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その日は朝から、快晴だった。
もってこいのドライブ日和。
昨日までトナラーに悩まされた嫌な気分を吹っ飛ばすのにはちょうど良いな。
それに奴の姿は見れなかったけど、奴は僕の姿を見ただろう。
見たのなら、僕が別人だと分かってもう来ないだろう。
たぶん来ないと思う。
来ないんじゃないかな?
まあ、ちっと覚悟しておこう。
さて、せっかくオープンカーを買ったのに、屋根を畳んで走らないと損だな。
と、思っていたのだが……
「ゴメンね。花粉症で」
助手席に座っているなおちゃんが、すまなそうに言う。
「いやいや、気にしなくていいよ。なおちゃん」
オープンカーの状態で待ち合わせ場所に行ったら、なおちゃんは驚いた顔して『オ……オープンカー……だったの?』と言って乗り込んできた。
喜んでくれているのかな? と、一瞬思ったのだが、なおちゃんは続けて『ごめん。せっかくのオープンカーで悪いのだけど、屋根閉めてもらっていいかな?』と言ったのだ。
その時に花粉症だと聞いた。
言ってくれれば、最初から屋根は閉めていたのだけどな。
「なおちゃん。今は薬で症状を抑えているの?」
「え? あ! そうなのよ。でも、いつ薬が切れるかと不安で」
「分かる分かる。僕も学生の時は、ひどかったからな」
「え? れいちゃんも花粉症?」
「だったのだけど、なんか大学卒業してから症状が治まってきて、二~三年前からほとんど症状が出なくなったんだ」
「あれって治るものなの?」
「分からない。ただ、大学にはバイクで通学していたけど、就職してからずっと電車通勤で、バイクに乗らなくなったから、それが原因かも……」
「バイクとなんの関係があるの?」
「バイクに乗っているとさ、排気ガスをまともに吸うじゃない。あれが良くないのかも。スギ花粉と排気ガスの相乗効果かもしれないな」
「そんな事ってあるんだ」
「いや、医者が言ったわけじゃないよ。ただ、花粉症が治まった時期とバイクやめた時期が重なるからそれが原因かな? と思っているだけ。まあ、今は症状が出ないんだからどうでもいいけど」
『この先三百メートル。左折です』
カーナビの指示が入り、左車線に入った。
「それで、なおちゃん。どこへ行くの?」
実はこの時点でどこへ行くのか分かっていない。
なおちゃんが乗り込んだ時に、彼女の言う住所にカーナビをセットしてそこへ向かっているのだ。
行き先に何があるのかは運転しながら聞けばいいのだが、セットした住所は、電車やバスで行くにはかなり不便な場所にある。
車で行った方が確かにいいな。
「行き先は、私が住んでいたアパート」
「住んでいた? ああ! 引っ越したの?」
「うん」
「そうか。離婚したんだっけ。え? 元の旦那の家?」
「ううん。離婚した後、避難していた場所」
「避難?」
避難って……まさか?
「ひょっとして、離婚の原因って……DV?」
「うん」
「そっか……大変だったんだね」
くっそう! 元旦那って、どんな奴だよ。
優しくておとなしい、なおちゃんを殴るなんて……
「アパート出るときに、大事な物を忘れて来ちゃって大家さんが預かってくれているの」
「忘れ物って大きさは大丈夫かな? 見ての通り小さな車だから、あまり大きい物はちょっと……」
「大丈夫。小さなカバンだけだから……ただ、マイナカードとか貴重品が入っていて……」
「それはマズい」
アパートに着いたのは、なおちゃんを乗せて三十分ほど経ってからの事だった。




