50.そして、それぞれが現実に戻っていく…
50.お疲れ様でした。
美子は高知への最終便がきわどい時間になるので初めから一泊の予定を組んでいた。同じ様になつも一泊するようにしていたのには理由があった。千歳へ飛ぶ便は割と遅くまであるのだけれど、そこから先のことを考えると早い時間にゆっくり帰った方がいいと考えたのだという事だった。
「まゆさんは?」
「日下部先生、野暮なことは聞かないの。乙女心が解かってないのね」
「あ、河さん、変なこと言わないでくださいよ。誤解されちゃうでしょう。私はちょっと打合せしたいことがあって…」
「打合せって?」
「実はコラボの件で」
「そうでしたか」
一泊組の三人と日下部は錦糸町へ向かうため、地下ホームへ向かった。エスカレーターの上で律子が指をくわえて眺めていた。
「はい、りったんはこっち」
りくてっくすに首根っこを掴まれて名残惜しそうに律子は「にゃあー」と叫んだ。
日下部はロビーで待っていた。先に三人がチェックインして降りてくるのを。
「お待たせしました」
まゆが最初にやって来た。続いてなつ、少し遅れて美子も。
「あら、桂さんは抜け目がないわね」
「えっ?河さんどういう事ですか?」
「まつもとさんは知らなかったかしら?日下部先生はメガネっ娘が大好きなんですよ」
「そうなんですね?なるほど!桂さん、メガネ似合いますよ。師匠じゃなくても惚れちゃいますって」
「いえいえ、みなさんそれなりにキレイですから…」
「それなりですって!」
三人が声をそろえて日下部を睨み付けた。
食事は駅前の居酒屋へ出向いた。美子お気に入りのシャルロッテチョコレートファクトリーは残念ながら既に閉店していた。そこで日下部の行きつけでもある和食・海鮮の『てんまい』という居酒屋にやって来た。
食事を終えると、ホテルに戻って4階の英国風パブで窓から見えるスカイツリーを眺めながら、旅行の話で盛り上がった。
「私は明日早いのでこの辺で失礼します」
なつが最初に切り上げた。
「私も疲れちゃったから先に休ませともらいますね」
美子も続いて部屋へ戻った。
「日下部さんは大丈夫ですか?」
「僕はここからなら歩いて帰れるから」
「そうなんですね!それで、コラボの件なんですけど…」
2013年11月。日下部とまゆがコラボした『東風』と『南風』。その第二弾が着々と進められている。内容・投稿日には触れないが、同日同時刻に同時投稿される予定!
そちらもお楽しみに!
打ち合わせを終えたまゆは日下部を見送って部屋に戻った。窓から見えるスカイツリーのイルミネーションを眺めながら、つぶやいた。
「ちょっと飲み過ぎちゃったかしら」
火照った顔を両手で軽くポンポンと叩いてから窓のカーテンを閉めると、まゆはシャワーを浴びるためにバスルームへ入って行った。
日下部はまゆに見送られた後、タクシーで帰途についた。そのタクシーの中でスマホに着信が入った。
「いいよ」
日下部は一言いうと、スマホをしまい、タクシーの運転手に告げた。
「すみません。戻ってもらっていいですか」
そして、それぞれが現実に戻っていく…。
皆さん、ボクのわがままな良港にお付き合いいただきありがとうございました。
また、ご本人の名誉を傷つけるような扱いをさせていただいた方もおられますこと、平にお詫び申し上げます。
読者の皆さんにおかれましては、あらすじでもお伝えしました通り、この物語の登場人物はボクのお気に入りさんたちの名前を使わせていただいていますが、話の内容とご本人たちの人格は別物であり、すべてはボクの想像だけのこと。これを読んで、ご本人たちの人柄を判断することの無いようにお願いいたします。
そして、最後までお付き合いいただきありがとうございました。