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「よお、礼斗」
佐伯先輩に声をかけられたのは、昼休み。
職場の上にあるカフェで、お昼のサンドイッチを食べているときの事だ。
「隣いいか?」
と言って、僕の返事を聞くこともなく僕の隣に座ってきた。
まあ、好都合だが……頃合いを見て車の傷について聞いてみるか。
ん?
先輩がテーブルの上に置いたのは、あんパンと缶コーヒー。
「先輩。お昼それだけですか?」
などと言ったのが良くなかった。
「え? お昼があんパンだけの俺がかわいそうだから、サンドイッチ譲ってくれるって! 悪いな」
「あ!」
と言う間もなく、僕の皿からツナサンドが強奪された。
「譲るなんて言ってないじゃないですか」
「いいじゃないか。おまえには、コペンを格安で譲ってやったんだし」
「だったら、最初からコペンの代金に、昼飯代を上乗せすればいいじゃないですか」
不意に先輩は、疲れたような顔をする。
「おまえには、分からないよ。コペンを売った金が、まるごと俺の懐に入るとでも思っているのか?」
「え? どういう事ですか?」
「おまえから受け取った金は、妻にすべて没収された」
まあ、独身貴族の僕には分からん苦労だな……ん?
「先輩……結婚していたのですか?」
「なんだよ? 俺が結婚していたら悪いか?」
「いえ。結婚している事は悪くないですが、結婚しているのに合コンに行くのは、十分に悪いですよね」
「ま……まあ、固いこと言うなよ。浮気は男の甲斐性だし……」
「まあ、僕にはどうでもいい事ですが、やるなら奥さんにばれないようにやって下さいね。修羅場とか見たくないし」
「いや……それが……ばれちゃってさ……」
「ばれた?」
「土下座してなんとか離婚は回避したが、慰謝料だけ寄越せと……」
「それは大変でしたね。これでコペンを処分したと……」
「そうなんだ。で、コペンの調子はどうだ?」
「とても良いですよ。中古車とは思えないくらい調子いいです。ただ……」
「ん?」
僕はここ数日の事を先輩に話した。




