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人間と精霊、魔法と超能力  作者: キュリオ
第一章 始まりと覚醒
3/5

魔法について

前回と前々回に比べると少し多いです。

 魔法体験場の自動ドアを通った先に受付がある。受付には一人の男が立っていた。

 その男は海人を認識すると近づいてきた。

「今日は何のようだ?」

 近づきながら聞いてくる。海人は答える。

「高校生になったから魔法を体験しに来た」

「勉強は卒業か?」

「学んだことは実践する人間なんだよ」

 海人は男と親しげに話す。そのようすを見ていたサモンが声を出す。

「海人、俺らのこと忘れてないか?」

「忘れてねって」

 といって海人は男の紹介を始める。

「こちら魔法体験場の総支配人、平賀宗佑(ひらがそうすけ)支配人」

「初めまして。ここの総支配人をしている平賀宗佑です。今後お見知りおきを」

 宗佑は頭を下げる。あわててサモンと由里も自己紹介する。

「サモン・アルベンです! 今日はよろしくお願いします!」

「北原由里です! よろしくお願いします!」

「よろしくアルベン君、北原さん」

 営業スマイルでニッコリする。自己紹介も済んだので、本題に入る。

「平賀さん、今日はさっき言ったとおり魔法を体験しに来た。三人分空いてる?」

 海人の質問を受けて宗佑が胸ポケットから端末を取り出す。今日の利用者履歴が入っているのだろう。

しばらく画面を見ていた宗佑が顔を上げて口を開いた。

「この時間は空いていない。後四十五分で五人分空くが、そのときでいいか?」

「かまいません。魔法について多少教えておきたかったですから。ちょうどいいです」

「教えには俺も付き合うぞ。変なことを吹き込まれたらたまらないからな」

「ありがとうございます。いつもの場所、開いていますか?」

 海人が問うと、宗佑はもちろんとばかりにうなずく。

「では、俺は先に行っているぞ。案内たのむぞ」

「任せてください」

 宗佑は走っていった。海人はサモンと由里を連れて廊下を歩き始めた。

 サモンが歩き始めてすぐ疑問をぶつける。

「なんで海人とここの支配人が知り合いなんだ?」

「そうそう。それにかなり仲よさそうだったけど?」

 由里も質問する。海人は何事も無く答える。

「俺はあの人の生徒だからな」

 サモンはイマイチわからないようで顔をしかめている。

「なんでお前が支配人の生徒なんだ? ここは高校生以上しか体験できないんだろ?」

 サモンの質問に海人はため息交じりに答える。

「ここは体験できるのが高校生以上なだけであって、入場は小四からできるんだぞ。なかなか知られてないんだけどな」

 サモンと由里が驚く。初耳だったからだろう。

「世界は広い・・・!」

「お前は何を言っているんだ・・・・・・」

 思わず海人はサモンにツッコミを入れていた。

「じゃあ、海人はいつから教えを受けてたの?」

 由里がお笑いの空気を破って質問してくる。

「中二からだよ。兄貴と一緒に行ったのが初め。たぶん、今頃じゃないかな」

 海人の答えを最後に三人は立ち止まる。

 目の前に扉があった。扉には『魔法学習場』と表示されたデジタルパネルがかかっていた。

 海人はその扉を手で押した。この体験場内にオートの扉は存在しない。

 扉の中は何世代も前の学校教室の風景に似ている。今では当たり前の端末付きの机ではなく、木で出来た何世代も前の机。椅子もパイプではなく木で出来ている。そしてディスプレイがあるはずの所に濃い緑色の物があった。知っている者が見れば、それは黒板と呼ばれていた物だと気づいただろう。

「どうぞお座りください」

 黒板の前に立っていた宗佑にすすめられ席に座る。座席指定はないのでサモン、海人、由里の順に各列の一番前に座る。座ったのを確認した宗佑が講義の説明を始める。

「この講義は魔法を体験する前に、魔法とはどのようなものかを知ってもらうための講義です。今回はあまり時間がないので簡単に魔法の原理、注意点、使用方法を説明させていただきます」

