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振り向くと、一台の車がバックで隣の枠に入ろうとしていた。
まだ電波が出たばかりなのに、なんでこんなに早く富和さんが来たのだ?
あれ? この車は白いカムリではない。
緑のトヨタアリオン?
アリオンの運転席のドアが開いた。
「高城さん。ちょっとそこに停めたいので、どいてもらっていいですか」
運転席から顔を出したのは五十嵐刑事だった。
富和さんじゃなかったのか。
そう思ったら一気に力が抜けて、僕はその場にへたり込んでしまった。
「GPSが無くなっていた?」
僕から事情を聞いた五十嵐刑事は、コペンの中を覗き込んだ。
「車に施錠はされていましたか?」
「もちろんです」
「屋根はしまっていましたよね?」
「当然です」
「では、まだ車内にあるのでは」
「徹底的に探しましたが、どこにもありませんでした」
「いや、何かを見落としているかもしれませんよ。もう一度探しましょう」
五十嵐刑事がコペンの扉に手をかけた。
「待ってください」
そう言って五十嵐刑事を止めた相棒の垣見刑事は、僕が右手に握りしめていたGPS発見機を指差す。
「高城さん。それはGPS発見機ですよね?」
「そうですが」
「それは、電波が出る時間になっても反応しなかったのですよね?」
「そうです」
「では、もう近くにはないと考えた方がいいと思います」
「しかし、ここに来るまでは確かにあったのですよ」
「ええ。私は別に、高城さんが嘘をついているとは思っていません。この駐車場に入った時には、GPSはドリンクホルダーにあったのですよね?」
「ありました」
「そして自販機コーナーから戻ってきた時には、無くなっていたのですよね?」
「そうです」
「では車の近くを離れる前に、GPSはありましたか?」
「え?」
「確認はしていませんね? ではGPSは、お二人が自販機へ行く前にはもう無くなっていたのではないでしょうか?」
「いや……確認はしていませんが……なおちゃんは?」
「私も見てないよ」
「なるほど。それでお二人は、警察に電話をする前に佐伯さんと会っていたそうですね?」
「そうですが……」
「佐伯さんが持ち去ったのでは?」
「まさか。確かに佐伯さんは手癖が悪いですが、あの人にとってあのGPSは世界で一番持ち去りたくない物ですよ。持ち去ったら最後、富和さんに付け狙われる。それが嫌で、コペンを僕に売りつけたのに」
「でも、そのGPSは何かに偽装していたのですよね?」
「ええ。パンク修理剤に偽装していました」
「では、佐伯さんはそれが必要になって、中にGPSが入っている事も知らないで持ち去ったのではないでしょうか?」
「いや……しかし、佐伯さんはあの時、コペンには近づいていなかった……」
「れいちゃん。佐伯さんの連れていた女の子が、コペンに乗り込んでいたじゃない」
あ! なおちゃんの言う通り、新城さんがコペンに乗り込んでいた。
では、新城さんがGPSを持ち去ったのか? なんのために?
「とにかく、佐伯さんが持ち去ったとしたら、佐伯さんが危険ですね。電話で呼び出していただけますか」
「はい」
僕はスマホを取り出して佐伯先輩を呼び出した。
しかし、電源を切っているのか佐伯先輩にはまったく繋がらない。
その間に五十嵐刑事も、スマホでどこかと問い合わせていた。
「だめです。先輩は電源を切っているみたいです」
僕がそう言ったと同時に、五十嵐刑事もスマホを切った。
「そうですか。実はこっちも妙な事が分かりましてね」
「妙なこと?」
「白いカムリのナンバーについてレンタカー会社に問い合わせていたのですが、今返事が来ました。その車は二年前に廃車にした車のナンバーだと」
「なんだって?」
「つまり、日本国内を走っているはずのない車なのです」
「そんな事ってあるのですか?」
「なんとも言えません」
その時、垣見刑事のスマホにも着信があった。
「五十嵐さん。吉部の父親の身柄が確保されたそうです」
「そうか」
五十嵐刑事は僕たちに向き直った。
「もう大丈夫です。後のことは我々に任せて、今日のところはお引き取り下さい」
後ろ髪を引かれる思いを残しつつ、僕はコペンをスタートさせその場を走り去ったのだった。




