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僕にとっての普通は、あなたにとっての異常だから。  作者: かんな


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12/15

12.あの日初めて君を呼んだ日にはすでに。

「カスミ…」

「クソッ」

「行かないの?」

「は?なんだお前」

「いや、ロープがつながれてるとこに近い人が犯人じゃないですか?」

「お前、何言って」

「行こうナノ」

「伊織までどうしたんだ?」

「分かってる、今までも絶好のチャンスが何度かあったってのに私たちは犯人には近づけなかったこと」

「それなら、、、今回も意味無いだろ」

「それでも!可能性があるなら」

「…」

「このまま野放しにしたままでいいの?」

「よくねぇ!」


 宇宙服などの整備用品は全て一階のエンジンルームに置いてあるので、南エレベーターからそのまま一階に向かうのだが。


「エレベーターが動いてる…」

「こいつもかなり怪しいね」

――それとあの男――


 エレベーターは四階で一度止まってからシン達のいる五階へと上がっていく。


「四階は何かあるの?」

「あそこは何もないけど」

――何もないからこそ――

「怪しい…」

「私がこっち行くから」

ピポン

『四階です』

「そっちはよろしくねー!」

「待って!」

「ん?」

「一応何かあった時のためにこれを渡しとくわ」

「スマートウォッチ?」

「誰でもいいから何かあったら連絡して」

「分かった」

「気を付けてね」


 エレベーターの扉が閉まり一階へと降りていく。


――よし、行くか――


 四階も三階と同様、火星の光が床の血みどろを照らしている。

違うところがあるとすれば大木の葉が廊下まで伸びているのと他にもう一つ。


――匂いがある――


 草木の奥に人影が写る。

その人影は椅子に腰を掛け火星を見続けていた。


「はぁ」

「やっぱりあんただったのね」

「―――――――!?」

「あんたは伊織に私が三階で寝てたと嘘をついてまで」

「なんでっお前が」

「ここにいることを隠したかった。そうでしょ?マサトシ」


 シンが起きたときに嗅いでいたにおいの原因は死体だった。

壁のべとべとも埃だと思っていた毛玉もそしてあの時ベットだと思い込んでいたのも全て。


「私が寝ていたのは死体安置所だったのかしらね」

「…」

「沈黙は肯定とみなすけど平気なの?」

「……」


 沈黙を破るようにエレベーターの音が鳴り中から一人の男が下りてくる。


「シン!」

「アラタこっち」

「アラタさん…」

「こいつが犯人か?」

「多分だけどね、連れてって話を」


 シンが言い終わる前にアラタがマサトシを罵倒し始める。


「お前みたいなクズがのうのうと浸ってんじゃねーよ」

「アラタ?」

「立てよおい!」


 胸ぐらをつかみ殴りかかる拳をシンが止める。


「アラタ」

「っち」


 男を投げ飛ばしシンにエレベーターに連れてくるようジェスチャーする。


――まぁ無理もないか、大勢に人が殺されたんだからおそらくアラタの大切な人も――


「本当は今、ここで殺してやりたいな」

「俺は…」


 マサトシが何か言い終わる前にアラタがマサトシの顔面を殴り体がエレベーターの鏡に当たり、その衝撃で鏡が割れる。

その破片をアラタ取り、マサトシ喉に先を押し当てる。


「アラタ!」

「次ごたごた言ってみろよ?死にたいと思わせるほどの苦痛をお前に与えてやるからよ」

「アラタ!!!」




ピポン

『二階です』

「来いっ!」


 マサトシの体を渡航者が身を寄せ合っているトレーニングルームへと投げ捨てる。


「なに?」

「どうしたんだい?」

「聞け!皆の者!!!」


 その場にいる全員の視線がアラタとマサトシの方に向く。


「一連の殺人事件の真犯人を捕らえることができた!その愚行を犯した者がこいつ!杉田正俊、真人だ!」





「こいつが?」

「私の夫を、」

「返せ!返してくれよ!」

「殺せぇぇぇえ!」


 マサトシを殺せと命令する者、悲しみに暮れる者、安堵する者、物を投げる者。

そんな騒ぎを聞きつけた伊織と村上君とナノが部屋に戻ってくる。


「何の騒ぎだ」

――誰?――

「村上さん、犯人を見つけました」

「犯人を…は?」

「こいつが?」

「これが、カスミちゃんを」

「うぐ!?」


 いきなり苦しみ始めるマサトシだが、村上君がナノを制止すると苦しむのをやめた。


「ナノ、気持ちは分かるが落ち着け」

「落ち着けるかよ」


 フロアはまだ殺気に包まれている。


「「「「「こ・ろ・せ!こ・ろ・せ!」」」」」

「こいつを殺してカスミの、皆の仇を取るんだよ!」

「だから…」

「「「「「「「「「「こ・ろ・せ!」」」」」」」」」」

「放せ人間!」

「だから一旦…」

「グラ――――――――

「落ち着けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえ!!!!!!!!!!」


 ご老体から出るとは思えない声量と威圧でその場を静める。


「はぁ、マサトシ話を下で聞く」

「はい…」


 マサトシと二人っきりで部屋を出て一階に降りていく。


――終わったか――









 それから数日後

脅威が去りもう怯える必要が無いと判断した全員が一丸となり三階と四階の床や天井、大木についている遺体も全て片付けて前の穏やかな日常を取り戻そうと頑張っていった。




 一か月後

三階と四階は完璧に掃除され、前の船内の情景が戻っていた。

死体はすべて五階に運ばれ慰霊碑の代わりに大木を犠牲者の墓とし、毎日欠かさず全員が大木に祈りをささげている。


   火星に到着まであと27日

生存者数56人

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