 宗佑から説明のあと、大型ディスプレイが床から出てくる。ディスプレイに資料が映り、宗佑の講義が始まる。

「魔法とは、この世界に充満している『ヘイル』という粒子を利用することで起きる超常現象のことを指します」

 ヘイルはこの世界に無限にあるといわれている。しかし、その正体は何もわかっていない暗黒物質(ダークマター)である。一部の人間の評論家は「そんなものを使って害は無いのか」と批評される時期もあったが、百年以上使っても何もなかったので今は安全とされている。

「注意点ですが、自身が発動直後の魔法に当たらないでください。当たってしまうとしばらくの間、激痛が起こります」

 自身が発動直後の魔法に当たるとあたった場所が激痛にみわまれる。原因は魔法に使用したヘイルによるものだとか、自身の魔法は自身を嫌うなどさまざまな説があるがまだわかっていない。他人に当たっても、当たった人には激痛がないので謎は深まるばかりであった。

「使用方法については体験会場で教えてもらってください。私からの説明は以上です」

 宗佑の説明は二十分で終わった。まだ三十分以上時間がある。どうしようか悩んでいた海人に宗佑が話しかける。

「後はおまえの仕事だ。あの二人を楽しませてやれよ」

 そう言って、宗佑はさっさと出て行ってしまった。

「海人、これからどうするの?」

 由里が尋ねる。サモンも言いたいことは同じのようだ。

 しばらく考え、言葉を出した。

「じゃあ、施設の案内をするよ。ついてきて」

 由里とサモンはうなずいて賛成してくれた。




 施設の案内を終えてロビーに戻ると宗佑がいた。宗佑は海人たちを見つけると「こっちへ来い」と手招きした。宗佑の方に行くとモニターが二つ出現した。

「これに名前と年齢を入力してください。入力が終わり次第、魔法体験を開始します」

 サモンと由里は言われた通りに入力する。海人は会員登録しているので入力する必要は無い。

 二人の入力が終わるとモニターが消えた。これで登録完了だ。

「では、サモンくんは二番会場に、由里さんは五番会場に行ってください。海人は私と共に九番会場だ」

「平賀さんって、俺の教育係なのか?」

「お前はかなり魔法を俺から学んでいる。忘れていないかのチェックもかねて教育者が見届けるのは当然だと思うが」

 事実と正論を並べられては海人に反論の余地は無い。海人はサモンと由里にエールを送ることにする。

「二人とも、がんばろうぜ!」

「あぁ!」

「海人もがんばってね!」

 気合が入ったところでそれぞれの会場へ入っていった。


「まず基礎からおさらいだ」

 九番会場に入った途端、宗佑が言葉を発した。海人も気を引き締め、宗佑の言葉に耳を澄ます。

「魔法はヘイルを利用することで起きる超常現象だ。しかし、ヘイルを利用するには専用のデバイスが不可欠だ。その専用のデバイスがこれだ」

 宗佑は目の前のテーブルに置いてあったメモ帳のようなものを持ち上げた。縦十センチで横七センチ、厚さが三センチほど小さいものだ。これがヘイルを利用して魔法を起こす専用のデバイスの一種だ。他にもテーブルの上にペン型や拳銃型、バッグ型が置いてあった。

「このデバイスの名はタロットという。一般社会でもっとも使われているデバイスだ。今日はこれを使ってもらう」

 宗佑はタロットを海人に差し出す。海人は受け取った後、再び宗佑の言葉に耳を傾ける。

「使い方は簡単だ。タロットを手にしたまま、タロットに書かれている言葉を正確に発しろ。早いのは良いが遅いのはだめだ。一番良いのは早く正確に言えることだ。成功すれば、小さな炎がタロットを持っている反対側から出てくるはずだ」

