103話 悪事を暴け(中編)
鈴本さん家のインターホンを押すと、ピンポーン!と音が響く。だが、誰も出ない。お母さんとお父さんについては共働きで全員揃うのは日曜日だけと聞いていたが、学校に来ていない鈴本さんがいないのは確実におかしい。
「お邪魔しま~す...。」
俺はそっーと庭に回る。
「おい、正一。その動き、完全に不審者だぞー。もしかして、服役したことでもあんのかー?」
浩平がそんな俺を見てそう言ってくる。そこへ、
「だなー。」
「だねー。」
と圭吾と学の賛同。それを見て、
(学ぅっ...お前にだけは言われたくねぇ。)
と学を睨みつつ、庭へと出る。が、そこにもいない。
となると、2階にでもいるのだろうか。
「さて、どうやって上るか...。」
俺は呟き、辺りを見回す。後ろには物干し竿、さらに後ろに家と家を仕切る塀。そこで、ピンと来て
「おい浩平、圭吾。何も言わずベルトを貸せ。」
と言う。すると、浩平は
「ベ、ベルトを外したら脱げてしまうじゃないか!拒否する!断固として拒否する!」
と断固拒否。対する圭吾は
「イエス、オフコース!」
とすんなり外して投げ渡す。その代償にズボンが脱げてパンツ丸見えとなったが。栞は自然と目を反らしていた。
俺はまずそのベルトを物干し竿にくくりつける。次に
「ほら、浩平。早く渡せよ。」
「嫌だ!絶対に!」
「つべこべ言うな!鈴本さんのためだぞ!」
「たとえ、美女のためでも女の前で脱ぐなど持っての..
.?」
俺と浩平がやり取りをしている内に、圭吾がベルトのロックをさりげなく外す。
「ん?今カチッ、て?」
と彼が下を見た頃にはもう遅い。
圭吾がベルトの端っこを思いっきり引っ張るとあっさり外れて、浩平はクルクル回転し、ズボンはズルズル脱げた。
「ほい!」
「ナイス!」
俺は投げられたベルトを掴み、圭吾にグッドを送る。
「お前ぇっ、何をするんだっ!?」
「俺だけ恥ずかしい思いをするのが許せなかったんだよ!」
「お前は進んでベルトを手渡しただろうが。」
「美女が待ってんだ。モタモタしてる暇なんてねぇだろ。」
「うるせぇ、お前のたらしを押し付けんな...。」
互いの襟首を掴み合う下半身はパンツだけの2人。俺はそれを他所に浩平のベルトの先と圭吾のベルトの先を固結びし1本の長い綱とする。
俺はそれを持って塀を登り、右足を塀の端ギリギリに置いて勢いをつける。そして、
「おらぁぁぁっっっ!」
と飛び降りた。ターザンロープみたいな漢字で屋根に飛び乗ろうとの作戦であった。だが、思ったより飛距離が出ない。しかも、重みに堪えきれず物干し竿が折れてしまってやり直しは不可能。
「ク、クソがぁぁぁっっぅ!」
だが、俺は諦めない。漫画あるあるの空中水泳で距離を稼ごうとする。それが、なんと成功。俺は目的の屋根の縁に捕まり根性の懸垂で乗り上がった。
「おい、あれはどういう原理だ?」
「垂直抗力だよぉ。」
「つまり、重力に対する反作用...か!」
浩平と学が何だか理系な話をしてるが、考えが阿保である。確かに抗力は重力に対する反作用で本当に働いてはいるのだが、下に引っ張られる力の方が確実に大きい。それはメタく言えば二次元の専売特許であった。
だが、これだけ頑張ってもそこにも鈴本さんはいない。この様子ではこの家にいないということだろう。
「とぅっ!」
俺は無駄にイキって着地し、栞が
「どうだった?」
と聞いてくると首を横に振ってみせた。
「どういうことかしら...?」
すると、栞は顎に手を当て考えに耽る。俺は括ったベルトを外し
て2人に返し、折れた物干し竿を回収。からの、ダッシュで同じものを買って帰ってきた。
「もしかしたら、その有馬っていう男の部屋にいるかましれないね。」
「そうだな、あの男!監禁なんていう犯罪チックなことしゃがって!」
「それで、無理矢理キスを迫ったんだな!」
口々に言う栞と男2人。どうやら、結論が出ていたようだ。有馬の家、らしい。つまり、あいつは自分の犯した罪を俺に擦り付けたってわけだ。そうだとしたら、さらに怒りが増す。
さて、今度は有馬の家へ行こう。とは言えど。
「でも、有馬の家知らないんだよな...。」
俺がそう言うと、
「あ。」
と栞。
「か。」
と浩平。
「さ。」
と圭吾
「た。」
と学。全くもってのしょうもなさだが俺も
「な。」
といってとりあえずノリでボケる。男3人ならまだしも、まさか栞まで有馬の家がどこにあるのかがわからないってことを考慮してなかったとは思わなかった。
結局、有馬の家へは次の日情報を集めてから行くこととなった。




