第24話 九州への旅
夏、7月末。
大学の長い夏休みに入り、彼女たちはすぐに旅立った。
それは、九州へと続く、長い長い旅の始まりであり、そしてある意味、彼女たちの「廃墟巡りツーリング」の集大成でもあった。
そして、その船中。
「長い! 長すぎる!」
「そのセリフ、北海道に行く時にも聞いたな」
美希の愚痴に、万里香が応じていた。
東京から九州へ至る、オーシャン東九フェリー。
東京を19時頃に出発し、翌日の昼に四国の徳島を経由、さらに一泊を過ごし、翌朝の5時半頃にようやく九州の新門司港に到着する。
所要時間は、約21時間。つまり、北海道に行った時よりもさらに長い旅になる。
その船中、最初こそダウンロードした動画を見ていた3人だが、飽きて、船内にあるフリースペースにある、四人掛けの椅子に腰かけていた。
そして、北海道の時と同じような展開になっていた。
恋バナだった。
しかし、
「菜々子ちゃん。その後、彼氏とはどう?」
何気なく聞いた美希の一言に、彼女はあっけらかんとして答えた。
「あ、別れました」
「え、別れた? 何で?」
「何でって。別に、好きじゃなくなったから、ですかね」
「あっさりしてるな」
「そういう万里香センパイはどうなんですか? 万里香センパイは男の子っぽいけど、さっぱりしててモテそうですけどね」
「それ、私も思ってた」
二人に問い詰められるように尋ねられていた、万里香だったが、彼女だけは他の二人と感性が異なっていた。
「私は、別に興味ないしな。廃墟とトタンがあれば生きていけるし」
「いやいや、それ若い女子の発言とは思えないんだけど」
「じゃあ、美希センパイは? 好きな人くらいいるんじゃないですか?」
「私? 私も別に。強いて言うなら、菜々子ちゃんみたいな子が好きかな」
からかったつもりで発言した美希の一言に、菜々子は目を細め、妖艶な笑みを浮かべた。
「ふふふ。美希センパイ。そんなこと言ってると、本気にしちゃいますよ。私、どっちでも行けるタイプなんです」
「えっ、マジ……」
引きつった顔になっていた美希に、菜々子は微笑んだ。
「冗談です」
「何だ」
「というのは嘘で。試してみます?」
(どこまで本気なんだ、この子。本格的な百合になりそうで、ある意味、怖い)
美希は、試してみたいと思いつつも、今は思いとどまるのだった。
後は、適当に雑談して、風呂に入って、ひたすら酒を飲んで寝る、という実にだらしない船中での生活が続いた。
翌日の昼。
船は四国にある徳島港に入る。
そこで降りる人たちを甲板から見下ろしながら、万里香が呟いた。
「四国もいいな」
「いきなりだね。じゃあ、もう降りて九州は諦める?」
「いや、今回はいい」
「四国って言えば、やっぱり剣山スーパー林道ですよねー。オフロード乗りの聖地みたいなところです」
オフロードバイク、セロー乗りの菜々子が嬉々として声を上げていた。
「UFOラインってのもいいって聞くよ」
「ああ、あの山の上を走る奴か。四国は歴史もあって、飯も美味いし、面白いって聞くな」
「じゃあ、今度は四国ですね」
降りる人たちを見送り、再び船上の人となる、というよりまたも長い旅路に着く三人。
ようやく翌朝早く、船は九州の北、新門司港に到着した。
「へえ、ここが九州か。九州って本当に存在してたんだね」
「九州人が聞いたら、怒るぞ」
「九州って、コンビニあります?」
「いや、だから九州人が聞いたら怒るって」
などとくだらないことをインカムで話しながら、三人は下船の時間を待つ。
ようやく車が出ていって、最後にバイクが下りることになった。
「九州、初上陸! でも、とんこつラーメンの匂いがしない!」
「するわけないだろ」
「美希センパイ、テンション高いですねー」
三人にとって、初の九州上陸となった。
季節は夏。ここ九州も夏は暑かった。




