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トナラー  作者: 津嶋朋靖


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「引き留められた? 駐車場の管理人に」 


 佐伯先輩がそう言ったのは、また昼休みのカフェでのこと。


 昨日と同じく、僕の皿から強奪したサンドイッチをパクつきながらだ。


「その駐車場、よっぽど経営が苦しいのかな?」

「さあ? でも、駐車料金は安いのに停めている車が少ないから、そうなんじゃないのですか」


 まあ、客が減ることで、少しはトナラー対策に真剣になってくれるといいのだけど……


「で、今日は隣の駅の駐車場に停めたのだろ? そこはどうだった?」

「良かったですよ。値段は前のところと同じだけど、ポイントが付くしパークアンドライドサービスがあるので、定期券を精算機に読ませれば二百円安くなるのですよ」

「なるほど……そうか! 原因が分かったぞ」

「え? 原因?」


 先輩は、トナラーが現れる原因が分かったのだろうか?


「前の駐車場が経営難になったのは、そっちに客を奪われたからだ」


 そっちの原因かい!


「値段が同じで、パークアンドライドまであるなら、みんなそっちへいくだろう」

「まっさかあ」


 いや、案外そうかもしれない。


 前の駐車場は百台の駐車スペースがあるのに、朝僕が停めに来るといつも二~三台しか停まっていない。


 今度の駐車場は、七十台分の駐車スペースがあって、僕が停めた時にはすでに二十台ぐらい停まっていた。


 試しにスマホで現在の空き状況を見てみると、駐車場は満車にこそなってはいないが混雑しているらしい。


 一方で昨日まで使っていた駐車場は、空車のマークが付いていた。


 やはり、みんな条件のいい駐車場に移ったのだろうか?


「それ考えると、トナラーに感謝ですね。トナラーがいなかったら、駐車場を変えようなんて思わなかったし」

「駐車場を変えようと言ったのは俺なんだから、俺にも感謝しろ」


 そう言って先輩は電光石火の早さで、僕の皿からチーズサンドを強奪した。


「ちょっと! いい加減にしてくださいよ」

「いいじゃないか。サンドイッチぐらい。俺は車を格安でゆずってやったのだし、安い駐車場を紹介してやったし」

「いや、紹介されていません。スマホ使って自力で見つけたのです。安かったのは偶然ですから」


 パークアンドライドの事は、先輩に黙っていれば良かったな。


 まあ、僕としてはトナラーさえいない駐車場なら、安くなくても良かったんだけどね。


 これからは白いカムリに悩まされなくなるのなら、サンドイッチぐらいいいか。


 ………………


 …………


 ……


「え?」


 その日の夕方、僕は駐車場の前で立ち尽くす事になった。


「なんで?」


 僕のコペンの隣には、またあの白いカムリが停まっていたのだった。

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