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コペンの方を見ていると、なおちゃんはシフトレバーをDに入れていた。
さらに僕を手招きしてから、サイドブレーキを解除している。
車がゆっくりと動き始めた。
女がコペンの方を振り向いたのはその時。
「え? 誰? 運転しているのは?」
そう言って僕の方へ向き直る。
「あなた、健吾さんではないの?」
「だから、さっきから違うと言っているでしょ」
「じゃあ、健吾さんはあっちなの?」
女はコペンを指差した。
どうなっているのだ?
なおちゃんは、さっきから何度もこっちを振り向いている。
夜とはいえ駐車場の灯りでも、髪の長さから運転席にいるのは女だと分かりそうだが……
それとも健吾とは、女みたいに髪が長い男なのか?
いや、それなら僕が健吾と間違えられるはずはないし、そもそも健吾とは佐伯先輩のはず。
「れいちゃん! 早く乗って!」
突然、なおちゃんが叫んだ。
その声を聞いた途端、女の顔は鬼の様な形相に変わる。
「やはり女が乗っていたのね!」
マズい!
思わず僕は女を突き飛ばしていた。
女性に乱暴な事をするのは気が引けるが仕方ない。
僕はコペンまでダッシュすると、助手席に飛び乗った。
僕が乗ると同時に車は一気に走り出す。
振り向くと、女は猛然と追いかけてきていた。
「なおちゃん……免許持っていたの?」
「仮免よ」
「え?」
「だから、あいつを引き離したら、運転代わって」
「分かった」
駐車場の端まで来たところで、なおちゃんは車を停めた。
振り向くと、女は何か光る物を持ってこっちへ駆けてくる。
僕たちは急いで車を降りると、運転席と助手席を交代した。
アクセルを踏み込んでからバックミラーを見ると、女はすぐ後まで迫っていた。
その手には、刃渡り三十センチはありそうな大きなナイフが握られている。
それを見て僕は一気に加速した。
「れいちゃん。屋根を閉じて!」
「無理だ。サイドブレーキを引かないと、電動ルーフが動かない」
「ええ! そんな」
「それより。後で返すから、パスモかスイカを用意して」
「え? なんで?」
「お金を払わないと、駐車場から出られないんだよ」
「そっか」
女の方を見ると、こっちへは向かっては来ていなかった。
あきらめたのか?
いや、あいつ、カムリの方へ向かって走っている。
車で追いかけられたらヤバい。
急がなきゃ!
駐車場の出口で車を停めると、僕は後ろを振り返った。
女がカムリに乗り込むのが目に入る。
カムリが動き出す前に、出られそうだな。
「あれ?」
胸ポケットに手を入れた時点で、僕は硬直した。
「どうしたの? れいちゃん」
「駐車券がない!」
後ろを見るとカムリのエンジンが動き出したのかライトが灯っていた。
ヤバい! 駐車券はどこだ!?




