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救世主はツンデレ

 アトラクションにもたくさん乗りに行って、ショーを見て一緒に小さく小さく踊ってみたりもしたけれど、やっぱりブレスレットのことが気にかかる。


『似合ってないから』


 言われたことを思い出すと胸がちくりと痛む。

 わかってたことじゃないの、桃子。あのブレスレットは可愛い。だから可愛い子が付けてこそ価値があるんだ。そう言い聞かせよう。私みたいな地味な女より、あの子のほうが似合ってる。ブレスレットだって嬉しいはずだ。

 でもやっぱり……。


「うん、わかった」


 遠くで友達と電話をしているらしき中島君をそっと見る。やっぱり怒ってるのではと思うと辛い。やっぱりちゃんと謝らなきゃ。

 そう思い、私は電話を切り終えた中島君に話しかけに行く。


「あ、あのね中島く」

「朝倉さん、ちょうどよかった! 今紺谷から電話あってさ」

「え?」

「朝倉さんのブレスレット、見つけたってさ。一緒に取りに行こう」


 さあさあとでもいうように中島君は私の背中を押す。謝るタイミングをすっかり失くしてしまった。

 ん? 今ブレスレット見つかったって?


「紺谷が見つけたんだって。今メリーゴーランドのところで待っててくれてる」

「あの、あのね中島君! 本当にごめんなさい。その、迷惑かけちゃって」

「え? 迷惑? 面白いこと言うねー」

「おおおおもしろい?」

「だってこういうの、迷惑だなんて言わないでしょ?」


 一点の曇りもない笑顔を向けられて少し眩しい。

 中島君はやっぱりよくわからない。でも、優しいのは確か見たいだ。


「あ、きたきた。おせーよ中島!」

「ごめんごめん」


 この二人が話してるの、初めて見た気がする。仲良しなの?


「そう、俺ら小中高ってずっと一緒だから」

「心の中読んだ!?」


 驚く私を尻目に二人は会話を続けてる。


「どこで見つけたの?」

「や、見つけたっていうか。あー何て言うのかな。拾ったわけじゃないんだよね」

「そうなの?」

「うん。モジョ子ー、中島に何で失くしたかちゃんと話した?」

「えっいや。えと……」

「やっぱ言ってないんだね。まぁ中島のことだから怒っちゃいないだろうけど一応言うわ。モジョ子、ブレスレット失くしたんじゃなくてパクられたんだよね。別のクラスの奴に」

「え!? マジ!?」


 紺谷さんはどうも嘘が付けない人間らしい。下手に誤魔化そうとしていた私に代わって中島君に当時の様子を話してくれた。さっき私がぶつかったのは紺谷さんだったらしい。

 様子がおかしいと思って周りを見渡すと、まさにブレスレットをつけようとしているあの子を見つけて気付いてくれたようだ。


「あたしが言ってやったら渋々だけど返してきたよ。あなたはあんな地味な子がイケメンに囲まれてて悔しくないのかとか聞かれたけどアホかって感じだよね。男は見た目じゃなくて中身でしょうが。あと経済力。」


 紺谷さんはどうもイケメンにそこまで興味はないらしい。ついでに最後の一言は聞かなかったことにしておこう。


「――つーわけ。てかモジョ子も! あんた足早いんだからあんな奴からさっさと逃げろっつーの」

「す、すいません」


 そしてなぜか紺谷さんに怒られる私。そうだよね、絡まれた時点で逃げるべきでした!

 メロスるべきだった。メロスるってなんだ。


「じゃあはい。もう取られないようにね」

「あ、ありがとう紺谷さん!」

「こっ、今回だけだからね!? 次は自分でちゃんと守りなよ!?」

「は、はい!」

「じゃああたし、友達が待ってるから」

「はい、ありがとうございます!」


 嬉しくて、つい笑みがこぼれる。紺谷さんはやっぱりいい人だと思う。


「じゃあ俺たちも戻ろうか」

「はい。ほんとにごめんなさ……うっ!?」

「ごめんなさいは禁止―」


 ぺちんと額を叩かれてしまった。


「もう、盗られたって最初に言ってくれればよかったのに」

「いやでもそんなの信じます?」

「朝倉さんが言うなら俺は信じるよ」

「なっ!」


 なんですかそのセリフは!これ乙女ゲー?!


「少なくとも今日の遠足の班のメンバーと、紺谷と……夜野は信じると思うよ」


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