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前言撤回する王子にお仕置きですわ

「死ねぇ、エレナっ!!」


(王家の威光(ロイヤルオーラ))

理性を投げ打ったミゼル王子が、大剣に炎の魔力を纏わせて斬りかかってくる。


 パーティー会場を揺らすほどの猛烈な熱風。

 観客の貴族たちが悲鳴を上げて逃げ惑う。


だが、私は一歩も退かない。

「火炎魔法、――概念抹消(リジェンダ)」


 左手を軽くかざすと、大剣を包んでいた猛火が一瞬で掻き消え、剣は消滅した。


「なっ……!? くそっ、これでどうだぁっ!」


(王家の威光(ロイヤルオーラ))

焦ったミゼルは、今度は全身の筋力を強化して直進してくる。

重厚な踏み込みによる衝撃波。


「運動エネルギー、――概念抹消(リジェンダ)」


 パチン、と指を鳴らした瞬間……

ミゼルの踏み込んだ足から一切の力が奪われ、ヨロヨロと間の抜けた歩調でつんのめった。


「な、なんだとっ!? 体が前に進まな――」


「隙だらけですわ」

私は一歩を踏み込み、すれ違いざま足払いを仕掛ける。


 体制を崩したミゼルが、ふわりと宙に浮く。

仕上げとばかりに、私は魔力を集中させた硬質の扇子を、彼へ向けて鋭く振り下ろした。


ドガァッッッ!!!


「ぐわぁっ!?」


鈍い打撃音とともに、王子の体が大食堂の床に激しく叩きつけられる。


「あ、が……あ……」


 静まり返る会場の中、私はドレスの乱れを整えると、手に持った扇子をパチンと音を立てて閉じた。

そして、大の字で倒れるミゼル王子を冷ややかに見下ろす。


「『撤回』の撤回すらできないお方に、私を繋ぎとめる権利などございませんわ。……お引き取り(退場)を、どうぞ破棄せず、そのままお受け取りくださいませ」


 決め台詞を響かせた直後……

後ろから飛んできたユリウス様に、私はふわっと宙に浮かせられるように抱き上げられた……まさかのお姫様抱っこである。


「……なんて華麗で素敵なんだ!」


「もう我慢できない、素敵すぎて今すぐ君を我が国へ連れて帰りたい! 国王陛下への挨拶も後回しだ!」


「ユ、ユリウス様……ッ!?」


 耳まで真っ赤にしたユリウス様は、私を抱えたまま颯爽と大食堂の扉を蹴り開け、パーティー会場を後にした。



 背後では、ようやく駆けつけた国王陛下が「このバカ息子がーーっ!!」と地鳴りのような怒号を響かせていた。


 床に這いつくばったまま「ま、待ってくれエレナ……前言撤回だぁ……」と惨めに手を伸ばすミゼル王子。

 「そんなぁ、王妃様になれるって言ったじゃないですかぁ!」と騎士たちに身柄を押さえられ悲鳴を上げる男爵令嬢ローズ。


 そんな2人に容赦ない処分を告げる国王の声と、スカッとした貴族達の盛大な拍手を背に受けながら、私達は新しい未来へと踏み出したのだった。




♢♢♢♢♢♢♢

 ……あの騒動から、わずか3日後。


 隣国の美しい王宮の庭園で、私はユリウス様と並んでティータイムを楽しんでいた。


「本当に、あの時すぐ告白してくれて嬉しかったよ、エレナ」


「ふふ、ずっと慕っておりましたから。……でも、私の『概念抹消』の力、怖くはありませんでしたか?」


 尋ねると、ユリウス様は私の手をそっと握り、悪戯っぽい笑みを浮かべた。

「まさか、惚れ直したよ。……もし君が僕の愛を『抹消』しようとしても、僕は何度だって君に告白し直すだけだからね」


「……もう、大好きですわ」


 ずっと憧れていた人と手を重ね合い、穏やかな風が庭園を吹き抜けていく。

元婚約者からの身勝手な撤回も、愚かな言葉も、もう私には届かない。



 私たちは今……最高に幸せです♡



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