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トナラー  作者: 津嶋朋靖


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 駐車場で、空きスペースがあるにも関わらず、あえて先に止まっている車のすぐ隣に駐車する人がいます。


 その人は別に悪意があってやっているのではなく、ただ「隣に車があった方が止めやすい」とか「なんとなく安心」または「つめて止めた方がいい」など、無意識の心理が働いてそういう事をやっているのです。


 そういう人は俗にトナラーと呼ばれ、駐車場に限らす電車や飲食店の座席、銭湯のロッカーなどでも、隣に人がいるところへやって来ますが、普通の人は自分のパーソナルスペースを侵害されると不快になります。


 これはそんなトナラーに悩まされる一人の若者の物語です。

「また!?」


 僕が思わずそう言って立ち尽くしたのは、いつも通勤に使っている車を停めている駐車場入り口での事だった。


 百台は停められる広い駐車場だが、今そこには五台しか車は停まっていない。


 その中の一台、茶色のダイハツコペンが僕の車だが、そのすぐ右側には薄汚れた白いトヨタカムリが停まっていた。

挿絵(By みてみん)

 他の三台は離れたところに停まっているのに、この白いカムリだけは僕の車の運転席側にぴったりと横付けしているのだ。


 まったく、こんな停め方されたら僕が乗り込めないじゃないか。


 助手席側から乗るしかないな。


 しかし、これは偶然だろうか? と思いたいのだが……



 今日僕がこの駐車場に車を停めたのは、まだ空に星が見えているような早朝。


 その時点で、他に停まっていた車は三台ほど……


 もちろん僕は、先に停まっていた車から離れた位置に停め、そのまま電車に乗って仕事へ向かった。


 そして、夕方になって帰ってきたら、僕の車の隣にこの車が停まっていたのだ。 


 一回や二回なら偶然だろう。


 だが今回で十回目だ。


 ナンバーを確認したがいつもと同じ車。


 偶然なんかじゃない。意図して僕の隣に停めているんだ。


 こういうのをトナラーというのだろうか?


 しかしトナラーならトナラーで、隣にいる車はなんだっていいはず。

 なぜいつも僕の隣なんだ?


 白いカムリの中には誰も乗っていない。周囲に運転手らしき人がいない事を確認してから、僕はこの車を観察してみた。


 白いカムリは、もう何ヶ月も洗車していないのじゃないかというぐらい汚れていた。


 前後のバンパーには、何かとぶつかったような傷がいくつか残っている。


 まさか!


 僕のコペンにもバンパーに傷があったな。


 というのも、僕のコペンは新車じゃない。


 二ヶ月ほど前に、職場の佐伯先輩から格安で譲ってもらったものだ。

 格安だった理由は、このバンパーの傷。


 性能的には何も問題はないのに、この傷があるおかげで安く譲ってもらえたのだが……この傷はカムリとぶつかった傷なのでは?


 二台の車の傷を見比べてみたが……


 ううん。なんとも言えないな。


 明日、先輩に聞いてみるか。

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