三人の冒険者
周囲は薄暗く、入り組んだ洞窟のよう。
これは間違いなく【ダンジョン】だろう。
その宝箱に転生した俺は入っていた。俺を見つけた三人の冒険者たちは、拾っていくことにしたようだ。
ミミックかなにかと勘違いされていきなり斬り殺されなくてよかった。
「あっうあー(良かったー)」
『懐かれてるな』
『俺、戦闘は抜けっけどいいか?』
『あとは上がるだけだ。問題あるまい』
「おーいくー(よろしくー)」
命の恩人でもあるこの三人を、俺は小人族さん、龍砕剣さん、耳長族さんと呼ぶことにした。
……なんで名前で呼ばないのかって?
それは、
【名前】■■■
【種族】小人族
【レベル】42
【職業】???
【階級】???
【力】???
【賢】???
【防】???
【速】???
【才能】???
【スキル】???
【加護】???
【装備】???
【名前】■■■
【種族】???
【レベル】???
【職業】???
【階級】???
【力】290
【賢】51
【防】166
【速】152
【才能】???
【スキル】???
【加護】???
【装備】【龍砕剣】
【名前】■■■
【種族】耳長族
【レベル】29
【職業】???
【階級】???
【力】???
【賢】???
【防】???
【速】???
【才能】???
【スキル】???
【加護】???
【装備】???
全然見れないじゃないか!
こんなの無いのと同じだ!
見る価値もない……そう言ってしまうのは間違いだ。
ちゃんと分析する必要がある。ステータスでも、自分の目でも。
【名前】■■■
【種族】小人族
【レベル】42
まず俺を腰に下げる【小人族】さん。
ほそい目で、いかにも悪人っぽい。
俺自身が赤ちゃんになっているからだいぶ大きく感じるが、後ろの二人と比べると、たしかに小さい事がわかる。
しかし背が低い以外は、人とそう変わらないように見える。
三人隊列で先頭。周囲をよく見張っているし、【斥候】の役割だろう。
当然【速】が高いはずだ。
【職業】???
【速】???
……。
意識して【ステータス】を見たら分かる、っていうパターンじゃないのか。
『このガキ全然泣かねえな。弱ってんのか?』
小人族さんと目が合って、俺を頭をぺちぺち叩いて、なにか言っている。
口に指を突っ込んでくる。
「ぅぇえ~」
当然言葉にならない。赤ちゃんの滑舌で、しかも、日本語だ。
日本の知識があるのはありがたいが、こっちの知識を一から覚えるのは大変だ。翻訳魔法とかないかな……。
いや、現代知識とステータスがあるんだ。これ以上は望むまい。
『声出せんなら上等だ』
小人族さんは俺のことを粘土かなにかと思っているのか、顔をこねてくる。
赤子らしく大泣きしたろかと思ったが、ダンジョン攻略中だ。なにが災いするか分からない。細長い指をぺちぺち叩くにとどまった。
……宝箱から人間が出てくるのは、この世界ではよくあることなのだろうか?
そしてそれが日本からの転生者なことは?
気になる。
しかし舌は回らないし、言葉も分からない。
今の自分ができるのは【ステータス】を把握することだけだ。
二人目の大剣を持った、いかにも歴戦の戦士、といった風貌の人を見る。
【名前】■■■
【力】290
【賢】51
【防】166
【速】152
【装備】【龍砕剣】
この人だけやけに情報量がある。
力が抜群で、賢がぜんぜん。防と速が同じくらい。
明らかに前衛の戦士だ。
ちなみにここで言う【賢】は、知性というより、魔法の適性とか威力とかそういうものだろう。
賢くないんですね、なんて言ったら絶対殺される。
しかし数値化されているのが四項目のみか……。【HP】とか【運】とか【回避率】とか【魔防】とかあってもいいような気がするけど……。
そう念じて改めて【ステータス】を見ても、特に変わらない。
『イジュ、遊ぶな。来るぞ』
『わかってるって。どんどん風が変わってる。ハリア見えてかる? 小さいの、散らしてくれ』
『はーい』
小人族さんと龍砕剣さんがなにか話した、と思った途端、一条の橙の光線が走った。
と同時に、ハンマーで叩かれたような衝撃と、洞窟が崩れるような爆音と、雷のような閃光が光った。
おそらく魔法だろう。すさまじい。
耳長族さんは衛星のように炎を纏わせているけれど、それが、ひとつ減っている。とはいえまだ十数個は浮いている。
今のレーザーが何発も打てるのか。とんでもないな。
『首一つと雑魚は行けたか。あと頼めるか?』
『無論』
龍砕剣さんが、その背負った大剣を抜きながら、光線が爆発したところへ走った。あの大剣がダンボールでも、こう速くは走れない、という速度だ。足なんか四本くらいあるように見える。
彼が走る姿は見たけれど、向かう先は、見ていなかった。だからぎょっとした。
黒い犬の体に、人間の顔が三つ。そして目がひとつもない。
図体は縦に4m、横には10mくらいだろうか。
サイズ感、むちゃくちゃである。
けれど。
【龍砕剣】は決して小さく見えなかった。
それを持つ腕も、背も、大きく見えた。
【力】290
この数値がどれくらいのものか分からない。
龍を砕くと言うくらいだ。負けはしないだろう。
そしてそのとおり、犬は一撃にて斬り伏せられた。
めちゃくちゃカッコよかった。




