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リリー・フリティラリアの日記  作者: 夏梅 結香
第一部 コランダム・ラトラナジュ編
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9/22

エピローグ

コランダムはパタリと日記を閉じた。十二月三十一日の記載がない日記が、リリーとの日々が終わりを告げたことを理解させた。

「やはり、話さないと分からないことが多くあるな……」

コランダムは日記を手に取り、そのまま店を出た。チリリンと軽やかな呼び鈴の音が誰もいない店内に鳴り響いた。


 コランダムはリリーのいる牢へ向かった。コツコツとコランダムの履いている革靴が鳴り響き、止まった。

「あら、来たのね。刑事さん」

リリーはいつもと変わらない笑みを浮かべ、コランダムを見た。来店してきたコランダムを出迎えるように。いつもと違うことがあるとするなら、鉄格子の先にリリーがいることであった。

「リリー、教えて欲しい」

「何かしら?」

「黒百合の花言葉の意味はなんだ?」

コランダムの問いにリリーは、嬉しそうに微笑んだ後に少し頬を赤らめた。その様子はまるで恋する乙女のようだった。

「黒百合の花言葉は、『呪い』や『復讐』、『恋』、『愛』っていうのがあるの」

「『恋』と『愛』……」

コランダムの呟いた言葉にリリーは、まるでその言葉が正解であるかのように頷いた。

「ずっと私は貴方に伝えていたのよ?『愛しているわ、刑事さん』って」

鉄格子越しに佇むリリーの姿は、まるで黒百合そのものだった。

「……ねぇ、刑事さん。実は私、人が殺せないせいでおかしくなりそうなの」

そう告げたリリーは懇願するようにコランダムに手を伸ばした。コランダムは伸ばされた手に優しく頬を当てた。

「私を刑事さんの手で終わらせて……?」

甘えるようなリリーの言葉にコランダムは首を横に振った。リリーは目を見開き、声を震わせてコランダムに尋ねた。

「どうして……?」

コランダムは、頬を当てていたリリーの手に自分の手を重ねて、指を絡めた。

「リリー……。俺が君のことを愛してしまったからだ……」

コランダムの告白にリリーは目を見開いた。そして、何かを理解したような顔を見せた。

「それは……素敵な愛の告白ね」

リリーはそう呟くと、微笑んだ。しかし、その瞳は光が差すことのないものに変わり、微笑んだリリーの頬には一筋の涙が伝っていた。

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