知ってるか?お邪魔したいんだけどー。」
と圭吾が言うと、天野さんは
「当然のように『ちゃん』付けしてこないで。まぁ、知ってるけど。」
と当然の反応。だが、知ってはいるようである。
圭吾が改めて聞くと、すんなり教えてくれたようである。が、
「ちなみに何で知ってるんだ?家に行ったことあったりとか?」
「いいえ、どっちかて言うと...ストーカーよ。」
知ってる訳を聞けば、これ。流石の圭吾もドン引きもにであった。
そして、その日の放課後。天野さんに教えてもらったという駅前のとある和風の一軒家までくる。しかも、結構な豪邸である。
門の横のインターホンを押してみるが、何の反応もない。有馬も帰ってなければ、両親も帰ってないらしい。流石にここに1人で住んでいることはあるまい。もちろん、門も空いていない。
「さて、どうやって侵入するか...。」
「どうすれば...。」
「ふむふむ...。」
「肩車だよー。」
「それだ!」
俺は顎に手を当て考える。その学の声で侵入法が全会一致で決定した。
「あんたたち、平気で不法侵入するのね。まぁ、仕方ないけど。」
という栞の賛成はかなり渋々って感じだったが。
まず、浩平が俺を肩に乗せて立ち上がる。そこから俺は塀の上を掴んで足を移してその上へ、続いて圭吾も同じようにしての上へ。浩平、学、栞は見張り役に残しておいた。
「で、どうやって家の中に?」
そこで圭吾が聞いてくる。俺は
「いや、ここにいるとしたら家の外だ。あいつとて、両親にバレるのだけは避けたいだろう。」
と返す。
すると、こんなやり取り。
「親子で共犯という可能性は?」
「あのサイコパス野郎のことだ、十分ありえる。だが...!」
「だが?」
「俺はあの蔵にいると思う!」
「なるほど、蔵屋敷か!」
「大阪の米置き場じゃねぇっ!」
と。そう言いつつ、俺は蔵の前まで来た。
「おーい、鈴本さーん!いるかー?」
と、俺は蔵の扉をドンドン叩いて彼女の名前を呼ぶ。
「も、もしかして井上くんっ!?」
その声を聞きつけ、何と鈴本さんの声が返ってきた。
(あいつ、やはりここに連れてきてやがったか!鈴本さんの早朝登校を狙ったりとかしたんだろう...。)
俺は怒りでプルプル震えながら、彼女に言う。
「鈴本さーん!さっさとこんなとこから出てあいつの悪事暴いてやろうぜ!」
と。だが、予想外の答えが返ってきた。
「ごめんなさい。鍵をかけられちゃって...。多分、家の中だわ。」
そう耳に届いた瞬間、俺は全身が硬直した。
(お、終わった...!)
と。
そこへ圭吾の一言。
「まだ諦めるな、正一。」
「だけどなぁっ!」
と口答えしてみるも、彼は
「いやいや、俺に任せとけって。」
とニヤリと笑ってスチャッと何個かの金具を見せてくる。
「おい、待て。なんだ、それは。」
「ピッキングセットだが...?」
「さも当然のように言うな!どうして、そんなの持ってんだよ!」
「こんなこともあろうかと?」
「なんだよ、最後のクエスチョンマークは!てか、俺たち一般男子高校生がピッキング必要になることってあるのか!?」
「いやまあ、ないな。」
「じゃぁ、さっきの『こんなこともあろうかと?』って何だよ。」
そんな風に言い合ってると、鈴本さんが
「ねぇ、助けるなら早く助けてくれないかしら!」
と怒鳴ってくる。俺と圭吾は
「ごめん。」
「すまん。」
と情けなく謝罪。
「第一、お前ピッキングできるのか?鍵師でもあるまいし。」
扉に近寄っていく圭吾に俺は聞く。
「あぁ、任せとけ。」
それで、彼は動じず突き刺しては抜き、別のを突き刺しては抜き、また別のを突き刺しては抜く。
「なるほど、大体そういう形状か...。なら、こうか?こうか!?」
そう呟きつつ、次々金具を入れて回したり、押したりする。
そして、ものの5分程でカチャリと鍵が解除される。
「お前って普通にヤバい特技隠し持ってたりするよな...。ひょっとして、学より犯罪者の素質があるんじゃ?」
「いや、それはないだろう。」
「アッハハハー!そりゃそうだよなぁっ!流石に学よりはないよなっー!」
何て言い合ってると、すぐに鈴本さんは蔵から現れる。
「助けに来てくれて本当にありがとう、井上くん!」
しかも、いきなり抱きついてくる。目も少しウルウル。俺は少し顔を赤らめ、
「変なこと...されなかった?」
と聞く。
「されたわよ、強引にキスしようとしてきて...!何とか回避はてきたんだけどぉ!」
(ちっ、あの野郎...人を何だと思ってやがる。)
その言葉を聞いて、俺は怒りがさらに増大する。
ちなみに、さっきの俺と圭吾のやり取りで学がくしゃみをした。
「どうしたの、風邪?」
「いいや、多分誰かが僕の噂を。」
「そんな漫画みたいなこと...いや、警察がってのはありえるわね。」
「待って、何でそうなるの!」
しかも、栞が学をイジることを覚えてしまったようである。
さて、それから俺たち3人は来た道を戻って塀の前へ。だが..
.。
「帰りのことを忘れてたっ!」
そう、完全に帰りのことを忘れていたのだ。さっきの肩車作戦では全員出るのは不可能だ。どうしようかと悩んでいると、鈴本さんが言う。
「そんなの、飛び乗っちゃえば良い話じゃない。」
と。しかも有言実行、しゃがみで勢いをつけての大ジャンプで塀に飛び乗ってしまう。
「こないの?」
と小首を傾げる鈴本さん。 俺たちは思わず、
「できるか!!!」
「サッカーは跳躍力鍛えるスポーツじゃねぇっ!」
とツッコミを入れてしまった。
そして、結局門の突起を使ってロッククライミングの要領で塀を越えることになる。落ちまくって打撲痕十数とかなり怪我をし、十数分とかなり時間がかかったが、警察に見つかったりとか有馬とか両親とかが帰ってくることはなかったので何とかなる。
こうして、鈴本さんの救出及び、有馬の悪事の証拠を獲得した俺たちは機嫌よくそれぞれの家へ帰っていく。あとは、明日皆にこのことを伝えるのみ。
その帰り道。
(あいつがどういう顔をするか楽しみだぜ!だって、自分がしたこと俺に押し付けてたわけだからな!)
俺は1人ニヤリとする。少し悪趣味な気はするが、あいつよりはマシだろう。
このことを伝えると鈴本さんは『ありえない!』と激おこプンプン丸、いやあれはカム着火インフェルノぐらいは確実に行っていた。まあ、相も変わらず怒ってる彼女もかなり可愛かったが。




