異世界転生するなら
知識……。
そう、知識こそが一番大事なんだ。
勉強に明け暮れて、友人も作らず、たまの息抜きは小説を読むこと。
異世界転生。
ああ、俺の一番好きなジャンルさ。憧れのやつ。
剣と魔法は大変? チートがないと死んじまう?
いやいや、考えても見ろよ。
――赤ちゃんの頃から大人の思考力を持つってだけで勝ち組だ。
もし日本に転生したら、神童扱いだろうな。
「九九を無詠唱で解いただけだが?」
「自分の名前を漢字で書くのがそんなにおかしいか?」
クラスの問題を解決したり、なにかのスポーツで優勝したり。
恋愛をしたり。
異世界転生してえ。
……なんでこんなこと考えてたんだっけ。
ああ、そうだ。
何日か熱っぽくて、眠れなくて、ずっと異世界転生ファンタジーを読んでたんだ。
異世界転生といえば「剣と魔法」。
俺に言わせれば「現代知識とステータス」だ。
そういうのがない作品もあるんだろうけどさ。
この2つ、この2つだけはあるといいな。
目を閉じて、自分にステータスがついている想像をする。
いまは寝込んでいて、相当HP低いだろうな。
知恵だけはあって欲しいけど……でも数値にすると一般人並で、せいぜい5とかだったりするんだろうな。
あとは……。
……いろいろ読みすぎたな。
目に力が入らない。開かない。
俺の体が、もう、自分のものじゃないみたいだ。
体から……魂が抜けて、どこかへと……。
異世界に……か?
久々の夢は……良い夢だな……。
底知れぬ闇。
自分の体が、闇に混じり合って、区別がつかない。
いくら手を動かしても、歩いても、転んでも、感覚がない。
死んだのか?
いや……頭は動いている。
地獄か天国か?
……そういえば、死んで地獄に行くことを地獄転生とは言わないな。最古の転生モノにも思えるが。
あるのかな。「異世界転生と思ったらただの地獄でした~地獄の沙汰もチート財布で天国です~」みたいなの。
いや待て。本来は天国に行くはずだったのに誤って地獄に落とされお詫びにチートスキルをもらう方が良いかな。
ヒロインが鬼か悪人しかいないのがネックか……。
どういった切り口で天国と地獄を見るか、と考えていると、いきなり周囲の暗闇が晴れた。
横一文字に光り、闇の天蓋が開いた。
文字通り、天の蓋が開いた。
『おいおいおい、なんかスゲー新種のミミックだぞ』
こすい目をした【小人族】が、俺をひょいと持ち上げる。
体より大きい【龍砕剣】を背負った青髪の大男が、俺の入っていた宝箱をチェックしている。
炎の塊を衛星のように纏う、全身入れ墨の【耳長族】が俺を見て言う。
『魔物……? 人間にしか見えないわね』
この三人の言葉が、俺には、まったく分からない。
けれども俺には、【ステータス】が見えた。
やっぱり異世界転生だ。
希望通り【現代知識】と【ステータス】が分かるなんて、ラッキーだぜ。
この2つさえあればもうチートみたいなもんだろ。楽勝楽勝。




