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トナラー  作者: 津嶋朋靖


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 前の方で事故があったのか、道路が混んできた。


 次の発信は二十分後。


 まあ、なんとか間に合うだろう。


「れいちゃん」


 なおちゃんが、恐怖に震えながら声をかけてきたのは、右折レーンに並んでいるとき。


 僕の車は、前を大型トレーラー、後を大型観光バスに挟まれて停止していた。


「どうしたの?」

「今、左の車線を、吉部の車が通り過ぎて行ったよ」

「え?」


 左車線の前を見ようとしたが、前の大型トレーラーが邪魔で何も見えない。


「吉部の車って、アルファード?」

「うん。アルファードだよ。さっきの電話で、お母さんは吉部パパはアルファードで来たって言っていた」

「吉部はアルファードを、手放していなかったのか?」

「うん、そうみたい」

「こっちには、気づかなかったかな?」

「すれ違うとき、吉部パパとは目は合わなかったし、大丈夫だとは思うけど……」


 前後を大型車に挟まれていたから、一瞬通り過ぎただけでは分からなかったかもしれないが……


「いや、そもそも吉部の父親は、僕の車を知っているのか?」

「それは分からないけど、横に並んで停まったら、助手席にいる私の姿が見えちゃうかも」

「横に並ぶ?」


 あ! この先の交差点、今は直進車が進んでいるけど、もしアルファードが信号を越える前に停まってしまっていたら……


 右折レーンが動き出したときに、横並びになってしまうかもしれない。


 右折の信号が青になったのはその時。


 前の方で車が動き始める。


 マズい! このペースだと、停止線の手前で停まる事になりそうだ。

 アルファードはいるだろうか?


 前のトレーラーが動き出した。


 次第に左車線の様子が見えてくる。


 いた!


 左車線の先頭に停まっている。


 ブー!


 後の車からクラクションを鳴らされた。


 これ以上ここには停まっていられない。


 こうなったら……


 対向車はいないな。


 僕は右ウインカーを点けると、対向車線に出てUターンした。


「これで吉部には見つからないけど、次の発信までに目的の駐車場に入れるかな?」

「ちょっと待って」


 なおちゃんは、しばらく自分のスマホを操作していた。


「近くに、良い駐車場があるよ」


 そう言うと、なおちゃんはスマホホルダーから僕のスマホを外して自分のスマホを装着した。


「ここなら、間に合うでしょ」


 ここは! まあいいか。


 無意識に、ここは避けていたけど、心霊現象じゃないのだから縁起を担いでも意味はない。


 そこは、僕が最初に通勤に使っていて、トナラーに付きまとわれ始めた駐車場だった。

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