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「あのさあ」
なおちゃんが思い出したかのようにそう言ったのは、圏央道から中央高速へ移る八王子ジャンクションを通っているときのこと。
「あんまり、バタバタしていたから言いそびれてたけど、これって警察を呼んだ方がいいんじゃないかな? 吉部を殺したのは、ほぼあの女に間違いないし」
実は僕もそう思っていた。
しかし、警察に事情を説明している間に、あの女に追いつかれるのでは? という恐怖から後回しにしていたのだ。
「石川パーキングに入ったら110番するよ」
「110番もいいけど、担当刑事に直接電話した方が、話が早いと思うの」
五十嵐刑事と垣見刑事のことかな?
「それで今電話しようと思ったら、刑事さんからもらった名刺が見当たらないのよ」
「え?」
「れいちゃんの所にも刑事さん来たのでしょ。その時に名刺もらわなかった?」
「いや、もらっていないが……そうだ! 先輩がもらっていたはずだ」
ちょうどいい。佐伯先輩にもいろいろ聞きたい事があったし、石川パーキングに入ったら電話して五十嵐刑事の電話番号を聞き出そう。
夜遅くに電話なんて迷惑かもしれないが、文句を言ってきたら今まで強奪したサンドイッチの代金を請求してやる。
しばらく走って、車は八王子料金所を通り過ぎた。
それからほどなくして、石川パーキングエリアの案内が見えてくる。
広大な駐車場の比較的空いている場所に車を停めるなり僕は電話で先輩を呼び出した。
「もしもし、令斗です。夜遅くにすみません」
『ああ、別にいいよ。俺もドライブ中だし』
「え? ドライブ中? まさか、運転しながら……」
『ちげえよ。運転は彼女がやっている』
「彼女? 運転中じゃなくて浮気中ですか?」
『わはは! まあ、そんなところだ』
少しぐらいは、悪びれたらどうなんだよ。まったく……
『で、なんの用だ?』
「昼間来た刑事から、先輩は名刺を受け取りましたよね。それ、今も持っていますか?」
『名刺? ああ、持っているぞ』
「刑事さんの電話番号教えて下さい。吉部殺しの犯人が分かりそうなので」
『吉部殺しの犯人? まさか俺だとか言うのじゃないだろうな?』
んなわけないだろう!
「違いますよ」
経緯を話そうか? いや、トナラー女については、明日先輩に会ったときに直接問い詰めたいので今は黙っておいた方がいい。
「とにかく犯人は女です。今は詳しく言えませんが、先輩とは無関係な人です」
まったく無関係でもないが……
『なんで言えないんだ?』
「それはですね……」
今、言ったら、明日逃げられそうだし……
『なんなら、今からおまえの家に行こうか?』
「いやいいですよ。そもそも今僕は家にいないし」
『どこにいるんだ?』
「中央道の石川パーキングです」
『なに? それって上りか? 下りか?』
「上りですが」
『そいつは奇遇だな。俺の車も今中央道で、八王子料金所の近くにいる』
「なんでそんな所に?」
『いや、俺は仕事が終わった後、彼女と高尾山に行ったのさ』
これから夜になるのに、高尾山なんか登るわけがない。
大方、高尾山から大垂水峠に抜ける途中にあるラブホにでも行っていたのだろう。
「分かりました。石川パーキングで待っていますので来てください」
ついでにこの場で問い詰めてやる。