 海人は言われた通りタロットに書いてある言葉を正確に少し早く読んだ。

「火の精よ、我が手に小さき炎を」

 海人がそう告げた瞬間、タロットの反対側からライターのような火が出現した。

「そうだ、それが魔法だ。その炎を動かしてみろ。頭の中でイメージしたことをタロットに流し込むような感じだ」

 海人は炎が右にゆっくりスライドするイメージをする。そのイメージを保ちながら、タロットを掴んでいる手に神経を集中させてみる。すると、イメージ通りではなかったが炎が右に一センチ程スライドした。しかし、スライドした後に炎は消えてしまった。

「まだ魔法自体が不安定なんだろう。初めてのやつにしては長いほうだぞ。もう一度やってみろ」

 宗佑から賞賛をうけつつもう一度言葉を紡ぐ。

「火の精よ、我が手に小さき炎を」

 海人の声に反応してタロットから炎が出てくる。維持するにはどうすればいいか、と海人が訪ねると宗佑は間髪いれずに答えた。

「そんな難しいことじゃない。炎が出ているイメージを保ち続ければいい。イメージしていても消えることがあるが問題は無い。イメージを無くしたら最後だ」

 宗佑の指摘を受け、海人は常にイメージするように心がけた。もう一度右にゆっくりスライドさせるイメージをし、今度はタロットにふれている指に神経を集中させる。すると、前回よりイメージ通りに右にスライドする。スライドした後も炎が消える様子は無い。

「コツを掴んできたな。達也と違って飲み込みが速いな」

「兄貴は安定するまでどのくらいかかったんですか?」

「二時間ぐらいか。イメージを保ち続けるのが大変だったようだ」

 海人は達也を超えたことを少し喜んだ。ゲーム以外でも勝てるものがあるのは良いな、と思った。

「よし、そこまで。次は五メートル先の的にその炎を当ててもらう。達也は五週間かかったぞ。普通なら三週間で五メートルは確実に当てられるようになる」

 宗佑がそう言ってテーブルに付いていたボタンを押すと、入り口の反対方向にあった壁がドアのようにスライドして標的が現れた。高さは海人の顔ぐらいか。五メートルにしては少し短い気がする。

「いきなり五メートルはよほどのやつじゃない限り、当てるのは難しい。初めは三メートルから行う。使用するのはタロットだ。一度、炎を消してまた出せ」

 海人は一度イメージを崩す。すると炎が消えた。消えたのを確認してからもう一度唱える。

「火の精よ我が手に小さき火を」

 三度目のこともあって息継ぎなしで唱えた。しかし、炎は一向に出てこない。顔を顰めている所に宗佑が思い出したように言った。

「言い忘れてた。あるところで区切らないと、正しく魔法が発生しない。前の二回は区切りがあっていたから炎が発生したんだ。前の区切りでもう一度唱えてみろ」

「火の精よ、我が手に小さき炎を」

 今度は言葉と共にライターほどの炎が出現する。

「デバイスには区切りが記されていない。自分で区切る必要があるから注意しろ。区切りを間違えると思ったものとは違う魔法が発生する場合があるからな」

 宗佑は補足した後、魔法を標的に当てるための説明を始める。

「標的に当てるにもイメージが必要になる。その小さな炎を標的に向かって飛ばすようなイメージだ」

 海人は炎が標的の真ん中に行くようにイメージする。そしてイメージを保ちながら指先に神経を集中させる。が、炎は飛ばずその場に留まってゆらゆら揺れている。

「イメージができたら、そのイメージが実際に起きると思い込め。強く、強くだ。イメージだということを忘れるほど強く思い込め。思い込みが弱いと魔法は飛ばないし、跳んだ後の制御も出来んぞ」

 宗佑のアドバイスを受け、海人は自分の世界に入っていく。

(すべての物理法則を無視しろ。俺は今、何でも出来る。こんな小さい炎を飛ばすことぐらい楽勝だ!)

