9,廃都市
ついに名前を名乗った少女
名前は「ラピス・リベラリン・ヴァイスクラウド」
しかし、引っかかる点が山ほどある。
もやもやを残したまま、ラピカと「基地」に向かう3人。
そこで3人が見たものとは?
「私の名前はラピカ、『ラピカ・リベラリン・ヴァイスクラウド』だ―― 」
どうやら少女の名前は「ラピカ」というらしい。
ただ、注目すべきところは、明らかにそこではない。
「ヴァイス…クラウド――?」
確かにそう聞こえた、聞き間違いではないはずだ。
ヴァイスクラウド――、3人が生まれ、そして育った国の名前だ。
そして少女がその名字を名乗る以上、彼女はヴァイスクラウド帝国の元皇族ということになってしまう。
メイはラピカに聞きたいことが山ほどあった。
「なにから聞いたらいんだろう…?」
「ねえラピカ、あなたってもしかして――、」
メイがそう言いかけたとき、
「すまない、私も聞きたいことが山ほどあるのだが、この近辺は侵略者が闊歩している。少し行ったところに基地があるんだ。そこについてからゆっくり話そう。」
ラピカはそういうと、先頭に立って歩き始めた。
ラピカの背負っているライフルがよく見える。
武器が大好きなルイとアレンは見たこともない武器にくぎ付けだ。
「聞きたいこと、山ほどあるから整理しとかなくちゃね、」
反抗者とは何だ?、侵略者もわからない、それから彼女の名前のことも…、
ひねり出せばほかにもたくさん出てくるだろう、
そんなことを考えていると、
「ぐうー、」
3人のおなかが鳴った。
「そういえば私たち、昨日から何も食べてなかったわね、」
メイが恥ずかしそうに言うと、
「お前たち、何も食べてないのか…? 食べられるものはこれぐらいしかないのだが…、」
そういってラピカが取り出したものは、まさかのサラダチキンだった。
「こういうときって「おにぎり」とか、「パンを半分分ける」とか、そういうのじゃないのか…?」
アレンがそういうと、
「悪いな、それが私の一番の好物なんだ。あ、いらないなら私が食べるぞ?」
「いえいえもらいますもらいます。なにも無いよりはましです……」
3人はもらったサラダチキンを少しかじった、味はほとんどしなかった…。
「そうか、食べきれなかったら遠慮なく残してくれ。」
とりあえずラピカの食い意地がすごいということだけはわかった…、
「めちゃくちゃ強くてかっこいいのに…、意外な一面もあるのね?」
「それってつまりどういう意味だ?」
「いや、なんでもないわ…、それより、基地まではどのくらい歩くの?」
メイは誤魔化すために適当な質問をした。
「ん?もう目の前にあるぞ?」
――そう、サラダチキンに気を取られていた3人は気づかなかったが、だいぶ前から既に基地は見えていたらしい。
ラピカの言葉に、3人は前方を見てみる。
確かにそこには、ラピカの言う「基地」であろうものがあった。
いや、基地というには規模が大きすぎる?
それは3人の「想像」を、3人の「常識」を、いとも簡単に凌駕して見せるものだった。
そこに広がっていたのは、
『廃都市』
そびえたつ高層ビルたちは、もはや高さという「威厳」を失うほどに緑に侵食され、いたるところで鉄骨がむき出しになっている。
窓ガラスは当たり前のように割れ、倒れている建物さえある。
地面も、建物の壁も、どこもかしこも、「自然との戦争に負けた」といわんばかりに緑に覆われていて、
天から降り注ぐ光は余計まぶしく、空は青すぎて目に突き刺さる。
人気はない、南風さえ肌寒い。
でも確かにそこには、かつての賑わいと温かさが残ってる。
教会の鐘より高い建物なんて見たことも聞いたこともない3人にとって、
「高層ビル」なんてものがすぐに受け入れられるはずがない。
でも3人は、この「廃都市」がどのような道をたどってきたのかが大体わかる気がした。
「戦争」が激化する、「災害」で壊滅する。そうして手に負えなくなった場所は人々に棄てられる。
それはいつの時代も同じことだ。
この「廃都市」も、昔はきっと人でにぎわったのだろう、そしてきっと、
「この都市にも、きっと何か事情があったのね…、」
メイは少し寂しそうな、憐れむような目でそういった。
「ああ、確かにこの都市がこうなったのには、理由がある…。」
ラピカもメイと同じような目をしてそういうと、また歩き始める――
「あの中央にある一番高いのが私たちの基地だ。この廃都市についても、基地についたら話そう。」
「私たち…って?ほかにも誰かいるの?」
この惑星に来てからラピカ以外の人をまだ見ていない3人は、驚いた声でそう尋ねる。
「ああ、仲間がいるんだ。今はもう7人しかいないが、もうお前たちも仲間だからな。」
ラピカは少し微笑みながらそう言った。笑ったのを見るのは初めてかもしれない。
しかし、なぜ「仲間」なんだ?仲間ということは「敵」もいるのか?様々な思考が交錯したが、
この不安な世界で、「仲間」と言ってもらえて、ただ嬉しかった。




