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第6話 北海道旧炭鉱巡り、その1

 万里香が「いや、今回はもっと近くだ」と言った、真意が、清里から帰ってきた後、明らかになる。


「え、北海道? マジで言ってるの?」

 珍しく、万里香から電話を受けていた美希が、ちょうど風呂上りに牛乳を飲みながら答えていた。


「マジ。というか、私は前から行きたかったから、バイトで金を稼いでいた」

 そのこと、つまり万里香がバイトをして稼いでいたことを、美希は知っていたが、まさかそれが北海道に行くための資金作りだとは思っていなかった。


「せっかく大学の夏休みは長いんだ。今、行かずにいつ行く?」

「菜々子ちゃんは、何て言ってるの?」


「喜んでついて来るとさ」

「あー。やっぱそうだよね」

 予想していたことだったが、やはり菜々子は乗り気のようだった。


 美希は、一瞬迷った。

(お金はまあ、最悪親に借りて後で返せばいいんだけど、北海道か。長旅になるな)

 要は、バイクに乗り始めて半年も経っていない彼女が、数日間にも渡る、そんな長旅に耐えられるか、という心配があった。


「大丈夫だ、美希。バイクなんて乗れば乗るほど慣れる。それに、北海道は田舎に行けば信号機がほとんどないし、道も広いから、走りやすい」

(エスパーか?)

 そう思うほど、美希の心中を万里香が見通していた。


「わかった。でも、どうせオロロンラインとか、エサヌカ線とか、ミルクロードとか行かないんでしょ?」

 美希が上げたのは、北海道で絶景ロードと呼ばれるくらい有名な、真っ直ぐの道で、ライダーの聖地とも言えるくらい有名なところだったが。


「それは、時間があればついでに行く」

「ついでなんだ」

 さすがにメインは、北海道の絶景ロードではないらしい。


「で、万里香がわざわざ北海道まで行って、行きたいところってどこ?」

「炭鉱跡だ」


「はあ、炭鉱ねえ」

 いまいちピンと来ない美希に、万里香が嬉々として説明したところによると。


 北海道は、炭鉱跡地の宝庫だと言う。

 かつて、石炭を中心に北海道内には数多くの炭鉱があった。

 それらの多くが廃業となった今、建物が壊されずに残っているところが多いという。


 つまり、万里香のメインは、北海道に散在する旧炭鉱の跡地だとわかった。

「じゃあ、具体的な日程がわかったら教えて」

「わかった」

 そう告げて、あっさり電話は切れた。


 いつものように唐突で、思いきった行動をする万里香に、美希はもう慣れていたが、ふと思い出したのが、北海道に知人がいることだった。


 それは、佐々木明乃(あけの)という、彼女の元・同級生で、小学校・中学校と同じ場所に通い、クラスも同じだった、言わば親友に等しい間柄だった。

 残念ながら、彼女は親の都合で中学2年生の時に、引っ越したが、その引っ越した先が北海道札幌市だった。


 しばらく連絡を取っていなかったが、通信アプリの連絡先は交換していた。

 早速、美希が連絡を取ってみると。


―久しぶり、美希ちゃん!―

 向こうは、年月の隔たりを感じさせないくらいフレンドリーに応じてくれた。


 そこで、美希は近々、北海道にツーリングに行くこと、そして友達と旧炭鉱を巡ることを告げた。


 佐々木明乃は、しばらく考えていたのか、それとも調べていたのか、時間を置いてから返信があった。


―私のオススメは、奔別ぽんべつ炭鉱、幌内ほろない炭鉱、羽幌はぼろ炭鉱ってところかな―

 そう記載され、さらにURLまで張ってくれるのだった。


 リンクをたどると、確かにいかにも万里香が好きそうな無骨な鉄骨が組まれた建物の廃墟画像が出てきた。

 もしかして、彼女は万里香と同じ属性なのか、いや昔はそんな感じじゃなかったと思いながらも、美希は感謝していた。


―ありがとう、明乃ちゃん―

―全然いいよ。何だったら、私が案内してあげるよ―

 と、嬉しい一言を添えてくれた彼女。


 聞くと、彼女もまた地元、札幌の大学に通っているが、もうすぐ夏休みなので、時間はあるらしい。


―夏の北海道は涼しくて快適だから、お楽しみに―

 そう告げて、彼女は、旅を後押ししてくれるのだった。


 問題は、一つ解決した。


 翌日、早速、授業が終わった後に、万里香が美希と菜々子を呼び出した。

 つまり、北海道ツーリング計画について話し合うためだ。


 そこで、美希は、北海道に友人がいること、その友人が教えてくれたオススメの炭鉱跡、そして友人が案内してくれるかもしれないこと、を彼女たちに告げた。


「いいな、それ。案内してくれるなら助かる」

「意外な人脈ですねー」

 二人は手放しで喜んでくれるのだった。


 そして、日程はとんとん拍子に決まり、7月末から8月頭にかけて、5日ほどの日程で行くことになった。

 もちろん、往復フェリーを使うことになる。


 北海道までのフェリーは、近場だと茨城県の大洗か、新潟県の新潟からそれぞれ出ているが、今回は比較的行きやすい、新潟を選択することになった。


 それと、今まで使用していなかったが、広い北海道を巡ること、菜々子の願いもあって、ようやく彼女たちはここでインカムを使用することに決めるのだった。


 いよいよ、万里香の悲願でもあった、北海道の炭鉱巡りツーリングがスタートする。

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