8,強者
危険な町を離れ、どこか安全な場所を探しながら歩いていた3人は、突如として正体不明の人物と出くわす。
その人物は、あろうことか3人を銃で襲撃した。
しかし、「銃」というものを知らない3人は戸惑い、さらなる問題にも直面する。
はたしてその人物の正体とは??
夜の静けさを一瞬にして引き裂いた――
その正体は弾丸だった。
しかし、3人にはそれが弾丸であることがわかるはずもなかった。
なぜなら「マシンガン」やら「ライフル」やらといった「銃」は、3人のいた地球にはまだなかったから。
「なんなんだ?あれは…、大砲か何かか?」
3人にわかることは、金属の「何か」がとてつもないスピードで頭をめがけて飛んできたということだけ。
あまりの急な出来事に、まだ理解が追い付いていない
「大砲にしては弾が小さすぎるわ、」
「それより、弾を打っているのは誰なんだ?」
アレンがそう言う。
3人は、相手が人なら話し合うことができると思い、走るのをやめてから後ろを振り向く。
3人と襲撃者の間には、砂埃が舞っていて、お互いがよく見えない。
しばらくの間、そこには静寂と緊張が走った――
徐々に砂埃が消えてゆく、緊張が高まってゆく、
「来るぞ、追撃に備えろ、」
3人は臨戦態勢をとる、そして…
遮るものがなくなったとき、そこに現れたのは――
ひとりの「少女」だった。
アリスブルーの長い髪は少し傷んでいて、古びた白い戦闘服を身にまとっている。肩には彼女の背丈より少し小さいくらいのライフルを背負っている。
こんな少女に、戦いは似合わない。きっと3人はそう思ったはずだ。
少女といっても、年はだいたい17歳ほどに見える、
その純粋無垢な空色の目で、いったい何を見てきたというのか。
3人の気は少し緩んでいた。警戒心がなくなったわけではない。しかし、自分たちと同い年くらいの少女が「自分たちを襲撃した」、そんなことは、到底信じられなかった…。
その時…、これまで何も言わなかった少女が初めて言葉を口にした。
「なあ、お前たちは、『反抗者』なのか…?」
彼女のよく通る声は、夜の平原に響き渡る――
彼女が自分たちに「質問をしている」、それはわかる。
答えられるなら答えたい。
しかし「反抗者」とはなんだ? なぜ「自分たち」に訊いている?
そもそも、なぜ言葉が通じているんだ?
何もかもが理解できず、むしろこちらが質問をしたいくらいだ。
下手に答えるのも得策ではないと思い、3人はしばらくの間黙っていると、
「なぜ答えない?お前たちは『反抗者』なのかと訊いている。簡単な質問だ。」
何度聞いても変わらない。せっかく言葉は通じているのに、「一番重要であろう部分」がわからない。
「なぜ黙っている?答えないなら、もう一度撃つぞ。」
彼女はそういうと、背中に担いでいるライフルを構える。
そのライフルこそが、最初に3人をめがけて弾を放ったあの武器だ。
「あれはまずい、なんとかならないか?」
アレンが焦った様子でそういうと、メイが一歩前に出て少女に向かってこう言った。
「私たちは、ついさっきこの惑星に来たの、だから、まだ何もわからない。だけど、少なくともあなたに危害を加えるようなことはしないって、約束するわ。だから、その武器を下ろしてほしいの…!」
メイは嘘偽りなく今自分たちの置かれている状況を説明した。
人間の、「必死の叫び」というのは、意外にも伝わるものだ――
「やはり『反抗者』か…。詳しく話を聞きたい。私についてきてくれないか?」
3人はまだ状況が呑み込めていないが、彼女が武器を下したので一安心だ。
メイたちは彼女についていくことにした。
彼女の歩くスピードは、メイの高鳴る鼓動と同じくらい早かった。
ここはどこなのか、あのクモはなんなのか、自分たちはなぜ死んでいないのか、
この少女についていけば、いずれ謎が解ける。
根拠なんてどこにもないけれど、ただ漠然とそう思った。
その時…
少女が急に叫んだ
「下がれ!『侵略者』の群れだ、下がらなければ、命の保証はないぞ!」
少女がそういうと、3人の耳には、聞き覚えのある機械音が入ってくる。
もう二度と聞きたくないと思った音だ。
振り返るとそこには…、やはりいた、あのクモだ…。
あのクモは「侵略者」というのか…?
ただ、今はそんなことはどうでもいい
最初に出会った時とは少し事情が違った。
そう、数が多すぎる。
おそらく30、いや40ほどはいるだろう。一人残らずこちらに向かってくる。
「おい嘘だろ…、こんな大群、いくら武器があったって倒しきれないぞ」
ルイがそういうと、間髪入れずに少女が返す。
「お前たちが戦う必要はない、死にたくないなら下がっていろ。」
そういうと彼女はたった一人で前線に突っ込んでいった。
「おいお前…! いくらその武器が強いっつっても、こんな数相手に勝てるわけねえだろ…!」
ルイは少女のしていることが自殺行為にしか見えなかった。
やがて辺りには銃声が響き渡り、砂埃が立ち込める。
機械音と銃声が混ざり合い、もう何が何だかよくわからない。
3人は機械音のするクモも、銃も、見たことがない。
しかし、意外にも音はすぐに止んだ。
「少女は一人で大群に突っ込んでいき、無残な姿になっているのだろう…。」
誰もがそう思った。
しかし、舞い上がった砂の濃い霧の中から姿を現したのは――
少女だった…。
「嘘…だろ?」
地面はさっきまで動いていたはずのクモで埋め尽くされていた。
いったいどうやったんだ?
3人は開いた口がふさがらなかった。
少女は最後にもう一発、空に向かってライフルを放った
「一発しか余らなかった、あいつらも、なかなか手ごわいな。」
少女がそういうと、空に向かって撃たれた弾は、微かに、しかし正確に放物線を描き、まだ少しだけ動いていたクモの息の根を止めた。
「ねえ、あなたはいったい誰なの?」
メイがそう訊くと、少女はこう答えた。
「私の名前はラピカ。『ラピカ・リベラリン・ヴァイスクラウド』だ―― 」