 自分の世界で激しく思い込みをする海人。傍から見ればただの思い込みの激しいちょっとした変人である。しかし魔法を使う上ではその思い込みによって自分の世界と現実世界との境界線が曖昧になるくらい思い込まなければならない。この思い込みが普通の人にとっては難しいのである。いくら思い込んでも途中で現実的な理性がそれを邪魔する。魔法との戦いは理性との戦いでもあるのだ。

 かといって、魔法が発動すると理性が飛ぶかと言われるとそうでもない。この思い込みは理性を無くすのではなく、理性を制御する作業といったほうが近い。一時的に「それはできる」と心のそこから思えばいいだけだ。一度出来れば、理性も出来ると判断するため簡単に制御できるようになる。

 海人は完全に自分の世界に入っていた。海人は自分の世界で手元にある小さな炎が飛んでいっては出てきて、飛んでいっては出てきてを繰り返しイメージした。いや、自分の世界ではすでに出来ていると思っていた。

 結果はすぐに現れた。海人に持っているタロットから出ている炎が勢いよく標的に向かって飛んでいった。しかも海人が自分の世界で思ったと通りにまっすぐ飛んでいき、標的の中心に当たった。炎は標的に当たった瞬間に霧散した。魔法は人間や精霊以外の特定の物質に当たるとヘイルに戻る。

 この結果を見た海人自身も驚いたが、それ以上に宗佑が信じられないと言った風に驚きを隠せない。

「飲み込みが速いとは言ったが、まさかこれほどとは・・・・・・。お前には魔法師の才能があるかもしれん、いや絶対にあるな」

 宗佑の感想を聞いた海人は嬉しかった。褒められたこともそうだが、魔法の才能があると言われたことがそれ以上に嬉しかった。

 海人の内心を知ってか知らずか、宗佑はこんなことを言ってきた。

「今日はタロットだけにしようと思ったが・・・・・・他のも試してみるか?」

 宗佑の言葉に、海人は返事をしながら思った。

(残り時間で全部のデバイスを試してやる!)



 魔法の体験時間は一時間から三時間まで任意に決めることができる。

 海人たちは一時間半を予定していた。予定時間が終わり、海人が受付に戻ったときにはサモンと由里は受付の女性の人と話していた。話の内容は会員登録についてだ。

 ここの会員は無料会員だ。年会費、入会費はかからない。会員になると前回までの魔法体験を記録され、次に来たときは前回の続きから魔法体験が出来るというものだ。会員登録しないと、いつまでも海人たちが今日行った魔法体験した出来ない。どこで会員登録しても世界中で通用するらしい。

 海人は二人が会員登録するの待ち椅子に座って待った。海人はその間、さっきの体験について思い出していた。

 結局、すべてのデバイスを試した。魔法の種類は火以外に、水、風、光の四種類だった。すべての属性で標的の中央に当てることが出来た。これは、宗佑が見てきた中では初めてだったらしい。さすがに初心者が一日目に全属性を標的に当てるのはすごい才能が無ければ無理なことである。つまり海人はその、すごい才能を持っていることになる。海人にとっては嬉しい誤算である。

 サモンと由里が登録が終わったらしく、海人に声をかける。

「どうだった? 私は飛ばせたけど標的まで届かなかったな~」

「俺は、標的の近くを掠めた軽度だったぜ」

 今日の報告してくるので海人も答えようとする。

「俺は・・・・・・」

 海人は考える。正直に話すべきか、嘘をつくべきかを。少し迷って不思議な顔をしている二人に答えた。

「何度かは、標的の中央に当たった」

 嘘でもなく、正直でもない答えを言った。友人たちは疑わずただ賞賛した。

「すげぇな・・・・・・! 勉強してるとこんなに違うのか!」

「海人すごい! ほんとにすごいね・・・・・・」

 友人たちの賞賛を受けながら、海人はそれほどでも、と言った。それより、と、

「時間も時間だし、帰ろうぜ」

 現在は四時四十五分になるところだ。空は赤い。友人たちはそれに気づいて、頷いた。

 海人は宗佑に挨拶しようと思ったが、宗佑がいなかったので出口に向かって歩き出した。

 帰りは駅まで今日のことで盛り上がった。駅のホームで三人はまた明日、と言って自分が乗る電車に乗って帰っていった。

読んで下さってありがとうございます。

次回はもう少し長くなるかも知れません。

これからもよろしくお願いします。

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