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なろうファミリーの温泉旅行 PartⅡ~番外編(その2)~

作者:日下部良介
本編とは違うかみむら律子さんのしおらしくて可愛い一面をご紹介します。
 日下部がタクシーを止めたのは東京駅だった。タクシーを降りるとそこに律子が待っていた。
「災難だったね」
 日下部が微笑むと律子は安堵の表情を浮かべ、日下部に抱きついた。
「取り敢えず、どこかに入ろうか」
「はい」

 二人は銀座方面へ歩いた。深夜営業をしているダイニングバーに入るとカウンター席に着いた。
「よかった」
 律子はそう呟いて日下部に体を寄せる。
「りっきさんに借りればよかったのに…」
「そんなこと恥ずかしくて出来ないよ」
 律子は口を尖らせ上目遣いに日下部を見た。日下部はそんな律子の肩を抱き寄せた。

 東京駅のホームで解散した後、りきてっくすが律子と圭織に声を掛けた。
「軽~くお茶でもして行くかい?」
「そうね。ちょっとくらいなら」
 圭織が答えると、りきてっくすは二人の腕を取って歩き始めた。駅ナカのカフェでそれぞれ紅茶やコーヒーを頼むと、りきてっくすは二人のために店のお勧めスイーツを追加でオーダーした。
「あら、どういう風の吹きまわしかしら?」
「たまには僕にも二枚目役をやらせておくれよ」
 圭織の質問にりきてっくすは答えて、さりげないウインクを決めて見せた。そして話題は旅行のことになった。
「日下部ちゃんは大したもんだね。いくら好きだからといってもよくやるよ」
「一筋縄じゃいかない連中ばかりだしね」
 そう言って圭織はりきてっくすを見た。
「僕はみんなを盛り上げようと頑張ってるんだけどね」
「そうね。それは認めるわ。おかげで私たちも楽しめるし、新しい子たちも緊張せずに済んだみたいだし…」
「日下部ちゃんもなにをおいてもりっきさんって言ってたしね…」
 二人の会話をよそに、律子はずっと俯いたままだった。
「りったん、どうしたの?元気が無いわね。疲れた?」
「ううん。そんなことはないよ…。ちょっとトイレに行って来るね」
 そう言って律子は席を立った。

 律子はトイレに駆け込むと、バッグの中身をひっくり返した。
「やっぱり…。どうしよう…」
 仕方なく席に戻ると、りきてっくすと圭織は旅行の話で盛り上がっていた。
「あの…。やっぱり私、お先に失礼してもいい?」
 りきてっくすと圭織は顔を見合わせて微笑んだ。
「そうね。それじゃあ、私たちもそろそろお開きにしましょうか」
 圭織がそう言うとりきてっくすも頷いた。圭織がバッグから財布を出そうとすると、りきてっくすがそれを制止した。
「ここはボクが出すからいいよ」
「あら、じゃあ、お言葉に甘えてご馳走になるわね」
 圭織はそう言って財布を仕舞った。律子はりきてっくすの言葉に胸をなでおろした。
「じゃあ、二人ともも気を付けて帰ってね」
 りきてっくすはそう言って、一人で歩きだした。三人はそれぞれに歩をすすめた。律子は急いで駅務室へ走った。
「すみません…。落し物は届いていませんか?」

 気がついたのは新幹線を降りた後だった。財布に入れてあった乗車券を確認しようと思ったら、その財布が無いのだ。乗車券どころか現金もクレジットカードも何もない。律子は日下部に相談しようと思ったのだけれど、日下部は美子たちと行ってしまった。声を掛けようとしたところで、りきてっくすに捕まった。

 駅員は早速、届けのある遺失物を調べてくれた。財布は見つかった。見つかったのだけれど、今は名古屋駅にあるのだと言う。東京に戻って来るのは明日の朝になるだろうと言うことだった。
「これからどちらまで?」
「群馬です」
「そしたら、向こうに着いてから身内の方にお金を持ってきてもらうか、こちらにどなたかお知り合いが居られるなら、その方に助けていただくか…」
 律子が真っ先に思い浮かんだのは日下部の顔だった。そして、スマホを手に取ると日下部に電話を掛けた。今にも泣きそうな声で、電話に出た日下部に律子は告げた。
「鉄人…。お財布を無くして帰れないの。助けて!まだ東京駅に居るの」
『いいよ』
 日下部は電話口でそう言った。
「ありがとう。待ってるね」

 幸い、財布の中に東京までの乗車券が入っているのが確認されたので、律子は受け取りのための手続きをして駅から出してもらうことが出来た。駅を出て待っていると、しばらくして日下部が乗ったタクシーが目の前に停まった。

「それで、今日はどうするの?帰るのなら…って言っても、もう電車はないのかな?」
「うん…。どこかに泊まるからお金を貸してもらってもいいですか?明日、お財布が戻ってきたらお返ししますから」
「いいよ。じゃあ、どこかに部屋を取ってあげるよ」
 日下部はスマホを取り出し、周辺ホテルの空き室情報を調べ始めた。そして、電話で予約を入れた。
「じゃあ、行こうか」
「あの…。もう少し一緒に居てもいい?安心したら、なんだかお腹が減っちゃった」
 そう言って、へへへと舌を出す律子。
「いいよ」

 翌日、チェックアウトした律子は東京駅へ向かった。財布は無事に戻って来ていた。それを受け取ると日下部に電話をした。
『ごめん!仕事が抜けられなくて行けそうにないんだ』
「でも、お金…」
『いいよ。また会う時のための口実にしたいから。それに、僕も昨日は思いがけず律子さんとたくさん一緒に居られたし』
「鉄人、ううん、良介さん、ありがとう…」
『じゃあ!気をつけて帰ってね』
 日下部はそう言うと電話を切った。律子は日下部との会話を終えたばかりのスマホに軽く口付けをしてホームへの階段を上って行った。




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