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ペルソナ  作者: ウミネコ
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第二章『皇製薬会社の闇』第七話

 如月結維は怒っていた。

 頭の中で先程の出来事が何回も何回も蘇り、その度に怒りで一杯になっていく。

 そんな無益な行為を繰り返し、残った感情は――〝悲しい〟だった。

 西尾一はどうか分からないが、石杖裁也の中で、如月結維という存在は大事にされすぎている。

 それ故に、彼は結維に自身の胸中を話したりはしないだろう。

 如月結維を傷つけないように最善の配慮を常に心がけている。

 だからこそ結維は余計に悲しいのだ。

 如月結維は石杖裁也の対等の位置づけにない事を悟った。

 それは即ち、〝信じられていない〟という事実。

 如月結維は、石杖裁也に信頼されていない。

 全てを知っても、結維がその重みに耐えられるという保証が、裁也の内に存在しないのだ。

(それがまたムカつくのよね……。にしても……)

 あの西尾一という少年。

 アレは一体何者何だろうか?

 外見相応の態度もすれば、何十年も生きてきた老人のように、落ち着きはらってもいる。

 あの石杖裁也も、何だかんだで言うことに従っていたようだし……。謎だ。

(しまいには、〝歌姫〟の活動も止めろとか言おうとしやがって……ムカつく!)

 YUIの活動は、つまり結維の生命そのものだ。

 結維から歌を取り上げたら、それこそ何も残らない。

 結維にだって、矜持、というものがある。

 こればっかりは、命を狙われていると言われようが、止める気などさらさらもない。

 大体、誰が、いつ、結維を狙ってくるのか解らないのだ。無闇に怖がっていても仕方あるまい。

 ――今夜、ソロライブを決行しよう。

 そう胸に堅く秘め、結維は竜ヶ峰の駅前へと歩き出した。

 その背後で、一人の男が結維をジッと監視している事も知らずに……。。



 星空に響く美しいソプラノ。

 夜の背景に映える純白のドレス。

 素顔の半分を白の仮面で被い、結維は自身の歌を皆に聴いてもらっている。

 突発的なYUIのストリートライブは、その日の気分で決める。

 今日はやさぐれている一日だったので、歌と聴衆に慰めてもらっている。

 周囲には五十人ほどの人だかりができ、駅での往来を妨げている。

 ――そろそろ頃合いか。

 結維がそう考えると、程なくして警察が介入してきた。

 警官が二人、周囲の人だかりを強引に割り、入ってくる。

「はぁ……、また君か」

 歳のいった警官が、結維を見て早々にため息をついた。

「ほら、皆も解散してくれ! ここは公共の場だ! 解散解散!」

 周囲から猛反発の声があがり、警官に詰め寄る。

 だが結維が、

「今日は皆ありがとう! 今日はこれで終わりだから、また私の歌を聴いてね!」

 と言い、惜しまれつつも皆、散開していく。

 結維は壮年の警官と、自然、目を合わせた。

「君……。これで何回目の注意になると思ってるんだい?」

「さあ……、分かりません。何回目ですか?」

「十回はゆうに超えてるよ! いい加減、学習してくれ!」

「スミマセンでしたー」

 完全に棒読みの結維の謝罪に、警官の額の血管がキレる。

「……いいだろう。ならば、これから補導をする」

「え……?」

「これから君を署に連れて行くと言ったんだ!」

「エエッ――!! な、何でですか?」

「何でもクソもあるか! 君は見た所未成年だろ! こちらは未成年を補導する権利があるんだよ!」

「私、こう見えても二十歳です!」

「嘘を吐くな! 嘘をッ!」

「本当です! JDです! 今年、車の免許も取りました!」

「なら証拠を見せなさい!」

「しょ、証拠……?」

「そう、証拠だ! 何か身分を保証出来るものを提示しなさい! 本当に二十歳ならば何も問題ないはずだ!」

 怒鳴る警官だったが、結維はタラァ、と冷や汗をかいた。

「ね、年齢を訊くなんて女性に対して失礼ですッ!!」

「失礼もクソもあるか! 我々は仕事でやってるのだ! なぁ!?」

 もう一人の若い警官に、おっさん警官は訊く。

 弱々しくてナヨナヨとしている男性。

 如何にも新人です、といった風貌で、彼は役に立たなそうだと結維は判断した。

 どうする。

 泣き落とし作戦にかかろうか、と知恵を巡らせると、「ちなみに、そこのスポーツバッグから、学生服が出ているからな」と警官が言った。

「あっ……」

 しまった、と思った時には遅かった。

 警官は余裕満々の笑みを浮かべている。

「ん? どうした? あの服は、竜ヶ峰の制服じゃなかったかな? んん?」

「――アレは、コスプレ用の服よ!」

「コス……プレ?」

「そう。私は制服を着て高校生になりきることで喜びを持つ性癖を持っているのよ! 貴方達だって、警察の服を着たコスプレイヤーかもしれないじゃない! お互い様よ!」

 結維の堂々たる宣言に、中年の警官はため息を吐き、「じゃあ、署に連行しようか……」と言った。

 ええ――? 私の渾身の一声が無駄に?

 観念して連れてかれるか。

 それとも決死の逃避行を行うか。

 究極の二択を選択する、まさにその瞬間、



「――ああ! 歌姫のYUIじゃないっすか!」



 と割り込む声がかかった。

 なんだぁ、と三人の視線が闖入者に注がれる。

 タンクトップで半ズボン姿。

 短い髪を茶髪に染め、眼鏡をかける男の子は、まだあどけなさを顔に残している。

 コードネーム〝ミカド〟。

 裁也の仲間である彼が、結維を見て口をパクパクと開け、指差していた。

君たちは知ってるか?

怪我をすると会社って休めるらしいぜ。

( ゜д゜)ポカーン

……以上、第七話でした。

明日、夜にまた更新させてもらいます。

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