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声のした方を振り向くと、眩しい光を浴びせられた。
カムリの運転手が戻ってきたのかな?
相手の姿は逆光線でよく見えないが、声の感じから男のようだ。
僕が車に、何か悪戯をしているとでも思ったのだろうか?
いやいや、迷惑しているのはこっちの方だ。
こっちなんだけど……やっぱり声をかけるのは怖い。
こんな異常な車の止め方をする奴のこと。
きっとまともな人間じゃない。
「困りますねえ、こんな停め方をされては」
え? 何を言っているのだ? この人は……
男は僕に向けていたライトを下に向けた。
それによって、今まで逆光線でよく見えなかった相手の姿が見えるようになる。
歳の頃は三十代ぐらい。
僕よりやや背が低く痩せ型。
服装は灰色の作業服の上に、夜光チョッキを纏っていた。
服の胸元には、どこかの会社のロゴがある。
僕がそこまで観察したところで、男は口を開いた。
「この白線は、見えますか?」
男は、ライトの光を駐車枠の白線に向けて言った。
「ええ……見えますが……」
「この白線で囲まれた枠は、駐車枠と言いましてね……」
いや、言われなくても知っているが……
「駐車する車は、この枠からはみ出さないように停めてもらわないと困るのですよ」
だから、いつもそうしているが……ん? まさか?
男の胸元のロゴと駐車場の看板を見比べた。
あ! この男、駐車場会社の社員。
「ちょっとあんた、人が話をしている時にどこを見ているんです?」
「あのう……話がよく見えないんですけど……」
「はあ?」
「見たところ、あなたはこの駐車場を、管理されている人のようですが……」
「ああ、そうですよ」
僕はそこで白いカムリを指差した。
「僕を、この車の運転手と思っていませんか?」
「え?」
男は、しばらく呆気に取られたような顔をして黙り込む。
少しして、再び口を開いた。
「違うの……ですか?」
僕はコペンを指差す。
「僕の車はこっちです」
「あ! これは、大変失礼いたしました。しかし、自分の車でないのなら、この車にメジャーを当てて何をしていたのです?」
「僕の車にぶつかった痕がないか、確認をしていたのです」
そこで僕は男に経緯を話した。
正直言って、駐車場会社の人間にはこんなことを話しても無駄だと思っていたのだが、向こうから話しかけてきてくれたのだから聞いてもらうぐらいはいいだろう。
「なるほど。トナラーという奴ですね。いやあ、その手の苦情はよく寄せられるのですよ」
「けっこう多いのですか?」
「ええ。ただ、申し訳ありませんが、うちとしても隣に停めただけでは、対応のしようがないのですよ」
「でしょうね。でも、隣の枠に停めるぐらいならいいとしても、この車みたいに、枠をはみ出して隣の車の運転席ぎりぎりに停めるというのは困りますよね。運転手を見つけたら、さっきみたいに注意してもらえませんか」
「もちろんです。見つけたら説教しておきますので、これからもうちの駐車場をご贔屓に……」
「あ! すみませんけど、僕は明日から隣の駅の駐車場使いますので……」
「え? いや、そう言わずに……先ほどのことなら謝りますので」
「そう言われましても、毎日こんな気持ち悪い車に隣に停められては気分が悪いので……」
「そうですか……」
男はガクリとうなだれた。
まあ、この人が悪いわけじゃないんだし、この人はマナーの悪い客相手に真剣に対応してくれているのだから気の毒な気もする。
これがきっかけで、駐車場会社もトナラー対策に真剣になってくれるといいのだが……
僕は男に別れを告げてコペンに乗り込んだ。
エンジンが暖まるのを待って車を出した時にカムリの方を見ると、男がワイパーに紙を挟んでいるのが見える。
警告文だろうな。
これで迷惑行為を改めてくれるといいのだけど……




