第22話 眠らないドライブイン
その日、彼女たちが泊まるために予約した宿は、福島市にあった。
その前に、彼女たちは、喜多方市で名物の喜多方ラーメンの昼食を摂り、その後、せっかく福島県に来たので、有名な磐梯吾妻スカイラインに行くことになった。
そこは、はげ山を中心とした荒涼とした大地が広がり、ところどころガスが噴き出しているという、まるで海外のどこかのような広大で、日本的ではない場所だった。
(すごい。初めて来たけど、これは面白い)
と、美希は本来の目的も忘れて、スカイラインのツーリングを楽しんでいた。
結局、磐梯吾妻スカイラインの中心地、浄土平レストハウスまで行って休憩。
そのまま、福島市に降りた方が近いのに、夕方近くになって、万里香が向かったのはそこから逆方向にある、二本松市だった。
時間にしておよそ1時間。
夕方になって、到着したのは、東北を貫く大動脈、国道4号線沿いにある、不思議な場所だった。
二本松バイパスドライブイン。
外観からして、いかにも昭和レトロな古い白亜の建物で、「ドライブイン」と書かれた赤い看板が一際目を引く。
レトロな外観に対して、中もまた時代に取り残されたような昭和感が漂っており、古い昭和のドラマに出てきそうな、いかにもレストラン風の4人がけテーブル席が中心で、小上がりの座席まであった。
そこで彼女たちが注文したのが。
万里香は、男の子っぽい煮込みホルモン定食。
美希は、チキンカツ定食。
菜々子は、野菜炒め定食。
注文が来るまでの間、辺りを興味深そうに見まわす万里香。
その彼女を見ながら、美希は発していた。
「確かにここはレトロ感あるね」
「ですね。今では珍しい感じで、逆に映えますね」
菜々子は、嬉々として写真を撮っていた。
そして、万里香は、
「そうだろ」
何故かドヤ顔で、
「ここのすごいところはな。24時間営業してるんだ」
と言ってのけたので、美希は驚いて聞き返していた。
「24時間? 何で? 言っちゃ何だけど、ここ都会じゃないよね」
美希の言う通り、二本松市は決して大きな街ではないし、ここは中心部からも外れていた。
「元々、このドライブインは長距離トラックのドライバー用だったんだ。だから隣にサウナって書かれた看板があっただろ?」
言われて思い出したが、確かにこのレストランの建物のすぐ隣に「サウナ」と書かれた看板があった。
「つまり、シャワー室もあるらしい。今はどうなのか知らないが。ウチの父さんは昔、長距離トラックのドライバーをやっていたんだ。だからここの存在は聞かされていた」
「なるほどね。だからおっさんばかりなんだ」
美希が見まわすと、客層が明らかに40代以上、いや恐らく50代以上と思われる、比較的ガタイのいい中年の男たちばかりだったのだ。
実際、広い駐車場には、車に混じって、大型トラックも停まっていた。
「もっとも、今じゃ一種の観光地化していて、一般客もたくさん来るんだが」
「でも、便利ですよねー。特に国道4号は、ガソリンスタンドもコンビニもいっぱいありますし、このまま青森県に行っても面白そうですね」
菜々子は、無邪気にそんなことを口走っていたが、美希はさすがに青森まで行くのは御免だ、と思うのだった。
「まさにここは『眠らないドライブイン』ってところだな。従業員はもちろん交代制で勤務しているらしい。テレビにも取り上げられたことがある」
「ふーん」
いかにも万里香が好きそうな、レトロ感満載の、昭和臭漂う、昔ながらのレストラン、というより定食屋に近い雰囲気だった。
やがて運ばれてきた料理を見て、美希は、
(量、多っ!)
と、内心叫んでいた。
明らかに女子が食べる量ではなく、男子向き、それも元々がトラックドライバー向きだから、がっつりとボリュームがあり、ご飯に味噌汁に漬け物の沢庵もついてくる。
ただ、料理自体は、確かに非常に美味しい物で、ちょっとした洋食レストラン風の洗練された味だった。
食後、夕暮れを見ながら彼女たちは、国道4号を北上し、宿のある福島市に着くのだった。




