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トナラー  作者: 津嶋朋靖


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3/39

 僕の話を一通り聞いてから、先輩は少し考えた後で答えた。


「毎日、隣に同じ車が停まるというのか?」

「ええ」

「気のせいじゃないのか?」

「じゃあ、これを見て下さい」


 僕の差し出したスマホには、コペンの横にカムリが停まった写真が表示されている。


「これが五日前です」


 五日前から一日おきに撮った五枚の写真を見せた。


「ナンバーも全部一緒か。こりゃあトナラーというやつだな」

「で、お聞きしますが」


 スマホにコペンの傷の写真を表示した。


「バンパーに付いている傷って、この車とぶつかった傷じゃないでしょうね?」

「ぶるるる! とんでもない!」


 先輩は慌てて否定する。なんか、かえって怪しいのだけど……


「この傷は……あれだ……」


 あれじゃ分からん。


「名誉の傷とか言わないで下さいね」


 僕がそう言ったとき、先輩は何か言いかけていた口を閉じた。


 言おうとしていたな。


「お……俺がこの状況で、そんなギャグを言うような男に見えるか?」

「見えます」

「……」

「で、この傷はなんなのですか?」

「車庫入れで失敗した傷だそうだ」

「え? 『だ、そうだ』って……先輩が付けた傷では?」

「俺じゃない。妻だよ。俺が車庫入れで失敗するかよ。下手くそなくせに運転するから」

「コペンは、奥さんと共用していたのですか?」

「いや。妻は別の車に乗っている」

「じゃあ、なんで奥さんが車庫入れしたのですか?」

「いや、俺が隣の家の前に車を停めていたのだが、隣のオヤジが怒ってきたので、妻が運転して車庫入れを……」

「それ、完全に先輩が悪いんじゃないですか」

「なんでだよ?」

「先輩が路上駐車するからいけないんですよ。しかもお隣さんの家の前に」

「俺んちの前に停めたら邪魔だろ」


 いやいや、隣の家の前に停めたって邪魔だし……てか話が大きく逸れてしまった。


「とにかく、コペンの傷は車庫入れで付いたもので、他の車とぶつかったものじゃないのですね?」

「おお、その通り」

「そうですか」

「なあ、令斗。そんなに嫌なら、駐車場変えたらどうだ?」

「え?」

「だって、おまえのところ安い駐車場いっぱいあるだろ」

「まあ、そうですが……」


 スマホで検索してみると、一つ隣の駅にも同じ値段の駐車場があった。


 明日からは、ここに停めるか。

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