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「高城さん、ごめんなさい!」
新城さんが突然僕に謝ってきたのは、その翌朝のこと。
職場に出勤してきたところで、新城さんは突然僕の前に立って頭を下げたのだ。
どうやら、早くから出勤してきて僕を待ち構えていたらしい。
まあ、なんにせよ良かった。彼女が無事に現れたということは、あの後で富和さんに追い回される事はなかったようだ。
おそらく、GPSが電波を出す前に探知範囲外へ出られたのだろう。
「新城さん。謝るという事は、やはりあなただったのですね。あれを持ち去ったのは?」
「ごめんなさい。弁償します」
「いや、弁償はいいですから、なぜそんな事をしたのです? 佐伯さんにやらされたのですか?」
「いえ。佐伯さんは知りません。私、ドライブ中に縁石に乗り上げて、タイヤをパンクさせてしまったのです。でも佐伯さんはパンクに気づいていなかったみたいなので、あの人がトイレに行っている間に、トランクの中にあるパンク修理剤を使ったのです」
どうやら彼女は、パンク修理剤という物をよく分かっていなかったようで、これを使えばタイヤは完全に元通りになると思っていたらしい。
実際にはパンク修理剤はあくまでも応急処置であって、一時的に走れるようにはなるが後でタイヤを交換する必要があった。
「でも、常備しているパンク修理剤がなくなっていたら、パンクがバレちゃうからどうしようかと……頭がパニックになっていたのです。そしたら、高城さんの車にパンク修理剤があるのを見つけて……魔が差しまして……」
「そのパンク修理剤は、どうしました?」
「皆さんがお話ししている隙に、ヤリスのトランクに入れておきました」
「そうでしたか。しかし、新城さんが無事でよかった」
「え? 無事?」
「実はあのパンク修理剤は……」
そこで僕は事情を説明した。
「ええ!? GPSが入っていた!」
「ええ。警察に提出するつもりで置いてあったのに無くて焦りましたよ」
「ごめんなさい!」
「いえ、もういいです。無事だったのだから」
「あの……実は……」
ん? まだ何かあるのか?
「私、あの後、日野バス停で降ろしてもらったので、佐伯さんがその後どうなったのか知らないのです」
「なんだって!?」
その日、佐伯先輩はいつまで経っても出勤してこなかった。
訃報が届いたのは、昼頃になってからの事。
昨夜、先輩のヤリスは中央道の遮音壁に時速百キロ近いスピードで激突し、先輩は即死だったという。
監視カメラの映像によると、白い車に煽られていたらしい。
その白い車の運転手は、まだ捕まっていない。




